経済状況が低迷している昨今、どのような業界であっても "就職" することは難しく、いわば "買い手市場" 一色に染まっていそうだ。"IT業界" とて例外ではない。
と思いきや、"IT Specialist" たちの "売り手市場" という話題がないわけではない。と言っても、別に "超・Specialist" ランク向けの話でもない......。
下記引用サイト記事:「IT業界ではこんな人材が引く手あまた--売り手市場の10職種」/CNET Japan/2012.04.17 という話題である。
読み進んでみると、ナルホドなぁ......、という感慨を禁じえない心境とさせられる。
"IT Specialist" の "売り手市場" は、即ち"IT 企業" 側での "人材採用難" と表裏一体となっているわけだが、その "人材採用難" の足元には、結構、"重く悩ましい問題" が横たわっているのだ。
その "重く悩ましい問題" とは、簡単に言えば "IT Specialist" でありながら、"IT Specialist" を超えた能力をも併せ持つ者を探す、という課題である。つまり、<一般的なIT職では獲得できないようなスキル>を持った "IT Specialist" を探すという "難問" なのである。
これを裏返して言えば、今日の "IT Specialist" にとっての "就職への突破口" がここにある、ということにもなる。
下記引用記事では、個々の職種でのそれぞれに個別の事情も見受けられるが、概ね、この種の "重く悩ましい問題" に帰着していると思われた。
そう了解した時、 "十年、二十年昔と、少しも変っていない!" という思いが立ち上がってきたものだ。いや、この種の問題は一過性の原因によるのではなくて、"構造的" とも言える必然性の尾を引いている......、と。
実を言うと、自分は長年この問題、つまり "IT Specialist" にとっての "周辺的なプラスα能力/スキル" というテーマに拘り続けてきたという経緯がある。―― 余談ではあるが、これに関係する "handmade 教材コンテンツ"(for iPad)を後日披露するつもりでいるが ――
そんなことで、米国の IT 分野の事情(日本でも事情は全く同一!)紹介でありながら、実に興味深く下記引用サイト記事を読むこととなった。
IT業界ではこんな人材が引く手あまた――売り手市場の10職種
IT業界には、必要となる能力を持った人たちが潤沢にいるため、買い手市場となっている職種と、必要な人材を確保するのがほとんど不可能という職種がある。本記事では、採用担当者をやきもきさせている10種類の職種を紹介する。 ......
#1:ITトレーナー
ITトレーナーたちはITの世界において独特の役割を担っており、...... 固有のスキルセットが必要となる。...... 出張も頻繁に行う必要がある。...... 人材確保が困難な職種の典型と言えるだろう。
#2:プロジェクトマネージャー
...... プロジェクトマネージャーを採用するうえでの最大の難関は、雇用者自身が作り出している。その難関とは、PMP資格の保持を「必須条件」としていることにある。...... そもそも、PMP資格の取得自体が困難なのである。この資格に関しては、「卵が先か、鶏が先か」という状況になっている。資格を取得するにはプロジェクト管理の経験が必要となる‥‥だが、この資格がなければなかなかプロジェクト管理の仕事に就くことができないのだ。その結果、候補となる人材の数は非常に限られてくるとともに、資質の高い人材がPMP資格を有していないという理由で門前払いされてしまうわけである。
#3:CIOやCTO、IT部門の責任者など
IT分野では、リーダーとしての役割を果たせる人材の確保が非常に困難 ...... 一般的なIT職では獲得できないようなスキルが候補者に求められる。 ...... 「ビジネス面と技術面の双方のスキル」を有し、雇用者側にとって満足のいく人材を見つけ出すことは難しいため、リーダーとしての役割を果たせる人材の採用は一筋縄ではいかないというわけだ。
#4:ヘルプデスク要員
ヘルプデスク要員を採用する際の基本的な問題は、その報酬がたいていの場合、本当に採用したい人材には受け入れ難いほど低いというものである。ヘルプデスクという仕事に必要となる高いスキルを有し、ヘルプデスク要員が直面する課題(「電話に応答するまでの平均時間」や問い合わせの解決率といった、本人の努力だけではどうしようもない評価指標からくる高いストレス、そして電話で怒りをぶつけてくる顧客への対応など)をそつなくこなせるという高いハードルがある ......
