下記に抜粋引用したサイト記事( 弱いつながりが多様な情報伝播を加速する:ソーシャルネットワークの役割と可能性/Social Media Experience/2012.01.25 )の理解に当たっては、日常的なリアル生活での場面を引き合いに出すと分かりやすいかもしれない。
驚きにつながるような "新鮮な情報"(情報の多様性) は、一体、どこからやってくるのか、という話だ。当然という感があるが、四六時中居合わせている "家族" や、頻繁につき合っている "友人" などからは、意外とそんな "新鮮な情報" を聞かされることはない。
むしろ、偶然に遭遇したり、 "久しぶりに会った知人" などから、その知人の近況のみならず、思いがけない "新鮮な情報"(情報の多様性) を知らされる......、というようなことがままあったりするものだ。
"ソーシャルメディア" で言うならば、 "家族"・"友人" などとの関係が<頻繁に連絡をとる「強いつながり」>、"久しぶりに会った知人" などとの関係が<滅多に連絡しない「弱いつながり」>となる。
で、"ソーシャルメディア(Facebook)" においても、"新鮮な情報"(情報の多様性) が舞い込んでくるのは、どちらかと言えば<滅多に連絡しない「弱いつながり」>からだと言うのである。
しかも、Facebook の場合、「弱いつながり」による<情報の伝播力>は著しく増幅されるのだそうだ。
と言うのも、<Facebookの友達は、強いつながりよりも弱いつながりの友達のほうが多い傾向にある。よって、弱いつながりが集まることでシェアする回数としては増える>からだと言う。
"ソーシャルメディア" には、"情報の共有性" と "情報の伝播力の増幅" という機能的特徴がある。
そして、どちらかと言えば、"情報の共有性" の面が注目されがちなのかもしれない。そこから、<頻繁に連絡をとる「強いつながり」>に目が向きがちともなっていそうである。
また、ここに潜むデメリットとして、"蛸壷化" 現象(<仲良しの友人からの情報を見たりシェアするだけで、多様な情報の流通を阻害する、閉じられた音響空間のようなものだ>)との指摘がなされることがある。
だが、これまで、いわば "脇役" 視されてきた<滅多に連絡しない「弱いつながり」>に目を転じてみると、そこには、"新鮮な情報" の流れと、"情報の伝播力の増幅" という点での大きなメリットが横たわっている、と強調されるのだ。
弱いつながりが多様な情報伝播を加速する : ソーシャルネットワークの役割と可能性
Facebookには、データ研究チームがある。その研究チームが先日、新しい研究成果を論文として公開した。
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研究概要
「Role of Social Networks in Information Diffusion( 情報伝播におけるソーシャルネットワークの役割 )」は、ソーシャルネットワーク上における、情報が広がる特性についての研究論文である。
ソーシャルネットワークについては、「仲良しの友人からの情報を見たりシェアするだけで、多様な情報の流通を阻害する、閉じられた音響空間のようなものだ」と主張する人がいる。研究成果は、この主張をくつがえすものといえる。
具体的には、ソーシャルネットワーク上においては、ユーザーは親しい友人間で頻繁にやり取りをするものの、関係が疎遠で日常的にやり取りしないユーザーから受け取る情報のほうが圧倒的に多いというのだ。疎遠な友達は、趣味や関心が異なる傾向があり、彼らはユーザーにとって新鮮な情報をシェアする。よって、ソーシャルネットワークが新しいアイデアや製品をシェアしたり、議論するための強力な媒体となる、というのだ。
ソーシャルグラフの強いつながり、弱いつながり
社会経済学者Mark Granovetterが提唱した強いつながり、弱いつながりによる情報伝播(The Strength of Weak Ties )についてご存知の方も多いだろう。
現実世界のソーシャルグラフ(人間関係)には、頻繁に連絡をとる「強いつながり」、滅多に連絡しない「弱いつながり」に分けられるが、異なるクラスタの人たちからの情報は弱いつながりから流れてくる(上図のオレンジ色の線)という仮説である。弱いつながりは、強いつながりによって作られるクラスタをつなぐような役割を果たし、そこから入ってくる情報がソーシャルグラフ全体に伝播することになる。
オンラインでも弱いつながりが多様な情報を広める
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Facebook上においては、強いつながりの友人の投稿ほど、ユーザーに影響を与え、シェアされることが今回の調査からも明らかになった。これは共有性が高いことが要因になる。
そしてさらに、Facebookが情報の伝播力をどれくらい増幅させるかということについても調査をした。
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弱いつながりは、シェアされなければ目にしないような斬新な情報を広める。弱いつながりによる情報はシェアされさらに伝播する乗数効果は10になる。一方、強いつながりの友達の場合は、乗数効果は6になる。
よって、弱いつながりのほうが情報を露出させる潜在力があるといえる。
この理由がもともとの数の違いである。Facebookの友達は、強いつながりよりも弱いつながりの友達のほうが多い傾向にある。よって、弱いつながりが集まることでシェアする回数としては増えるのである。例えば、強いつながりの人(10人)からの情報をシェアする可能性を50%、弱いつながり(100人)からくる情報をシェアする可能性を15%とする。結果としては、10×0.5=5、100×0.15=15となり、弱いつながりからの情報のほうが3倍、多くシェアすることになる。
