ユーロ圏の財政危機の最中で、有力格付け会社のフィッチ・レーティングスがつい先日、 "ギリシャ格下げ" を行った。( ◆参照 ギリシャ格下げで対ドル/ユーロ円急上昇!株急落8,611円(今年最大の265円安)!( 当誌 2012.05.19 ) )
そのフィッチ・レーティングスが、今度は "日本の格下げ" を発表した。
下記の【 引用記事 1 】:日本をA+に格下げ、見通しはネガティブ=フィッチ/REUTERS/2012.05.22 によれば、<日本の長期外貨および自国通貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を、それぞれAAおよびAAマイナスからAプラスに引き下げた。見通しはネガティブ。>とある。
そして、<「日本の財政健全化計画は、他の財政面の課題を抱える高所得諸国と比べても悠長なようで、その実行は政治的リスクにさらされている」>と指摘したという。残念ながら、的を射た指摘だと言うほかない。
こうしたフィッチ・レーティングスの意向と判断に対しては、市場関係者たちは、概ね "意外感" 無く受け入れているとするのが、下記の【 引用記事 2 】:フィッチ、日本をA+に格下げ:識者はこうみる/REUTERS/2012.05.23 だ。
日本の財政悪化、政治不安定状態は、もはや周知の事実となっていて、"格下げ" 自体に "意外感" は無さそうである。しかも、国際経済の当面の問題は "ユーロ圏" だとする状況が事を荒立てていないという流れのようだ。
しかし、<動きがあるとすれば、ファンド勢がクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)などデリバティブを活用した取引を行う可能性があるくらい。>と言う点には注意を払っておいた方が良さそうだ......。
【 引用記事 1 】
日本をA+に格下げ、見通しはネガティブ=フィッチ
[22日] フィッチ・レーティングスは、日本の長期外貨および自国通貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を、それぞれAAおよびAAマイナスからAプラスに引き下げた。見通しはネガティブ。
日本の上限をAAAからAAプラスに引き下げた。短期外貨建てIDRはF1プラスを確認した。
フィッチのアジアソブリン部門代表は、格下げとネガティブアウトルックは、高水準で上昇している公的債務比率の結果、日本のソブリン信用度のリスク拡大を反映したものと指摘。「日本の財政健全化計画は、他の財政面の課題を抱える高所得諸国と比べても悠長なようで、その実行は政治的リスクにさらされている」と述べた。
日本の財政戦略では国内総生産(GDP)に対する政府債務比率を2021年度から引き下げると見通しであり、日本の債務水準からみてこのペースは遅いとみなしている。消費税引き上げ案は、政治的に議論を呼んでいる。
しかしながら日本ソブリンは、異例の財政柔軟性を維持しており、低金利での調達が可能で、これは格付けの支援要因と判断している。資金調達の強みは、日本の民間セクターの貯蓄が高いことや、それを国内に投資する傾向が強いことに基づいている。日本円は世界的な準備通貨であり、安全への逃避先の特徴を有している。
しかしフィッチは、民間セクターの投資傾向は、日本に根付いているデフレ均衡に寄与している可能性があるとも指摘。
高い民間貯蓄は日本の経常黒字にも寄与している。しかしソブリン資金調達への圧力が高まった場合、日本の貯蓄と投資態度が変化し、外貨建て信用力に影響する可能性を考慮すると、外貨建てと自国通貨建て格付けを同等にすることが適切と考える。
日本のソブリン格付けは、世界的な高所得経済と強い公的機関という基本的な構造的強さに支援されている。しかし人口構成は構造的な弱さにつながっている。
( 日本をA+に格下げ、見通しはネガティブ=フィッチ/REUTERS/2012.05.22 )
【 引用記事 2 】
フィッチ、日本をA+に格下げ:識者はこうみる
[東京 23日 ロイター] フィッチ・レーティングスは、日本の長期外貨および自国通貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を、それぞれAAおよびAAマイナスからAプラスに引き下げた。見通しはネガティブ。
......
市場関係者の見方は以下の通り。●タイミングに疑問、市場への影響は軽微
<トヨタアセットマネジメント 投資戦略部 チーフストラテジスト 濱崎優氏>
......
動きがあるとすれば、ファンド勢がクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)などデリバティブを活用した取引を行う可能性があるくらい。ただ、市場規模の大きい日本国債を売り崩すことはできない。そもそも、国内投資家の需給はひっ迫しており、ギリシャやポルトガルなどのようにはならない。仮に国債利回りが上昇したとしても、押し目買いが入ると思われ、海外勢に勝ち目はないとみている。●財政不安消えず、市場の関心は欧州情勢
<みずほ証券・チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>
...... 為替や円債市場ではごく一時的に反応したが、市場の関心が欧州情勢に向いているため、影響は限られた。市場で日本のソブリン問題が話題になるのは、欧州情勢がひと区切りがついた後で、もうワンステップ先だろう。
消費増税法案が国会審議中に、法案不成立の可能性を念頭に格下げに踏み切った。法案審議が立ち往生するなどの局面で格下げがあるとみていただけに、今回のタイミングは意外だった。
...... 日本国債市場における外国人投資家の支配が高まれば、国債利回りでリスクプレミアム拡大要因となるだろう。ただ、現在は国内勢の国債消化におけるプレゼンスが圧倒的に大きいため、格下げは相場の材料になりにくい。●財政・政治状況から意外感なし
( フィッチ、日本をA+に格下げ:識者はこうみる/REUTERS/2012.05.23 )
<三菱東京UFJ銀行(ロンドン)欧州為替リサーチ部門代表、デレク・ハルペニー氏>
政治的な不作為や比較的弱い成長、消費税引き上げをめぐる動きや財政見通しからみて、格下げに意外感はない。
円はやや売られたが、これまでも日本の格下げによる円売りは持続しなかった。過去の例からみても、一段の円売りは買いの好機となるとみられる。
...... 欧州情勢の悪化により円は上昇する可能性がある。( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
"日本の格下げ" 問題という "悪い" 話題が、"より悪い" とされる "ギリシャ格下げ" 問題によって "相対化(?)" されているというみっともない構図?!
しかし、"危機" は決して遠のくどころか、ジワジワと忍び寄っているというのが現実か...... (2012.05.24)
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