#5:専門的なスキルが必要とされるプログラマー
デバイスドライバとオペレーティングシステム、モバイル向けアプリ――これらの開発に共通点を見出せるだろうか?こういったソフトウェアの開発方法を知っており、品質の高い成果物を生み出せるという開発者は極めて稀である―― ...... あまりにも専門性が高いため、開発者の数が極端に少ないものもある。......
#6:プリセールスエンジニア
プリセールスエンジニアもまた、技術的な知識だけでなく、多様な能力が要求される職種である。また、出張が多いことも......。簡単に言うと、契約にこぎつけるための最終段階では、目の前で実際にデモを行ってみせるほど効果的なアピール手段はないということだ。それに加えて、プリセールスエンジニアという職種は純粋な顧客サービス職と言ってもよく、しばしば顧客と直接会って仕事を進める必要があるため、多くのIT技術者 ...... は、尻込みしたくなる職種となっている ...... 営業職としての心意気を持ちながら、ITプロフェッショナルのマインドで仕事をする職種である。 ......
#7:テクニカルライター
ここで言うテクニカルライターとは、...... 製品のマニュアルやヘルプファイルの制作といった仕事を行う人々のこと ...... エンドユーザーが理解できる言葉で、理路整然とした文章を記述でき、ものごとの技術的な側面も把握している人材を見つけることが難しい ......
#8:プロダクトエバンジェリスト
プロダクトエバンジェリストは、業務の技術的な側面に関する「企業の顔」となる。彼らは世界中で開催されるテクニカルカンファレンスでプレゼンテーションを行ったり、フォーラムに顔を出して質問に答えたり、頻繁にブログを更新したり、ソーシャルメディア上で人々に手を差し伸べながら、業界の最先端技術にも追随していく必要がある。 ...... この職種に適している人物は技術的な知識や、仕事上のソフトスキルを有しているだけではなく、仕事や会社、自社の製品に対して純粋な情熱を抱いている必要がある。 ......
#9:IT関連のライター
技術的な内容のブログ投稿や記事を執筆するというのは簡単な仕事だと思われがち ...... IT関連のライターは入れ替わりが激しい。というのも、採用時には記事のアイデアに満ちあふれているものの、1カ月も経つと、書きたかったことをすべて記事にしてしまい、アイデアが枯渇してしまうためである。 ...... 書籍の著者ともなると、テクニカルライターに要求される各種の能力と、知識を数百ページにも及ぶ書物としてまとめ上げる能力が必要となる。しかもそ の作業の対価はせいぜい数千ドルにしかならない ......
#10:メンテナンスプログラマー/レガシーコードプログラマー
...... こういった仕事はあまりにも人気がないため、何か別の仕事であるかのようにカモフラージュされるのが一般的となっている。では実際のところ、どのような仕事なのだろうか?これは既存アプリケーションのメンテナンスを行う仕事である。こういったアプリケーションは長年に渡って使用され、レガシーテクノロジを用いて構築されている場合もしばしばある。この仕事は、キャリアを積み重ねていくことができないため、やりたいと思うプログラマーはまずいないだろう。......
こういったことに加えて、仕事自体も惨めなものとなるはずだ。何年も前に、ろくなドキュメントも作成せずに開発され、担当者もとっくの昔に辞めているというシステムの膨大なコードを読み解いていかなければならないのだ。 ...... 採用された人々は、仕事を始めた後でその大変さに気付くことも多く、長くいればいるほど辞めにくくなるということを肌で感じるのである。......Justin James (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子
( 「IT業界ではこんな人材が引く手あまた--売り手市場の10職種」/CNET Japan/2012.04.17 )( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
なお、ちなみに "各職種" のオリジナル名称は以下のとおり。
1: IT trainer
2: Project manager
3: CIO/CTO/director of IT/etc.
4: Help desk staff
5: Specialized programmer
6: Pre-sales engineer
7: Technical writer
8: Product evangelist( 引用者注."evangelist" :宣教師 )
9: IT author
10: Maintenance/legacy programmer
( 10 IT job roles that are hardest to fill/TechRepublic./2012.04.06 )
IT業界における求職側も、求人側も、現代は "Specialist" の時代だと思い込みがちだ。確かに "specialty" は必要条件ではあるが、十分条件ではない。仕事( =対顧客、collaboration!)を推進する "周辺的なプラスα能力/スキル" が欠かせない。現場サイドでは常識化している事実であるが...... (2012.04.19)
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