"仕事" とは、まさに "個" と "社会(組織)" との重要な "結節(点、面)" である。そして、"個" にとっての "仕事"(「働く」)は "物的・内面的" な両面での死活問題でもある。いや、"社会(組織)" にとっても時間差こそはあれ同じことだと言うべきか。
ところが今、この国に限らず、その "仕事" が "神隠し" にでもあったかのようにシュリンクして、"高い失業率の慢性化" に見舞われている。その原因は、種々想定されはしても特定するには時間がかかるほどに複合的だと思われる。
また、この現状の "高い失業率の慢性化" という社会問題現象には、従来のそれとは異なった社会的特徴もいろいろと付け加わり、"仕事" へのナイーブな理解を困難にさせている。少なくとも、従来からの "仕事"="就職(就社)" という牧歌的ニュアンスは消し飛んでいる......。
◆参照 <通勤や社員化/準社員化を前提とする従来的な雇用モデルが、不況前の高水準に戻ることはないだろう。しかし次の数年では、"正規モデル"で失われた仕事を埋め合わせてあまりあるほどの大量の仕事が、インターネット上に氾濫するだろう。>( 「雇用はますます"非勤務非社員"化する-経済指標はオンライン労働の実態を正しく拾っていない」/Tech Crunch/2012.03.06 )
たぶん、"個"/"社会(組織)" と "仕事" との関係に "斬新な視点" を投じているものは "ソーシャル(メディア)" なのであろう。もちろん、"ソーシャル(メディア)" は幅広い社会現象と "共鳴したうねり" だと了解されることが妥当であり、単なる一つのメディア傾向と限定しない方が良さそうだ。
こんなふうに考える時に、表題もズバリそれであり、俄然着目したくなったサイト記事があった。下記引用サイト記事: 「2012-03-04 『個』と『仕事』と『ソーシャル』を考えるにあたって」/風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る/2012.03.04 がそれである。
"フォーラム" への参加をレポートした記事であり、"見事なまとめ方" だと感心させられもした。
"見事さ" の一つは、この種のテーマへの迫り方だ。
<仕事のことを語るには、日本の市場で今何が起きているのか、ある程度共通認識を持っておくことが不可欠>とし、<IT/電気分野の企業群およびその市場について>という "土俵(?)" を設えて叙述を始めている点である。今後、他の市場にも波及するであろう読みのもとに "典型的市場" の共通認識から着手している点に好感が持てた。
ひょっとすれば、"ソーシャル" を内在する対象を、こうした "見事なまとめ方" をするアプローチに対しては、若干違和感を持つ人がいるかもしれない。しかし、"ソーシャル" アプローチにありがちな、"事例集" 的(?)叙述だけでは見えてこないものもあることを留意すべきかと思われる。
こうして、"個"/"社会(組織)" と "仕事" との関係を大きく方向づけているに違いない<IT/電気分野の企業群およびその市場>の "概念図" をもとに、<プラットフォーマーが既存起業を駆逐>したという "根底的事実" が指摘される。
そして、<今後の日本のIT電気関連のビジネスは、少なくとも当面は3つに別れていく>であろうとして、"3方向" が展望されることになる。
1.■苦境にある日本企業 ( 優秀な部品サプライヤーとして生き延びて行く...... )
2.■新しい可能性 ( 個人、ないし、少人数の企業がニッチな市場を開拓して生きのびるチャンス、従来の大企業vs起業という二軸とは別の、『個』の働きかたの可能性...... )
3.■カテゴリー・プラットフォーマー ( 個々のカテゴリーでの『場』を支配するプラットフォーマー ex. アットコスメ、DeNA、グリー、ニコニコ動画等...... )
こうした "構造的可能性" の提示は、とかく "悶々としがち" なわれわれの一つの "コンパス(羅針盤)" となり得る......。
以下に、"割愛箇所" を施した記事を引用させていただくことにする。
