この時期、各企業では新入社員を迎える入社式が実施されている。
そんな光景をニュースなどで見ていると、例年にない妙な感慨に襲われる。一方では、未だ就職できないでいる者たちも多いとかだし、また『せっかく入社しても、"2人に1人以下" しか継続しないんだ......』と。つい先日、政府が発表した推計のことだ。
今回は、この辺の事情を下記引用サイト:「日本でも若者の失業が深刻な社会問題になる」/nikkei BPnet〈日経BPネット〉/2012.04.02 に沿って見つめることにした。
それにしても、若年世代の就業状況や失業という事態が気になる。特に、"若年失業率" という指標は、ただでさえ危うい日本の将来の姿を照らし出すようだからだ。
ところで、こうした問題を考える時、しばしば欧米との比較が引き合いに出されるものだ。そして、その比較からすれば、日本の "若年失業率" は欧米に比較すると "まだましな方" だと楽観視されている。
<主要国の若年失業率は、フランスの22.8%を筆頭に、イギリスの18.9%、アメリカの17.6%、ドイツの11%と続く。日本はどうか。9.1%であり、欧米より低い数字だ。90%以上が仕事に就いているという結果になる。>
となると、疑問が生じるのは、冒頭の政府発表の事実、 "2人に1人以下" しか安定就業していない( =<大学および専門学校を卒業・中退した後に正社員などの安定した仕事に就いている人の割合は48%にとどまる> )という事実との関係はどうなってるの? であろう。
果たして "統計的数値" は正しく現実を反映しているのか、についてはこれまでにも「?」が投げかけられてきたりもしてきた。下記記事では "ズバリ" とその "いい加減さ!" が次のように指摘されているから驚きだ。
<日本では、調査期間である月末1週間のうち、1時間でも働けば就業者と見なされ、失業率は低めに出る。さらに、ハローワークへ仕事を探しにきた人だけを失業者としてカウントして失業率を算出することが大きく効いている。仕事探しをあきらめた人やハローワークに行くのが面倒くさいと考える人は失業者とみなされない。......>
そして、率直な疑問が投げかけられている。
<「日本の若年失業率が9.1%」と言っても、その背後には膨大な数の「実質的な失業者」がいると推測される。もしそうした人たちも失業者としてカウントすれば、日本の若年層の失業率は欧州各国のそれと同等か、あるいはそれ以上になるかもしれない。>
その結果、<「若年失業→晩婚・未婚→少子化→年金制度の破綻」という図式>が憂慮されるとともに、とにかく政府は、<若年層の失業実態とその影響をきちんと調べよ>となるわけだ。
若年層に限らず "失業" の悪化状況については、決して "統計的数値" を飾る(?)ことなく、下駄を履かすことなく実態をリアルに凝視すべきだ。後になって "実は......" というような、国民を蚊帳の外に置くやり方にはもう懲り懲りなのである......。
日本でも若者の失業が深刻な社会問題になる ( 大前研一の「産業突然死」時代の人生論 )
政府は3月19日に「雇用戦略対話」を開き、大学および専門学校を卒業・中退した後に正社員などの安定した仕事に就いている人の割合は48%にとどまるという推計をまとめた。大学と専門学校は高等教育の課程に相当するが、その高等教育が雇用に結びついていない実態が明らかになった格好だ。
安定的な就業をしている若者は「2人に1人以下」
...... 早期離職者、無業・一時的な仕事、中途退学者の合計を「学校から雇用へと円滑に接続できなかった若年者」として政府は定義し、計算したところ、その割合が52%になった。逆に言えば、冒頭で書いた通り、「安定した仕事に就いている人の割合」すなわち安定就業率は48%にとどまったというわけである。
高校卒業生で見れば、安定就業率は32%と推計され、さらに状況が悪化する。若年失業率は9.1%、その背後には膨大な失業者がいる
主要国の若年失業率は、フランスの22.8%を筆頭に、イギリスの18.9%、アメリカの17.6%、ドイツの11%と続く。日本はどうか。9.1%であり、欧米より低い数字だ。90%以上が仕事に就いているという結果になる。日本の高等教育修了者でも安定就業率は48%という数字と矛盾するように思えるが、それはなぜか。
答えは簡単だ。日本では、調査期間である月末1週間のうち、1時間でも働けば就業者と見なされ、失業率は低めに出る。さらに、ハローワークへ仕事を探しにきた人だけを失業者としてカウントして失業率を算出することが大きく効いている。仕事探しをあきらめた人やハローワークに行くのが面倒くさいと考える人は失業者とみなされない。また、大学を出ているのに就職できず、親から借金して資格を取るために専門学校などに通っている若者も求職活動を止めていれば、 それも失業者の対象から外される。
したがって、「日本の若年失業率が9.1%」と言っても、その背後には膨大な数の「実質的な失業者」がいると推測される。もしそうした人たちも失業者としてカウントすれば、日本の若年層の失業率は欧州各国のそれと同等か、あるいはそれ以上になるかもしれない。若年失業率50%に迫るスペイン、増税も歳出削減もできない ......
イタリアのモンティ「学者内閣」から学んだ財政改革の方法 ......
「若年失業→晩婚・未婚→少子化→年金制度の破綻」という図式
日本では若年層の失業がそれほど深刻な社会問題になっていないのは、親元で生活している人がかなりの数に上るためだろう。いわゆる「パラサイト」である。
欧米と比べて日本の社会システムが「ソフト」なのは家族の単位で住宅や食糧などの「シェア」が起っているからであるが、それでも35歳で親と同居している人が35%ある、という数字もそろそろ限界に来ている。
ましてや、親との同居は晩婚や未婚の最大の原因になっており、「少子化」という深刻な社会現象の原因そのものとなっている。
つまり、若年失業の増加で結婚できない人が増えていることが少子化の大きな原因となっており、それが現役世代が高齢者を助ける現行の年金制度の破綻にもつながっている、という図式が透けて見えるのである。若年層の失業実態とその影響をきちんと調べよ
未就職世代の親たちはまだ50代か60代の現役世代で、所得もそれなりにあるだろうから、今のところは何とかなる。
( 日本でも若者の失業が深刻な社会問題になる/nikkei BPnet〈日経BPネット〉/2012.04.02 )
だが、親はいつまでも現役ではない。定年退職すれば年金だけの生活となるケースが大半だろうから、いつまでも子をパラサイトにさせておく余裕はない。
私はそう遠くない将来、日本でも若年層の失業率が深刻な社会問題になると見ている。若年層の失業に関する実態とその及ぼす社会的影響をもう少し広範かつ克明に調べてみる必要がある。
もし、すでに欧米並みの20%を超える失業率に達しているようなら、これは政治の大問題になるだろう。( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛を施しています。)
"もう、待ったなし!" の課題がいやと言うほどあるのが残念なところだが、この国の将来に灯りをともすためにも、"若年層の失業問題=少子化問題" は国を挙げて取り組まれなければならない...... (2012.04.05)
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