かねてより、ソフトウェア開発の業界では「ソフトウェア技術者35歳定年説」という不文律めいたものがささやかれてきた。もう20年以上も前からの話だ。
その背景に、プログラミング能力などで年齢限界説が信じられていたことや、30代半ばを過ぎると "人件費" が "コスト高" となるという "経営サイドの懸念" などが控えていたからではないかと思う。どちらかと言えばこの "懸念" が大きかったようである......。
現在、ソフトウェア開発業界は決して好況だとは言えない。いや、わが国に限らず、どの国でも向い風を受けての苦しい状態でさえありそうだ。
◆参照 「受託ソフト開発会社は、もう終わり!? 国内中心に事業展開する各社の業績は超低迷!」(当誌 2011.06.02
こうした中で、"ソフトウェア開発者の年齢構成" にちょっとした変化が現れているという。
調査結果では、<北米におけるソフトウェア開発者年齢の中央値が38歳にまで下がっていた>(下記引用サイト記事:北米のソフトウェア開発者、大幅に若返り/japan.internet.com/2012.06.25 )というのだ。
4年前の<2008年時点の調査では、46歳だった>というから、<大幅に若返りを果たした>と了解できる。
そして、この "若返り" の理由としては、<2008年以降に我々が経験した2つの状況>、つまり(1)<モバイル時代の到来により、新しいデバイスとディストリビューションチャネルが生まれ、これが若い開発者を惹きつけたこと>、(2)<景気後退により、長い経験を持つ開発者が退職したり、解雇されたりしたこと>が横たわっている、と説明されている。
こうした現象は、時代環境からして当然の帰結なのであろうと納得させられるが、一抹の "懸念" もよぎる。
それは、上記の「ソフトウェア技術者35歳定年説」でも否めなかった "懸念" でもあった。一言で言えば、"開発経験の活用と継承" という問題となる。
ソフトウェア開発の成果が、技術者個人の能力に深く根差すことは言うまでもない。が、それは開発経験豊かな先行者からの教育が無くて良いということにはならないはずだ。たとえ、技術環境が次々と一新される時代環境であってもである。
さらに、"開発組織=プロジェクト" の "マネージメント" という局面などでは、なおのこと "経験の蓄積" から学ぶところは大だと言わざるを得ない。
ところが、もし、こうした側面が、"ソフトウェア開発者の年齢構成" の "若返り" によって機能しなくなるとするならば、業界の将来にとって決して好ましい傾向だとは言えないのではないか......。
北米のソフトウェア開発者、大幅に若返り/japan.internet.com/2012.06.25
米国市場調査企業 Evans Data による最新の調査により、北米におけるソフトウェア開発者年齢の中央値が38歳にまで下がっていたことがわかった。同社による2008年時点の調査では、北米におけるソフトウェア開発者年齢の中央値は46歳だった。わずか4年間で、北米のソフトウェア業界は大幅に若返りを果たしたことになる。
Evans Data CEO である Janel Garvin 氏は、この調査結果について次のように語った。
「北米でソフトウェア開発者年齢の中央値が下がったことは、非常に興味深い。これは、2008年以降に我々が経験した2つの状況を反映したものだと言える。1つは、モバイル時代の到来により、新しいデバイスとディストリビューションチャネルが生まれ、これが若い開発者を惹きつけたこと。もう1つは、景気後退により、長い経験を持つ開発者が退職したり、解雇されたりしたことだ」
同調査では、他地域のソフトウェア開発者の年齢中央値も公表している。それによれば、欧州・中東・アフリカ(EMEA)では年齢中央値は39歳、アジア太平洋地域では34歳、ラテンアメリカ地域では35歳だった。
( 北米のソフトウェア開発者、大幅に若返り/japan.internet.com/2012.06.25 )
とかく、"即戦力" の掛け声とともに、まるで "狩猟" のごとく "人材を漁り"、"人材育成という課題" が疎んじられてゆくならば( 参照 ① "狩り獲る狩猟型"企業と"刈り取る農耕型"企業とは全然違う! "歌を忘れた"日本企業?!( 当誌 2012.06.06 ) 、② "受託ソフト開発会社は、もう終わり!"を覆すためには"自前の技術者評価育成"体制の"再"構築以外はない! )、"経営の持続" というメイン課題こそが揺らいでくることになりかねない...... (2012.06.26)
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