他愛無い発想だが、現在の社会環境を "秀吉による刀狩り" にたとえたことがある。
<スマートさを標榜する現代ではあるが、社会や国家は本当にスマートであり続けられるのだろうか......、という "不信感" が拭い切れないでいるのも事実である。
"巨大な財政赤字" と "国家の財政破綻" という危機の可能性! 現在の国家状況は、まるで全身をスマートに着飾った者が、足元だけは "裸足" か "ボロ靴" で済ましているような "アンバランス" だからである。
そして、現代社会は、あたかも "秀吉による刀狩り" のように人々から "自給自足" のための手段と能力とを召し上げておきながら、"破局" に至っても到底必要なリカバリーができないと来たら、人々はあらゆる点、可能な限りの "自前力" に関心を向けておくしかないような気がするのである。
庶民の "自前力" ・"自力救済" 力・"自給自足" 力なぞは、高が知れたものであることは疑う余地はない。ただ、今や、 "親方日の丸" だの "安全神話"だのという、見る見るうちに腐食劣化してしまった言葉などにとてもすがれる事態ではなさそうな気がする。
社会や国家が何とかしてくれるという "妄信" からは漸次醒めるべし、か......>( 社会や国家が何とかしてくれるという "妄信" からは漸次醒めるべし( 当誌 2010.03.07 ) )
単刀直入に言えば、庶民がアルバイト程度に "稼ぐチャンス(スキマ)" が圧倒的に "目減り" しているのが、この時代だということ。かつては、家計補填の象徴であった "内職仕事" なども今では耳にしなくなった。
理由はいろいろで、必ずしも当局による規制ばかりではなく、残しておけばいいものを "スキマ" をまで相応規模の資本が "事業化" して奪い去ったこともあろう。まるで、子ども用の砂場を横取りする印象さえある。
こうしたことで、"農作物" などの "自給自足" 的チャンスさえ持たない給与所得オンリーの都市生活者は、給与目減り、公的支援の目減り、相互扶助機能の目減りの中で "丸裸" にされている......、のが一般的イメージかもしれない。
しかも、家計にのしかかる "固定費支出(税、保険、光熱費 etc.)" の高い比重は、"節約" という庶民の抵抗をも無力化しつつある。
となれば、庶民が、"砂漠で針を探す" ような思いで "稼ぐチャンス(スキマ)" を探し回ることへの共感は禁じえない。
そして、目敏い庶民の一部が、"とあるジャンル" に "商機・勝機" を感じて目を向けたとしても、これまた共感に値する。つまり、"ネット・ビジネス" のことだ。これが "正解" であるというよりも、消去法でこれしかない! というのが正しい。
とにかく、現状での"ネット" が "一人勝ち" 的に、"富と収益の収奪機能" を遺憾なく発揮している事実は否定しようがない。
ただし、庶民がここに目を向けたとしても、確かな "商機・勝機" があるのかどうかは話が別となる。
"ネット・ビジネス" で、今や一般化しているのはあの "アフィリエイト" であろう。だが、これで可能なのは、"定収入" ではなくて "低(底)収入" でしかないことはよく知られている。
そこで目先を変えて挑まれているのが、"アマゾンを介しての古本「せどり」" であったりする。
<ブックオフで古本を買い、アマゾンで売って利ざやを稼ぐ――。「せどり」と呼ぶすき間ビジネスを手がける人が増えている。不況で減った給料の補填をするサラリーマン、就職難でアルバイト代わりに取り組む若者などのほか、月収30万円という主婦もいる。>( 月30万稼ぐ主婦も 古本転売「せどり」にはまる人びと/日本経済新聞/2012.07.08 )
ところが、何でもそうであるが、<誰にでもできることを やっていては大きく稼げない>そうである。"優等生(?)" と思しき<月収30万円という主婦>の場合は、
< 週に4回は都内のブックオフを回って古本を仕入れる。夫の収入は高く、お金に困っているわけではないが、「普通の主婦」では飽きたらず、「夫の収入に追いつきたい」との思いでせどりを始めた。
木村氏は一般的なせどらーとは異なり、バーコードリーダーを使わない。ブックオフのセールにも行かないし、105円の本もほとんど扱わな い。それでも月に30万円も稼げるのは、扱う商品を絵本や女性向け雑誌に絞り込んでいるからだ。このジャンルはせどらーの大半を占める男性が見落としがち で、主婦ならではの知識を生かせば、高収益の売買サイクルをつくれるという。「バーコードリーダーを使うせどりは誰にでもできる。誰にでもできることを やっていては大きく稼げない」>(上記、日本経済新聞)
とのことだそうだ。
また、同記事には以下のようなシビァな事実も記されている。
<だが、せどらーにも淘汰の波が押し寄せつつある。5月、彼らに衝撃を与えるニュースが相次ぎ表面化した。
■アマゾン手数料の引き上げで淘汰の波が...
まずアマゾンが商品の保管・発送を代行するサービスの手数料を8月から現在の2倍ほどに引き上げる計画を打ち出したのだ。一般的な古本や CDの場合、1点につき65~70円程度の値上げとなる。薄利多売のせどらーには痛い出費だ。一方、ブックオフコーポレーションも収益向上を目的に「セールを減らす」と宣言した。せどらーたちが安く古本を仕入れる機会が減ることを意味する。>(上記、日本経済新聞)
モノの中古品売買に依拠する生活、人のことを「静脈生活者」( 増える「静脈生活者」 売りも買いもリサイクル 「エコ」新製品には関心 日経産地研調査 /日本経済新聞/2012.06.24 )と言うらしい。
"動脈" 経済ジャンルから押し退けられた庶民が、今や唯一 "商機・勝機" が見出せるかに見えた"静脈" ジャンルにも、子ども用の砂場を横取り するかのような熾烈な波が一層強まっている...... (2012.07.09)
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