結論
Facebook上では、異なる知見を持つ弱いつながりによって情報の多様性を生み、強い関係よりも遠い関係からの情報を目にすることが多く、またシェアする可能性がある。
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研究の背景
...... 仲良しの友達とのやり取りは頻繁に行われ、閉じられた音響空間を作る。しかし、弱いつながりからの情報もシェアすることで、それはネットワーク上に広まるようになる。友達がシェアする情報は他で見つける可能性が高いが、弱いつながりからの情報は、Facebookでシェアされたことで初めて見る情報となる。
Facebook上の関係においては、強いつながりよりも弱いつながりのほうが多いとすれば、Facebookは自分の世界観を確認するものというよりも、自分の殻をやぶるきっかけにもなる。
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ソーシャルメディア、特にFacebookにおける情報シェア行動
今回の調査データは、ユーザーが日頃からのソーシャルメディア活用において感じていたことが実データとして証明されたことになる。Facebookにおいては、平均的なユーザーの友達関係は、強いつながりよりも弱いつながりの方が数が多いため、この特徴が特に表れると考えられる。
このデータ研究からは3つの点が示唆される。
シェアされる情報とされない情報の二極化
友達の間だけで受ける内輪ネタと広くネットワークを伝播する情報が二極化している。
例えば、ご飯の写真、自分の血圧などは、親しい友達からは反応があるだろうが、関係の薄い弱いつながりにある人には興味を持たれない。こうした情報しか発信しない人は、弱いつながりの人からニュースフィードでの表示をオフにされる可能性が高いため、情報の伝播力は弱くなる。
一方で、専門的な見地からピックアップされた情報や共感できるストーリー、印象的な写真などはシェアされやすい。特に研究でも述べているように、自分の情報収集から漏れるような新鮮な情報で、自分の専門分野と異なっても興味深い情報は、シェアされる可能性が高くなる。
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情報を収集したい人にとっては強力なプラットフォームに
Facebookでは、友達だけでなく、著名人やジャーナリスト、芸能人からの情報も「フィード購読」という形で情報を収集できるようになっている。フィード購読によって、弱いつながりすらない相手からの情報を収集できるようになったことは、情報収集プラットフォームとしての可能性を大きく広げたと考えられる。もちろん、Facebookページの情報も、直接はつながりのない相手からの情報となる。
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積極的に情報収集をしたい人にとっては、バランスよく多様なジャンルにアンテナを張ることでFacebookを強力な情報プラットフォームにできる。もちろん、こうした利用方法をする人が増えるほど、自分の意見や考えを広めたい人は、ソーシャルメディア上での情報発信をより積極的に行っていくことになる。
一方で、mixiはあくまで仲が良い友達との関係にフォーカスした情報発信を目指している。mixiページが、...... 基本的に友達のつながり(強いつながり)が重視されているので、「閉じられた音響空間」を作っていることになる。
mixiのこの雰囲気が良いという利用者も多く存在することから、Facebookとmixiは完全に別の方向を目指したほうがよいだろう。
実アカウントと実データを使ったFacebookの実験への反感
さて、今回の調査の背景として、Facebookが一部のユーザーのニュースフィード表示を実験的に操作してデータを収集していることが明らかになった。この実験は調査目的であり、ユーザーのFacebook活用において、大きな不具合をもたらすものではないと考えられるが、コメントなどを見ると一部のユーザーにとっては、ショックもあるようだ。
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まとめ:弱いつながりからの情報が伝播する中で生まれる価値
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十数年前までは受け取れる情報ソースが限られていたが、現在は自分のネットワークを使って多様な情報を収集できるようになった。これは大きな変化である。情報は仲介され、共有される中で議論を生み、同時に新たな価値も生んでいく。もちろん、ソーシャルネットワーク上にはデマ情報、誤解された情報が伝播することもあるが、共有される中で訂正されて終息していくことが多い。
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( 弱いつながりが多様な情報伝播を加速する:ソーシャルネットワークの役割と可能性/Social Media Experience/2012.01.25 )
かねてより、情報収集プラットフォームとして活用する Facebook ! という位置づけと評価はあったが、上記の研究結果は、改めてそれを裏付けたと思われる...... (2012.01.28)
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