中東シリアでの、アサド政権と反体制派の武力衝突、内戦状態が壮絶さを極め、アサド政権側による多数の市民の虐殺が伝えられている。"国連監視団" による活動が進められているものの、国連安保理が十分に機能されずにいる。
次のような "対立構図" が控えているからだ。
< 【モスクワ田中洋之】ロシアは国連安保理でシリアへの制裁警告を盛り込んだ決議案に拒否権を行使し、アサド政権寄りの立場を鮮明にした。シリア決議での拒否権行使は3回目で、欧米との対立を先鋭化させている。...... >( シリア:ロシア「アサド政権寄り」鮮明 欧米と対立先鋭化/毎日新聞/2012.07.20 )
そして、事態は "最悪の局面" に差し掛かりつつある。
シリア、アサド政権が保有する "化学兵器" の使用可能性!というリスクである。
事の発端は、<シリア:化学兵器を保管施設から移動>( 【 引用記事 3 】:シリア:化学兵器を保管施設から移動/毎日jp/2012.07.14 )から始まっていた。
<シリアのアサド政権が、保有を確実視されている化学兵器の一部を従来の保管施設から移動しはじめた。...... 移動目的は不明だが、反体制派との衝突からの防護との説や鎮圧の準備を疑う声も出ている>
事態が悪化し、リスクが高まっていると想定され始めたのは、<「アサド政権は化学兵器を保管場所から出し、使用に備えて分配している」、政権は反体制派に追い詰められ、最後の手段として化学兵器の使用に訴えるだろうとの見方>( 【 引用記事 1 】:化学兵器の使用準備か シリアのアサド政権/【共同通信】/2012.07.22 )などが、 "反体制武装組織" 側から伝わったことによる。
確かに、<具体的な根拠は示さなかった>点などから、その信憑性は定かではない。
しかし、事態がますます緊迫している模様は以下の記事からも推測される。
<米国、イスラエル、ヨルダンの代表は、シリアが保有する化学兵器を防護するための特別部隊派遣計画を準備している、化学兵器がシリア政府軍によって使用されたり、戦闘員に盗まれる可能性について懸念している>( 【 引用記事 2 】:米国 化学兵器防護のためにシリアへ特別部隊を派遣する可能性/The Voice of Russia/2012.07.20 )
【 引用記事 1 】
化学兵器の使用準備か シリアのアサド政権/【共同通信】/2012.07.22
【カイロ共同】シリア軍を離反した元准将で、反体制武装組織「自由シリア軍」で軍事戦略などを担当するムスタファ・シェイフ軍事評議会議長が21日までにロイター通信に対し「アサド政権は化学兵器を保管場所から出し、使用に備えて分配している」と語った。
シェイフ氏は、政権は反体制派に追い詰められ、最後の手段として化学兵器の使用に訴えるだろうとの見方を示した。具体的な根拠は示さなかった。
シェイフ氏によると軍人の離反が加速しており、32万人の全兵力のうち、これまでに少なくとも10万人が離反したという。
<もっと知りたい ニュースの「言葉」 シリア(2011年11月27日)中東和平を中心とした中東情勢の鍵を握る国の一つ。1967年の第3次中東戦争で南部のゴラン高原をイスラエルに占領され、同国に対するアラブ陣営の最強硬派。70年にハフェズ・アサド国防相が無血クーデターで首相に就き、71年の国民投票で大統領当選。2000年の死去に伴い次男バッシャール・アサド氏が後継大統領に就任した。アサド氏の出身である少数派イスラム教アラウィ派が国家中枢を固める独裁体制で、反体制派を厳しく弾圧。パレスチナ過激派などへの支援を理由に米国はテロ支援国家に指定している。(カイロ共同)>
化学兵器(2007年6月2日)マスタードなどの「びらん剤」やサリンのような「神経剤」などを利用した大量破壊兵器。第1次世界大戦で初めて本格使用され、1925年のジュネーブ議定書で戦時使用が禁じられた。イラン・イラク戦争での使用を受けて97年に化学兵器禁止条約(CWC)が発効、開発・生産・保有などが包括的に禁じられた。2006年12月段階で加盟国は181、北朝鮮やシリアは未署名。米政府はCWC加盟のイランが化学兵器の開発能力獲得を目指していると分析、北朝鮮も化学兵器を保有しているとみている。(共同)
【 引用記事 2 】
米国 化学兵器防護のためにシリアへ特別部隊を派遣する可能性/The Voice of Russia/2012.07.20
米国、イスラエル、ヨルダンの代表は、シリアが保有する化学兵器を防護するための特別部隊派遣計画を準備している。英フィナンシャル・タイムズ紙がアラブの情報筋からの話として伝えた。
西側は、化学兵器がシリア政府軍によって使用されたり、戦闘員に盗まれる可能性について懸念している。
米国防総省はこれより先、シリアで国家構造が崩壊した時に、シーア派組織「ヒズボラ」や国際テロ組織「アルカイダ」の手に化学兵器が渡ることを阻止するための派遣計画を作成した。この計画の実現には約7万5000人の兵士が必要とされる。
専門家らは、シリアはアラブ諸国で最も多くの化学兵器を保有していると考えている。だがシリアは化学兵器禁止条約を締結していないため、保有量を推定するのは難しいという。
サイトft.comより
【 引用記事 3 】
シリア:化学兵器を保管施設から移動/毎日jp/2012.07.14
【エルサレム花岡洋二】シリアのアサド政権が、保有を確実視されている化学兵器の一部を従来の保管施設から移動しはじめた。ウォールストリート・ジャーナル紙など米メディアが米政府筋の話として13日に相次いで報じた。移動目的は不明だが、反体制派との衝突からの防護との説や鎮圧の準備を疑う声も出ている。米当局者は、警備が手薄になる移送時にテロ組織に流出する懸念を示している。
シリアは化学兵器禁止条約に署名しておらず、化学兵器の保有は否定も肯定もしていない。米シンクタンク「核脅威イニシアチブ」などによると、シリアは猛毒のマスタードガスやサリンを保有。首都ダマスカス、ハマ、ホムスなど計約50カ所に研究・開発、製造、保管施設を分散させている。政権中枢を占めるイスラム教アラウィ派の精鋭部隊が施設を防護しているという。......
米中央情報局(CIA)のヘイデン元長官は、シリアを支えてきたロシア、中国の態度を硬化させる可能性が高く、シリアが化学兵器を使用する可能性は低いと指摘する。むしろ厳重な保管場所から移動すること自体の危険性を指摘。また「化学兵器の管理が不能となり、軍部以外に流出した時の混乱が心配だ」と話した。......
CNNによると米軍は、アサド政権が化学兵器の防護能力を失った場合、国際テロ組織アルカイダなどへの流出を防ぐには約7万5000人規模の部隊が必要になるとの試算をしている。
中東ではイラクのフセイン政権がイラン・イラク戦争(80〜88年)で、イランや、イランに協力したと疑った自国民の少数民族クルドに化学兵器を使ったとされる。
( シリア:化学兵器を保管施設から移動/毎日jp/2012.07.14 )( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
中東でのこうした "シリアとロシア" との構図を見るにつけ、"北朝鮮と中国" との構図が透けて見えてくるようだ。
また、大国間の "パワーゲーム" のために放置、温存される "代理戦争" という惨いシナリオが...... (2012.07.23)
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