2012-03-04 『個』と『仕事』と『ソーシャル』を考えるにあたって
■FTMフォーラム 第4回Green Table 開催概要
第4回FTMラウンドテーブル(Green-Table)「個」と「仕事」と「ソーシャル」: GLOCOM
・概要
これまでの「シェア」「生産性」「消費」という議論を踏まえた上で、ではこのような社会では個人がどのように働くべきなのかを議論したいと思います。特に 20-30 代では「お金はギリギリ食べられるくらい稼げればいい」という低消費・高ソーシャルな体験を求める動きの一方で、「大金を稼いで高級車を買ったり豪華客船でクルーズしたい。年金に備えたい」というような高消費・安定指向の動きも感じます。不可避な少子高齢化が迫っている中で、これからの「働く」という概念はどうなっていくのか。できれば、パネラーの方たち自身が今後をどう捉えているのかということも伺ってみたいです。■閑歳さんからの話題提供 (略)
■既存の分析タームが追いつかない (略)
■既存の大企業の責任 (略)
■日本企業のポテンシャル (略)
■ボタンの掛け違い? (略)
■市場認識を整理するために仕事のことを語るには、日本の市場で今何が起きているのか、ある程度共通認識を持っておくことが不可欠だろう。しかも日本企業と一言でいってもピンキリだ。成功し、今でも成長している企業ももちろんある。だが、今回想定されているのは、かつて『非常に輝いていた日本企業が急激に衰退している』ことを象徴している企業、ということになるから、今回のパネラーにも急遽パナソニックの水野氏が呼ばれたように、IT/電気分野の企業群およびその市場について取り上げてみるのが一番間尺に合いそうだ。下記の図をご覧いただきたい。
■プラットフォーマーが既存企業を駆逐
昨今、テレビの価格が大きく下落し、ソニー、パナソニック、シャープ等一様に打撃を被っているわけだが、次世代のテレビとして注目されているのは、Google TVであったりApple TVだ。数ヶ月遡ると、電子書籍リーダーでソニーやシャープが惨敗したことは記憶に新しい。この場合の勝ち組も韓国メーカーとかではなく、まだ日本市場に本格参入しているわけではないのに、Amazon(Kindle)のほうだったりする。要は、この市場では単にデバイスの機能の優劣が問題なのではなく、コンテンツやコンテンツのバックヤードのレイヤーを統合して、『場』を総合的に支配する、Google、Apple、Amazonのような『プラットフォーマー』が既存企業を駆逐し、プレゼンスを拡大している。すでに、パソコン、携帯電話等では決着がついたと言っていいような状況だし、長く話題になってきたソニーのウオークマンとAppkeのiPodについても、失礼ながら決着はついたと言わざるをえない。そして、まだ『プラットーフォーマー』の洗礼を浴びていない製品やサービスも、早晩壊滅的な影響を被ることはもはや疑いえない。(このあたりの事情については、私の過去のエントリー 「プラットフォーム戦略に勝利する『決め手』 - 風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る」 をご参照頂きたい。)
■苦境にある日本企業
アップルは先頃、部品調達や製造委託している会社を発表したが、その中には日本のソニーやシャープ、東芝、パナソニック等の大企業も入っていた。このごとく、このままでは日本企業は優秀な部品サプライヤーとして生き延びて行くしかないように見える。製品市場を奪回するには、プラットフォーマーの影響力をはねのけていける才覚が不可欠だが、少なくとも現状ではどの会社を見ても(ソニーを含めても)そのような可能性を感じさせてくれる企業はなくなってしまった。となると、日本の電機メーカーは、『海外転出』『系列/垂直統合の解体』『大幅なリストラを含むドラスティックなコストカット』『薄利多売の過当競争』等を余儀なくされていくだろう。
もちろんそれでも生き残って行く会社もあるだろうが、少なくとも今後必要とされる人材の種類も必要な技量も、従来と同じではあり得ない。日本のコンシューマー市場で活躍したいと考えている人にとっては、益々今の日本企業にいることが得策ではなくなって行くのではないか。むしろ、企業を飛び出して、ファブレスな会社を起業する人たちに軍配があがるように思えてならない。
