期待とは裏腹に、デジタル出版 "アプリ"(デジタル報道出版)での "収益性" が実に芳しくない、いや "幻滅" にさえ値するという辛い嘆きの声が伝えられている......。
下記引用サイト記事:出版社がアプリを捨てる日/WIRED JAPANESE EDITON - CULTURE/2012.05.28 によれば、そうした "アプリ" の編集側(編集長)の語り口はというと、
<何が悪かったのだろうか?
すべてだ。>
<それでアプリは?
「抹殺する」>
と、何とも「身もふたもない」捨てゼリフ(?)......。
"バラ色の期待"(<OSごとのネイティヴソリューション、それに伴うあらゆる可能性、潜在的な読者に対するアピール。そして、広告出資者との関係の再活性化への期待......。ポータルサイトに適用されるインプレッション広告の軛から解放されて、アプリでは、印刷媒体と同じ方式で広告スペースを売ることができるだろう>)に反して、不幸にも次々と立ちはだかった厳しい現実!
"販売方法" と "技術面"、そして "読者の反応" の "三層" に渡ってそれぞれ伏兵が潜んでいた。
中でも、"販売方法" にまつわる "重税(?)" 、即ち<iTunes Storeでの1部ごとの販売で得られた収入の30%>という<iTunes Storeの手数料>の "鎖" は重かったようである。
しかも、iTunes Storeのプラットフォームのこれ以上ない使いやすさという点が備わっているだけに、"デジタル・コンテンツ" 提供側にとっては他の"販売方法" を見つけにくいという "悩ましい問題" を抱え込むことにもつながるわけだ。
図らずも "昨日のエントリー"( "AppStore"以外の"ローカル"Webサイトから"電子書籍"をダウンロードする手順の実際!( 当誌 2012.05.28 ) )では、こうした "悩ましい問題" に向けた "ごまめの歯ぎしり(?)" を書いたばかりであった......。
出版社がアプリを捨てる日/WIRED JAPANESE EDITON - CULTURE/2012.05.28
<MITが発行するテクノロジーメディア「テクノロジー・レヴュー」のジェイソン・ポンティン編集長が、アプリにおける収入の少なさに対する、ジャーナリズム業界の幻滅を語っている。>
PHOTO: {El Gris} /Flickr
何が悪かったのだろうか?
すべてだ。MITが発行するイノヴェイションを扱うタイトル、「テクノロジー・レヴュー」が報道出版とモバイルアプリケーションについて議論してたどり着いた結論は、解釈の余地を残さない。
2011年に4億7,200万台のスマートフォンと6,000万台のタブレットが世界中で販売されたが(ガートナー調べ)、ユーザーとデヴァイスの理想の牧歌的生活は、新聞や雑誌の会計においては、デジタル部門での収益に期待された急上昇をもたらすことはなかった。
希望が生まれた瞬間をわたしたちはみな覚えている。2010年1月27日のことだ。初代iPadの発表の際に、ニューヨーク・タイムズ社のマーティン・ニーゼンホルツ副社長は、タブレットは「印刷媒体とデジタル出版の最も優れた部分を両立させる」と断言した。
2年と5カ月が過ぎた現在でも、アプリへの関心はまだ継続している。...... しかし、出版社からの信頼は次第に失われつつあるようだ。
ジェイソン・ポンティンは、彼の記事のなかで「伝統的な出版社を慌てふためかせた」アプリの革新的な側面を列挙している。OSごとのネイティヴソリューション、それに伴うあらゆる可能性、潜在的な読者に対するアピール。そして、広告出資者との関係の再活性化への期待......。ポータルサイトに適用されるインプレッション広告の軛から解放されて、アプリでは、印刷媒体と同じ方式で広告スペースを売ることができるだろう、と。
万人の熱狂の波に乗って、2011年1月に「テクノロジー・レヴュー」も無料のサーヴィスを量産した(iOS:無料。Android:無料。有料オプションは、隔月刊行の紙の雑誌のデジタル版、モバイル版をダウンロードしたい人向けだった)。しかし、1年でポンティン氏が得たのは、「5,000足らずの定期購読と一握りの1部買い」に相当する、125,000ドル以下だった。
最初に嫌疑をかけられたのは、アップルだ。アップルは、アスリートたちに走り出すように呼びかけたあとで、iTunes Storeでの1部ごとの販売で得られた収入の30%を要求してきた。ポンティン氏は、それによって1部あたりの収入が、クパティーノ(アップルの本社所在地)から要求される金額よりもはるかに劣ることを指摘している。どれだけ苦労してデジタルストアに導入されたものかもわからない定期購読システムに対して提示された要求も、同じものだった。そして昨年6月に導入された、雑誌タイトルのポータルサイトで購読手続きを完了させてiTunes Storeの手数料を逃れるという対抗策も、iTunes Storeのプラットフォームのこれ以上ない使いやすさのために、大したものにはならなかった。ポンティン氏の定義では「Androidは『より合理的である』けれども、決してiPadと競えるレヴェルではない」ようだ。
さらに問題なのは、出版物をアプリに適応させるのが、予想していたよりも困難だったことだ。タブレットにはさまざまな画面のサイズがあり、縦向きと横向きに回転できるため、発行者に印刷媒体用、ブラウザー経由の閲覧用、プロプライエタリー・ソフトウェア用、タブレットの横向きモード用、スマートフォン用、HTMLヴュー用と、6つもの異なるヴァージョンの新聞・雑誌を作成させることになった。これはたいへんな作業であり、オブジェクティヴCを知らない内部の開発者たちには手に余るものだった。結局、そういった作業は外注され、よりコストがかさむようになったのだ。
読者に関して言えば、彼らがWebで慣らされてきたようなリンクで飛べるページではなく、いわゆる「壁に囲まれた庭」の中に放り込まれることへの幻滅によって、アプリの購読者として定着するにいたらなかった。売上がわずかであるなら、当然広告主は距離を置く。ポンティン氏は、2011年にデジタル部門で268%の売上増を記録したコンデナストの例を引用する。しかし、コンデナストで最大のデジタル媒体である「WIRED」であっても、iPadで売れたのは雑誌の定期購読のわずか4.1%(33,237部)、1部買いの0.8%(7,004部)だけである。
ニールセンがこの結果を裏付けている。先月、スマートフォンとタブレットのユーザーの33%がニュースアプリをダウンロードしたが、有料サーヴィスを選択したのはそのうちの19%だけだったというのだ。
ポンティン氏によれば、教えを与えてくれるのは、昨年6月にHTML5のモバイル版を立ち上げて、先日iTunes storeのバラック小屋と人形芝居を閉鎖して、アプリの販売を終了させた「ファイナンシャル・タイムス」である。ちなみに「テクノロジー・レヴュー」はiPad向けに353部の定期購読を販売したが、タブレットとスマートフォン版のソリューションを実現するのに124,000ドルを払った。いまはHTML5のポータルサイトを準備しているという。
それでアプリは?
「抹殺する」TEXT BY MARTINA PENNISI
TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI
デジタル出版業界のこうした現状が知らされると、改めて "iTunes Store" のような "プラットフォーム" の "強み" と、"デジタル・コンテンツ" 提供側の "弱み" とが意識されざるを得ない...... (2012.05.29)
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