長引く景気低迷と言われつつも、"従来型経営(?)" スタイルで何とか持続してきたかに見えていた、国内需要中心のいわゆる "受託ソフト開発会社" 各社も、ここに来て "青息吐息" の状態に陥っているという。
同業界に無縁ではなかった者の目からみれば、特に意外感はなく、むしろ、"よくもまあ、旧態依然の経営スタイルをそのまま引き摺ってこられたものだ......" というのが率直な感想となる。
"派遣型の経営" スタイルからスタートした日本の "受託ソフト開発会社" 各社の経営については、過去何度も "経営改革(構造改革)" が叫ばれて来た。
しかし、"ユーザー依存"、"下請け依存" という "体質" は、どんなに国際環境、経済環境、そしてIT 関連環境が激変しようとも、まともには省みられることがなかった。
それを支えていたのは、象徴的には、この業界の多重下請け構造だと言う人も多い。コスト計算を「人月(にんげつ)」計算で賄う点だけではなく、何と "土木建築" 業界との共通点が多いことか......。
しかし、漸く積年の "矛盾、不都合" が、時代環境の変化によって表面化するに至ったと見える。
下記引用サイト記事:受託ソフト開発会社は、もう終わり!/ITpro/2012.05.31 によれば、業界トップクラスの社長(NTTデータの山下徹社長)が、
<受託ソフト開発会社は、もう終わり!>、<受託ソフト開発会社は生き残れない>
といった<爆弾発言>(警告的発言?)に及んだのだという。
下記記事でも、その敗因(?)が縷々述べられてはいるが、歯に衣を着せぬ表現をするならば、"最後の殿様商売スタイル" に尽きるかと思われる。
<受託ソフト開発会社にとっての最大の問題は、IT投資に見合う効果が表れていないことにある。ユーザーのニーズを的確に把握できていないことを示している。しかも、将来の成長に向けた具体的な施策をまとめ上げられていない。長期ビジョンを描けていないのだ。>
その "殿様商売スタイル" が、一体何によって許されてきたのかという "原点" に立ち戻らない限り、この業界はホントに "もう終わり!" となりかねない......。
受託ソフト開発会社は、もう終わり!/ITpro/2012.05.31
「受託ソフト開発会社は生き残れない。当社だって、変わらなければ生き残れない」。NTTデータの山下徹社長は2012年5月21日、野村総合研究所(NRI)と共催した「ITと新社会デザインフォーラム2012」の記者会見で、こんな爆弾発言をした。実は、5月8日の同社11年度決算説明会でも、「受託ソフト開発に寿命が来ており、(いずれ)なくなる」との見解を明らかにしている。
山下社長が指摘する通り、国内中心に事業を展開する受託ソフト開発会社の業績は低迷している。2007年度をピークに売り上げは下がり続けていて、07年度と11年度の売上高を比較すると、JBISホールディングスが26%減、日本ユニシスが24%減、CECが24%減、富士ソフトが21%減、NSDが21%減と、軒並み2ケタのマイナスである。堅調なNRIでさえ2%減だ。
大手で唯一、NTTデータが16%増と大きく売上高を伸ばした。しかし、それは国内外でのM&Aによるものである。
不採算案件はなくならず、成長戦略も描けず
こうしたなかで受託ソフト開発各社は、11年度に人件費を含めた固定費などの削減で利益の落ち込みに歯止めをかけた。しかし、11年度決算でも相変わらず数億から数十億円の不採算案件が発生している。不採算案件の撲滅運動は約10年前から取り組んでいるが、その効果はいつになったら出るのだろう。
受託ソフト開発会社にとっての最大の問題は、IT投資に見合う効果が表れていないことにある。ユーザーのニーズを的確に把握できていないことを示している。しかも、将来の成長に向けた具体的な施策をまとめ上げられていない。長期ビジョンを描けていないのだ。
もちろん、全く手を打ってこなかったわけではない。......
変化を認識していても、構造改革に踏み切れない経営者
だが、システム開発事業のサービス化やグローバル化は、もう何年も前から指摘されていること。......
変化を認識していても、構造改革に踏み切れない経営者がいる。改革の手段すら分からない経営者もいる。もたもたしている間に、売り上げはどんどん下がっている。NRIの藤沼章久会長もITと新社会デザインフォーラムで、「ITゼネコンがじり貧になる」とし、多重下請け構造の崩壊を予想する。
では、誰が構造改革を先導するのだろう。誰が新しいビジネスモデルを創出するのだろう。
NTTデータ経営研究所の三谷慶一郎コンサルティング事業部門長は「1人でも、NTTデータを凌駕できる」と、中小ソフト開発会社にも期待する。クラウドサービスをうまく使えば、コストと時間をかけずに、ITインフラを構築できるからだ。事実、クラウドをITインフラに活用したサービス事業を展開する中小ソフト開発会社は増えつつある。
一方、大手・中堅の多くは岐路に立ち止まったまま、いまだに周囲の様子をうかがっているかのようだ。このまま構造改革が進まなければ、「この産業がなくなっても、誰も不思議に思わないだろう」(NTTデータの山下社長)。
( 受託ソフト開発会社は、もう終わり!/ITpro/2012.05.31 )
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
<「コンピュータ化」と「情報化」/情報化の本質とは何か>( 「改札を機械化する日本、改札をなくす韓国――情報化の本質とは何か」/DIAMOND IT&ビジネス/2012.05.29 )という卓見に富んだ記事を読んだが、日本のソフト業界に欠けている面は、「コンピュータ化」にかまけて、「情報化」の本質を看過している点なのではないか...... (2012.06.02)
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