久々に "Cold War(冷戦)" という言葉を目にした。下記引用サイト記事:コラム:ソーシャルメディアと新たな冷戦 By Philip N. Howard/REUTERS/2012.08.03 においてである。
ちなみに "Cold War(冷戦)" という言葉の意味を踏まえておくと......。
< 冷戦(れいせん、Cold War)とは、第二次世界大戦後の世界を二分した、アメリカ合衆国を盟主とする資本主義・自由主義陣営と、ソビエト連邦を盟主とする共産主義・社会主義陣営との対立構造である。
1945年から1989年までの間続き、直接武力衝突して殺戮を伴う戦争を生じなかった為、殺戮を伴う「熱戦」「熱い戦争」に対して、「冷戦」「冷たい戦争」と呼ばれた。......>(ウィキペディアより )
<既存の放送メディアと急成長を遂げるソーシャルメディアの間で、政治のあるべき姿についての戦いが繰り広げられている>状況! ただし、<そこに軍事力の対立はない>という点から、"新たな冷戦" と称されているわけだ。
だが、当コラム筆者が "新たな冷戦" という言葉をあえて選んでいるのは、言外に、この "戦い" が現代において "構造的な性格" を秘めている点を見抜いているからであろう。
<ロシア、中国、サウジアラビア>などの<権威主義的な国家>では、<放送メディアを国営もしくは独占企業の傘下に置き>、いずれの政府も<常に放送メディアの後ろ盾>となっている点。また、<政権を操るエリート層は放送メディアの保護に尽力している>点。
これに対して、<ソーシャルメディアは市民が政府を監視する手段として使われている>という、まさにくっきりとした "対立構造" !
こうした "対立" は、かつての "イデオロギー" をめぐる対立ではないものの、それにも似た "包括性" をもって表面化している "新たな構造的対立" だと、当コラム筆者は認識しているいるものと思われる。
"権力" と "権威主義" とが、ほぼ表裏一体・相即不離であるかぎり、現代におけるこの "新たな冷戦" は止まないに違いない......。
コラム:ソーシャルメディアと新たな冷戦 By Philip N. Howard/REUTERS/2012.08.03
[1日 ロイター] 世界では今、新たな冷戦が始まっている。そこに軍事力の対立はない。既存の放送メディアと急成長を遂げるソーシャルメディアの間で、政治のあるべき姿についての戦いが繰り広げられているのだ。
放送メディアとソーシャルメディアは、ニュースをどう制作するか、所有者は誰なのか、検閲はどう行われるか、の3点で大きく異なる。「新たな冷戦」が最も激しく行われているロシアでは、一部の特権階級が支配する放送メディアに、ソーシャルメディアを通じて勢力を伸ばす一般市民のグループが対抗している。
放送メディアが権威主義的な政府にとって最も有用である一方、ソーシャルメディアは市民が政府を監視する手段として使われている。
これは単に、政界のエリートと民主化を求める活動家の間で行われている情報戦争ではない。放送メディアとソーシャルメディアの間に深く横たわる価値観の不和だ。ロシアのプーチン大統領はマスコミ操作に長けているが、その手腕が発揮できるのは放送メディアに限られている。ロシア政府は放送メディアをどう管理すればよいか熟知している。放送メディア側は資金がどこから出てくるか理解しており、政府批判を強めればどんな事態を招くかも分かっている。プーチン政権が最近導入したメディア規制法は、放送メディアを保護する一方、ソーシャルメディアを圧迫する内容となっている。
メディア冷戦で思い出される最近の戦いは、3月に行われたロシア大統領選だろう。この選挙では、政府は5億ドル(約392億円)を投じて、国内にある投票所すべてにウェブカメラを設置。プーチン政権の透明性に懐疑的な見方が広がる中、ウェブカメラの設置で選挙プロセスの信頼性を高める狙いがあった。
投票の様子を映したビデオは動画共有サイト「ユーチューブ」に掲載された。反プーチン勢力にとってカメラがとらえた映像は、選挙に対する市民の無関心を示した。一方、超国家主義者たちにとっては、選挙で組織的な不正行為は確認されなかったということを示した。ただ、残念なことに、選挙管理当局はビデオ映像を証拠として扱わないと発表し、映像が詳細にわたって調査されることはなく、選挙結果が疑いを持たれることはなかった。
ロシアで起こっていることは、他の国でも起きている。デジタル行動主義とも言えるネット上での反政府活動は世界的に増加しており、その影響は年を追うごとに拡大している。中東の民主化運動「アラブの春」では、一般市民がソーシャルメディアをフル活用し、独裁政権配下の放送局が伝えないニュースを報じた。
サウジアラビアでは、国営テレビ局が王室の式典を放送している間、ユーチューブでは市民らがコメディー番組を視聴している。中国では、すべてのメディアは共産党の統制下にあるが、ソーシャルメディア上で交わされる政治的な議論を規制することはますます困難になってきているように映る。
ロシア、中国、サウジアラビアは、それぞれ非常に異なる政治風土を持っている。しかし、いずれの政府もメディア規制では同様の対応をしており、互いに教訓を学んでいる。共通するのは、常に放送メディアの後ろ盾になっている点だ。権威主義的な国家の大半では、放送メディアは国営もしくは独占企業の傘下にある。いずれの場合も、政権を操るエリート層は放送メディアの保護に尽力している。
メディアをめぐる冷戦の勝者がどちらになるかは分からないが、私は市民社会のメンバーとソーシャルメディアに賭けを投じたい。
*筆者はコミュニケーション、情報、国際学を専門とする米ワシントン大学の教授。現在はプリンストン大学IT政策センターでフェローを務める。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
( コラム:ソーシャルメディアと新たな冷戦 By Philip N. Howard/REUTERS/2012.08.03 )
"ソーシャルメディア" に対するマンネリ的関心(?)も、ややうんざり気味の "タコツボ的光景" から、こうした視野を拡げた論調記事に接してみると不思議に覚醒化させられる思いとなる ...... (2012.08.04)
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