自動車産業のように、今はまだ日本のいわゆる『擦り合わせ技術』に一日の長があるような産業も、今後電気自動車が主流になって、モジュール化が進むと、電機業界とまったく同じ環境に置かれることになり、同じ苦しみを味わうことになるであろうことは想像に難くない。
■新しい可能性
一方、同じIT業界でも、よりサービスに近い領域では、興味深い現象が起きている。図の左下、緑のエリアだが、プラットフォーマーの市場支配の余録と言っていいのかもしれないが、個人、ないし、少人数の企業がニッチな市場を開拓して生きのびるチャンスはむしろ増えて来ている。無料ないし格安なツール/モジュール/アプリ市場等が充実してきているからだ。以前なら、何かアプリをつくっても、お客を見つけたり、宣伝したり、決済の仕組みを持ったり、ビジネスとしてそれなりに成立てるためには、一々自前でしつらえたり、組織を作ったり、他社のサービスを利用するにしても高額のコストがかかったりして、ハードルは非常に高かった。だが、今ではソーシャル系のサービスで客を見つけ、同じくソーシャルメディアのTwitterやFacebookで宣伝し、決済にPaypalを使い、クラウドストレージにAmazonを使うなど、ツールやモジュールを組み合わせてそれなりに完結したサービスをあっというまに組上げることができる。それも面倒であれば、つくったアプリをiTuneストアに置いておけば、上手くするとそこそこ稼げたりする。この領域の活性化が、従来の大企業vs起業という二軸とは別の、『個』の働きかたの可能性を切り開く背景となっているとも言えそうだ。
■カテゴリー・プラットフォーマー
ここから、パネラーの一人、山田さん(今回は欠席)のアットコスメのように、巨大なプラットフォーマーと直競合はしないが、個々のカテゴリーでの『場』を支配するプラットフォーマーとなって、ある程度の規模の組織に成長して競争力を拡大し、場合によっては海外市場に打って出るということはありえる。この領域にDeNA、グリー、ニコニコ動画等もはいるだろう(図の右側、青の領域)。だが、この領域は既存大企業のマインドを持ち込んで成功するような場所ではなく、むしろそれが障害となってしまいかねない。特に過去20年~30年の日本企業の経験が持ち込めるとは正直考えにくい。
■自ら作り上げるしかない
今後の日本のIT電気関連のビジネスは、少なくとも当面は上記の3つに別れていくと思われるが、それぞれの勝利の方程式はかなり違っていて、お互いが参考にできることも限定的にならざるをえない。新しい働き方はこのごとく、過去を参照したり修正してできていくようなものではなく、他者(社)を参考にすればすむものでもない。未来に向けて自らと価値観を共有できる仲間と共に、作り上げてしかないない。
産業革命以降の『モノ余り・時間不足』から『モノ不足・情報余り』、そして閑歳さんの言い方を借りれば、『低消費・高ソーシャル』に転換しようとしている現在、産業革命のいわば最終型とも言える高度成長期のモデルやそれを支える思想が、新しいモデルをつくろうとしている時に参考になるとは考えにくい。歴史に法を取りたければ、20年や30年ではなく、もっとずっと以前まで遡って、底流にながれるエッセンスを掴むくらいのつもりでなければ、価値ある教訓を引き出すなど望み薄だ。 ......
( 「2012-03-04 『個』と『仕事』と『ソーシャル』を考えるにあたって」/風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る/2012.03.04 )( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛箇所を施しています。)
いずれの立場にあっても、<底流にながれるエッセンスを掴むくらいのつもり>の "ゼロベース思考" が要請されている時代環境なのであろう...... (2012.03.08)
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