連日のようにアップル/"新iPad" の人気の高さと好調な売れ行き状況が報道されている。そして、その "新iPad" の性能を裏付ける意図などから、実機の "腑分け(分解)" 作業も進められているようだ。
この "腑分け" からは、その "構成部品" のサプライヤーや価格水準が判明し、本体に占める "コスト" やアップル自体の "収益" まで割り出させるらしいから大したものである。
まあ、他人の "懐具合" をまさぐるのは、「捕らぬ狸の皮算用」よりも情けない話ではあるが、そう呑気なことも言っていられないのが "日本企業" であるのかもしれない。
と言うのも、今回の "新iPad" の構成部品には、日本企業が提供した部品もあるにはあるのだが......。<エルピーダメモリや東芝の半導体など、ロジックボードには、エルピーダメモリの4GビットLPDDR2型DRAMチップ(合計1Gバイト)や東芝のNANDフラッシュメモリー「THGVX1G7D2GLA08」>(【 引用記事 1 】より)である。
しかし、そんなことで溜飲を下げている場合ではないはずではなかろうか。
なぜならば、<新iPadの部品コストとして、Appleから最も多額の代金を得たのはサムスンのようである。......サムスンは、新しいiPadのアプリケーションプロセッサも製造しており、おそらくはバッテリセルも製造していると思われる。そうであるとすれば、新しいiPadの部品コストの半分がサムスンに支払われていることになる。>(【 引用記事 2 】より)とあるからだ。
これをどう受けとめるかであるが、ここで思い起こすべきなのは、以前にここで書いた次の一節である。
<『プラットフォーマー』が既存企業を駆逐し...... 苦境にある日本企業...... このままでは日本企業は優秀な部品サプライヤーとして生き延びて行くしかないように見える。>( "ソーシャル"時代の"個と仕事"に決定的影響!"プラットフォーマー"主導型市場!( 当誌 2012.03.07 ) )
つまり、Apple/Amazon/Google などの "プラットフォーマー" にIT 市場が駆逐されて来た日本のIT 企業にとっては、 "優秀な部品サプライヤーとして" 一つの活路を見出して行くことが有力視されていたのである。
そんな矢先に、あの "エルピーダメモリ" のライバルでもあった "韓国Samsung Electronics(サムスン電子)" に "プラットフォーマー" 向けの "サプライヤー" としてのステイタスまでが "さらわれた" かの印象が拭えないから気掛かりとなるわけなのだ......。
【 引用記事 1 】
新iPadを解体 液晶はサムスン、DRAMはエルピーダ製
米iFixitは、米Appleの新しい「iPad(アイパッド)」を分解し、調査した結果を現地時間2012年3月15日に発表した。9.7型の「Retina(レティーナ)」ディスプレイは韓国Samsung Electronics(サムスン電子)製と見られ、エルピーダメモリや東芝、米Qualcomm、米Broadcomの半導体などが使われている。
調査には、オーストラリアの通信事業者であるTelstra(テルストラ)の店舗で購入したLTE(Long Term Evolution)対応版16Gバイトモデルの新iPadを使用した[注1]。ディスプレイはモデル番号からSamsung製であると判断した。
ロジックボードには、エルピーダメモリの4GビットLPDDR2型DRAMチップ(合計1Gバイト)や東芝のNANDフラッシュメモリー「THGVX1G7D2GLA08」を搭載している。
Wi-FiおよびBluetooth対応チップはBroadcom製の「BCM4330」だった。Broadcom製品はコントローラ「BCM5973」「BCM5974」も使われている。
Qualcommは、LTEおよび3G(第3世代携帯電話)通信用チップセット「RTR8600」とモデム「MDM9600」のほか、電力管理チップ「PM8028」も供給している。......
[注1]今回解体したのは限定された数の製品であり、アップルが発売する全ての新iPadの構成部品が同様の調達先だとは言い切れない。同一部品を複数のメーカーから調達している可能性もある。
( 新iPadを解体 液晶はサムスン、DRAMはエルピーダ製/日本経済新聞/2012.03.16 )( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛箇所を施しています。)
【 引用記事 2 】
新「iPad」部品コスト、旧モデルより増加か--アイサプライが調査報告
Appleは、新しい「iPad」の購入者の負担を肩代わりしている。これは、同iPadの製造原価は増加したようだが、小売価格は米国において引き上げられていないからである。
IHS iSuppliの初期分解調査によると、4G対応32Gバイト版の新しいiPadの部品コストは、3G対応「iPad 2」よりも9%高いという。同レポートには、ミッドレンジモデルであるこの新iPadの部品コストは364ドル、組立コストは11ドルで、その合計金額375ドルは小売価格729ドルの50%強に相当すると記されている。
当然ながら、Appleの「Retina Display」、4G LTE、大容量バッテリといった予測されていた新しい機能が、新iPadの部品コスト増加の要因であるようだ。
新iPadの部品コストとして、Appleから最も多額の代金を得たのはサムスンのようである。IHSによると、同社はRetina Displayを1枚87ドルでAppleに提供しているという。その価格は、57ドルだったiPad 2の画面よりもかなり高い。
HSは、iPadの部品コストが旧モデルよりも高くなっていると報告した。
提供:IHS iSuppli Teardown Analysis Service
サムスンは、新しいiPadのアプリケーションプロセッサも製造しており、おそらくはバッテリセルも製造していると思われる。そうであるとすれば、新しいiPadの部品コストの半分がサムスンに支払われていることになる。......
( 新「iPad」部品コスト、旧モデルより増加か--アイサプライが調査報告/cnet/2012.03.19 )( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛箇所を施しています。)
言うまでもなく、"iPad" ユーザーにとっては、内部の構成部品がどのようなサプライヤーから提供されたものであれ、性能とコストが見合う魅力的な製品であれば全く無頓着なはずであろう。しかし、できれば日本のIT 企業には奮起を期待したいのが人情である...... (2012.03.21)
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