どちらかと言えば "バーチャル" な人間関係が比重を占めていた "ソーシャルメディア" であったかもしれないが、"実名で交流" する Facebook などの浸透によって、"リアル空間" に寄り添った使われ方の比重が増し、その注目度も高まっているかのようだ。
"ソーシャルメディア" は "バーチャル"(匿名登録)が良いか、"リアル"(実名登録)が良いか、それは一概に言えない。それぞれに一長一短があるし、ケースバイケースなのであろう。
むしろ最も大事なことは、切実に希求された "人と人とのつながり" に対して、"ソーシャルメディア" という場が "どれほど有効に活かされているのか"、またその可能性があるのかという点であるに違いない。
そんなふうに思いを巡らせる時、ふと気づかされる点がある。"新たに形成" される "人と人とのつながり" としての "ソーシャルメディア" 活用ばかりに目を向けるのではなくて、種々の点で "支援・補完" されるのを待つかのような "人と人とのつながり" ( "傷み" が進む "リアル・コミュニティ"!)自体への着目があってもよい、と。
Facebook などによる "リアル空間" に寄り添った "バーチャル空間" の使われ方が示唆していることの一つには、そんな点があるのかもしれないと......。
確かに、"ソーシャルメディア" という "バーチャル空間" での人間関係の場に "人と人とのつながり" の新たな転機を見出そうとする、そんな傾向の足元には、いろいろな点で行き詰まった(?) "リアル空間でのコミュニティ" が横たわっているはずであろう。だからこそ "バーチャル空間" での場が志向されたのだとも想像される。
したがって、たとえ "リニューアルな視点" からとは言っても、その "リアル空間" に再び目を向け直すことは、困難極まりない回帰志向だと言えなくもない......。
だが、果たしてそうなのかどうか、それは未知数であろう。"リアル空間" と "ソーシャルメディア" 上の "バーチャル空間" とが相互補完的に "融合" されたかのような、そんな "人と人とのつながり" をイメージすることは決して不可能ではないのかもしれない......。
"リアル空間" における基本的な "人と人とのつながり" は "家族" だ! そこでの "家族間コミュニケーション" が、"ソーシャルメディア" 上の "バーチャル空間" によって "支援・補完" され得るという着眼に気づかせたのは、下記に引用した二つの記事であった。
コミュニティに関して、"リアル空間" と "バーチャル空間" との "融合" をマクロな視点で予想するフリージャーナリスト・佐々木俊尚氏の見解と、"IT と家族コミュニケーション関係"研究のお茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授・石井クンツ昌子氏による調査結果である。
ソーシャルメディアの役割というのは、情報流通と人のつながりの2つに分かれるが、そのどちらも今後進化していくのだと佐々木は指摘する。情報流通に関しては、「すべての情報が流通するためのインフラ」になっていくが、人のつながりに関しては、それとは別の方向に発展して「つながりのインフラ」が出来上がっていく。ソーシャルキャピタル(社会関係資本)という言葉があるが、それは人間と人間のつながりによるものだ。いままでは企業や村社会がそれを担っていたのだが、今後はFacebookみたいなものに担い手が移っていくだろうと佐々木は予想している。その参考として、アメリカの家族でのFacebook活用例が挙げられた。アメリカでのFacebookの普及率は60%にも上る。そうなると何が起こっているかというと、例えば遠く離れ た場所に住むおばあちゃんと孫が、普通だと年に1回くらい里帰りした時しか会えなかったのが、もう日常的にFacebook上でやり取りしているのだという。
佐々木はこのことから、「産業革命以前の農村社会みたいなものがネットのヴァーチャル空間上に再構築される」というような時代がやってくるのではないか、そうして「インターネット上で、より緩やかに、遠くの人もつながれるメディアを使うことによって、ある同調圧力とか息苦しさのない中間共同体みたいなものを新しく設計することも可能なのではないか」との希望を示していた。
( (抜粋)ソーシャルメディアで世界はどう変わる? 【Social Media Week 田原総一朗 x 佐々木俊尚】/WIRED JAPANESE EDITON - CULTURE/2012.02.15 )
近年見られるスマートフォンやタブレット端末といったモバイル端末の普及や、Twitter、Facebookなどのソーシャルコミュニケーションの拡大により、家族間のコミュニケーションにも変化がみられそうだ。マーケティングリサーチを行うメディアインタラクティブは、 IT と家族コミュニケーション関係を研究しているお茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授の石井クンツ昌子氏監修のもと、全国の30歳~49歳の既婚男女1200名を対象に「家族コミュニケーション」をテーマにした調査を実施。結果を公開した。
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家族のコミュニケーションに IT を活用している"オンライン家族"や、更に活用してコミュニケーションを充実させたいという"オンライン家族予備軍"が多いことがわかった調査だが、調査監修を行った石井氏はこの結果について、次のように分析している。
「"オンライン家族"は他の家族と比べて、家族の予定を共有し合うこと、お互いの悩みを相談し合うこと、家族共通の趣味や習い事を一緒に楽しむことなどが多いといった特徴があることがわかった。IT ツールを触媒としてコミュニケーションをとり合う"オンライン家族"は、家族同士のコミュニケーションに対する意識が強く情報の共有が上手くできている家族と呼べるだろう。」
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「これらの調査結果を見ると、日常の生活で家族のために使える IT ツールやアプリケーションの活用が、これからの家族間のコミュニケーションをより豊かにすることにつながると予想される。また、妻の夫婦間コミュニケーション満足度が夫と比べて低い傾向にあるので、女性が夫からの様々なサポートを得ることが可能になるような環境づくりが大切だ。そのためには、今後は、 IT ツールを活用したコミュニケーションが重要になるだろう」(石井氏)。
( (抜粋)家族間のコミュニケーションが IT 利用で活性化? -- メディアインタラクティブ調べ/japan.internet.com/2012.02.20 )
"人と人とのつながり" に関する、"リアル空間" とネット上での "バーチャル空間" との相互補完的な "融合" とは言っても、口にできる程に簡単なことではないだろう。だが、行き詰まりは片方だけにあるわけではなさそうだから相互補完的 "融合" を模索するしかなかろう...... (2012.02.22)
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