様々な悪条件によって日本経済が概してヘコむ中で、ソーシャルメディアの "ソーシャルゲーム" は "元気な柱(?)" の様相を見せていた。
だが、下記引用サイト記事:「国内ソーシャル3社に変調の兆し、事業モデルに弱点 編集委員 小柳建彦/日本経済新聞/2012.02.09」 によれば、<グリー、ディー・エヌ・エー(DeNA)、ミクシィの国内ソーシャル3社>に "変調の兆し" が出ている、とのことだ。
"日本のソーシャルゲーム業界" に関しては、別な記事で以下のような懸念が語られていたため、やや注意を向けていたところでの "アラーム" である。
<ソーシャルゲーム業界はアイテム課金収入が収益のメインであるため、ヘビーユーザーを増やす必要があります。そのためにテレビCMで芸能人を起用するなど、とてもコストがかかっており、収入が急増して好調のように見えても、同時に支出も増えていますから、決してビジネスとしておいしい状態ではないと思います。そうは言っても、SNSやソーシャルゲームは、日本で頑張っている数少ないプラットフォームプレイヤーなのは間違いありません。ですから、正しい形で永続的に"日本型ビジネス"をする方向に進化をしてほしいですね。> ( 「【テーマ13】 日本の文化やジャーナリズムはこのまま衰退するか ネット、スマホに搾取されるテレビ・音楽業界の行く末 ――岸 博幸 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授/ダイヤモンド・オンライン - 2012年の論点を読む/2012.01.30」 )
そこでは、<ネット世界では、コンテンツ業界が垂直統合型で担っていた流通網は崩壊し、流通は他人まかせ、つまりプラットフォームサービスを提供するグーグルなどの米国ネット企業が事実上、情報の流通を担うようになって>しまい<米国ネット企業の一人勝ちとそれによる日本の国益搾取の現状>が危惧されていたのである。
そうであるだけに、その "日本のソーシャルゲーム業界" が "変調の兆し" を見せているという観測からは、やや考えさせられてしまった......。
国内ソーシャル3社に変調の兆し、事業モデルに弱点 編集委員 小柳建彦
交流サイト(SNS)国内大手3社の成長の勢いに変調の兆しが出ている。株式市場はすでにそれを局面によって織り込んでいる。日本語市場の限界に加え、世界最大手の米フェイスブックに比べたビジネスモデルの弱点も背景に見え隠れする。
国内ソーシャルサイト大手3社の10~12月期業績が出そろった。グリーが営業利益を前年同期比3倍強に伸ばしたものの、ディー・エヌ・エー(DeNA)とミクシィはともに営業減益で、収益拡大にブレーキがかかった。株価は会員数が伸び悩むミクシィは長期ジリ安傾向。DeNAは昨夏をピークに、グリーは秋をピークに、それぞれ天井を打った。市場は3社の業容拡大の勢いに変調を来していることを敏感に感じ取っている。
ソーシャルサイト世界最大手フェイスブックは日本でも利用者急増が続いており、月間訪問者数でミクシィを抜き、登録会員数も500万人を超えたとみられる。......
国内勢とフェイスブックとの勢いの差の最大の要因は、日本語圏に限られる国内勢の市場と ...... 全世界が相手のフェイスブックの市場の規模の差だろう。だが、国内勢のサービスとビジネスのモデルをみると、どうもそれだけではなさそうだ。
今もっと市場が懸念しているのが、アイテム課金を絡めたゲームが収益の柱になっている点だ。ゲームを始めるのは無料だが、遊び進むにはどうしても有料アイテムを買いたくなる仕組みが標準になっている。しかも、買えるアイテムが自分で決められずクジ引きのような形で決まる方式のゲームが人気を集めており、その射幸性が問題視され始めている。 ......
そもそもそのようなゲームで高収益を上げること自体、事業の倫理性という観点から持続可能性があるのか。企業収益の成長性と倫理性が両立できないビジネスモデルだと市場が判断すれば、株価はさらに調整を余儀なくされるだろう。
もう一つの問題はフェイスブックと比べたプラットフォームとしての強さだ。
ソーシャルサイト上で動くサービスやゲームなどのソーシャル・アプリを作る米系開発企業のトップが最近、吐き捨てるように言った。「日本のソーシャルサイトは3社ともあまりにコントロールがきつく、コストが高い。自由なフェイスブックに比べて、開発する意欲がわかない」――。
国内勢も3社とも、フェイスブックやツイッターに倣ってプラットフォームを社外の開発者に開放し、各種API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)へのアクセスを許している。それなのに開発者からこのような不満が漏れるのはどうしたわけだろう。
国内3社の場合、各社のプラットフォームを利用するには開発者パートナーとして登録を義務付けている。登録を承認するかどうかの審査・裁量の権利をプラットフォーム各社側が規約上で確保しているほか、個別のアプリを公開できるかどうかについてもプラットフォーム側に裁量による決定権がある仕組みにしている。ライバルのグリーにゲームを提供した開発企業のゲームを、「モバゲー」の中では検索不能にしたり、一覧メニューから削除して新規利用者の流入を妨げたり ......
...... DeNAとグリーの2社はゲーム開発企業に対し、両社のプラットフォームに公平にゲームを提供することを許容しない姿勢を続けていると言われている。つまり、日本のソーシャル・プラットフォームはアプリ開発者にとって極めて不自由なものになっているといわざるを得ない。
一方、フェイスブックのプラットフォームの利用は原則自由。...... 日本のソーシャル・プラットフォームに比べ自由度がはるかに高い。
もう一つが課金システムの問題だ。国内3社の場合、ソーシャルアプリの中でアイテム課金などの課金サービスを付加する場合は、各社独自の課金システムの利用を求められる。その際、収入の1~3割を「システム利用料」や「レベニューシェア」といった名目で徴収される。これに対し、フェイスブックは ...... ゲーム以外のアプリについては、開発者側がクレジットカードやペイパルなどを使って独自に課金することもできる。
最近人気が増しているiPhone(アイフォーン)用のソーシャルアプリの場合、...... 国内ソーシャル3社のプラットフォーム用にiPhoneアプリで課金ビジネスをやろうとすると、アップルに3割払い、ソーシャルプラットフォームに1~3割払った残りしか、開発者の手元に残らないことがあるわけだ。果たしてこのまま開発者が魅力的なアプリを作り続けるだろうか。日本国内でも利用者が増えたフェイスブックに開発者がなびく動きがいつ出てきてもおかしくなさそうだ。
過去数年、順風満帆で急成長を続けてきた国内ソーシャル3社。12年は株式市場や消費者世論、開発者コミュニティーから事業モデルの根本的な見直しを迫られる年になるかもしれない。>
( 国内ソーシャル3社に変調の兆し、事業モデルに弱点 編集委員 小柳建彦/日本経済新聞/2012.02.09 )( ※引用者注 ―― 文意を損なわない限りで割愛箇所を施しています。)
<米国ネット企業の一人勝ちとそれによる日本の国益搾取の現状>も注視すべきかと思われるが、<株式市場や消費者世論、開発者コミュニティーから事業モデルの根本的な見直しを迫られる>可能性ありの "日本のソーシャルゲーム業界" からも目が離せないようだ...... (2012.02.11)
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