昨日に引き続き "若年失業" という重い課題を取り上げたい。今回、焦点となる事柄は "産業空洞化" である。これに伴っていわば "国内採用空洞化" という現象が発生し、若年層の就職を困難なものにしているという構図である。
この点については、以前にも次のように書いたことがある。
< グローバリズム経済が驀進する中で、グローバル企業をはじめとする少なくない企業が「国内採用抑制、海外採用増」に踏み切っているという事実についてである。 そして、その理由が、<今の日本の大学から出てきた人材を率先して採用していたら、会社は間違いなく滅びるからだ。......要は、玉石混交どころか石しか出てこない日本の大学から誰が採るか、という話なのだ。>(大前前掲箇所)といった、日本の大学生たちの "実力水準" 問題にあることに注意を向けた。しかし、日本の大学生たちの "実力水準" 問題云々以前に、"よりベーシックな問題" が横たわったいる現実に意を払わざるを得ないようである。
( 日本(産業)空洞化!/"就職氷河期"半永久化促進?/高い法人税納付の理由が乏しい?( 当誌 2010.05.31 ) )
いわば、経済グローバリゼーションの本格化によって、日本の基幹産業が生産拠点を海外に移動させるという事態、即ち "日本(産業)空洞化!" の現象のことである。この傾向が強まっていくならば、新規採用人材の "実力水準" 問題が理由となるよりも前に、ますます「国内採用抑制、海外採用増」という流れが固定化するからだ。いやそうなると、人材採用問題に止まらず、産業構造とその全体状況自体が、スカスカ状態へと "空洞化" および "シュリンク(収縮)" して、国内経済とその周辺は最悪の状態へと下降して行くことになりかねない.......。>
こうした "日本(産業)空洞化!" に伴う「国内採用抑制、海外採用増」の流れが、いよいよ "固定化" してきたこと、これによって、現時点での "若年失業" が悪化の一途を辿っていると理解できる。
下記引用サイト記事:新たな雇用 どう創る 働けない 若者の危機 第1部 鳴り響く警鐘(5)/日本経済新聞/2012.07.20 は、この実情について報じている。
<ITは日本の雇用確保に一定の役割を果たしたが、手放しでは喜べない>、<先進国は企業の成長が国内の雇用確保に直結しない難しい時代に入る>というのが、シビァな現実だとされている。
これもまた、"問題先送り体質" によって "日本(産業)空洞化!" 傾向にタイムリーに手を打つことなく、"放置" してきた国の産業政策の "ツケ" ではなかろうか......。
新たな雇用どう創る 働けない若者の危機 第1部 鳴り響く警鐘(5)/日本経済新聞/2012.07.20
時価総額で世界1位になった米アップルは雇用にどれだけ貢献したのか。正社員は3年前の2倍の約6万人。関連するソフト・部品企業でも多くの人が働く。全米で51万4000人の雇用を生み出し、育てたという。
■採用増やすIT
だが、その地元の雇用は厳しい。アップルをはじめ有力IT(情報技術)企業が集まるカリフォルニア州サンタクララ郡。5月の失業率(原数値)は8.2%で全米の7.9%を上回った。アップル本社近くのレストランは昼時、中国やインド系社員が目立つ。社内関係者によると「ここではアジア系の人が増えた」。世界的企業で働くのは高学歴の外国人が多く、その城下町に住む地元の若者に十分な仕事がない。
日本はどうか。ソフトバンクは2013年度の新卒採用を10年度比4倍の1000人にする。インターネットゲーム大手のグリーは1カ月50人程度を中途採用している。
総務省によると、情報通信産業が10年に生み出した雇用は05年比5%増の764万人。輸送機械は2%減の227万人、鉄鋼は6%減の62万人。ITは日本の雇用確保に一定の役割を果たしたが、手放しでは喜べない。
グリー副社長の山岸広太郎(36)は多いときには1カ月に3、4回海外出張し提携相手を探す。中国や韓国で地元企業へ出資した。優秀でコスト競争力が高い海外の開発者をグループ内に確保する狙いだ。ネットに接続した端末があれば場所を選ばずに仕事ができるIT企業は海外人材を活用しやすい。
小売業も海外の人材を増やしている。ファーストリテイリングが3月に開いた入社式に出席した国内採用者は273人。海外はこれを大きく上回り、12年に傘下のユニクロだけで約900人を新卒採用する。イオンは13年度、国内で2000人を採用し、海外では1000人を採用。将来は社員の6割を外国人にしたいという。
小売業には給与水準が低いという課題もある。国税庁によると10年の卸売・小売業の平均年間給与は362万円で製造業より約100万円少ない。工場のように現場の改善で生産性を高めにくいためだ。製造業から小売業へ転じた人は生活水準の維持が難しい。ITや小売りはこれまで雇用の受け皿を担ってきた製造業を引き継げる段階にはまだ至っていない。
慶応大学大学院教授の岸博幸(49)は「先進国は企業の成長が国内の雇用確保に直結しない難しい時代に入る」とみる。
■海外で働けるか
地元に誘致した工場で安定した給与をもらい定年まで働く。製造業で当たり前だったこのような雇用形態は通用しにくくなっている。新興国で成長を目指す自動車大手などは生産や開発を海外へ移し、現地の人材を活用し始めた。
国内雇用を守る努力や知恵は必要だ。だが世界的なコスト競争のなかで海外流出をすべては止められない。国内だけに目を向けていては働き場所はこれから減っていく。国や企業が海外で活躍できる人材を育てることが、グローバル化の時代には必要だ。
ファストリ会長兼社長の柳井正(63)は「若い人は稼げる産業をつくる気概を持ってほしい」と言う。若者の雇用問題を解決するには政府や企業、労働組合、中高年、若者自身がそれぞれ変わらなければならない。若い力を生かせないような国は輝きを失う。=敬称略
(若者の雇用取材班)
<若者の雇用問題を解決するには政府や企業、労働組合、中高年、若者自身がそれぞれ変わらなければならない>とは、確かに正論ではあるが綺麗事......。
"変わる" には強さが必須なのであり、「若い人は稼げる産業をつくる気概を持ってほしい」と言ったところで虚ろに響く。その意味では先ずは "政府や企業......" などの "強きもの" がリードする、それが筋ではないか...... (2012.07.21)
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