再生可能エネルギーの中で、"ソーラーパネル" などの "太陽光発電機(太陽電池)" が占める位置は大きい。が、言わずと知れた課題は "設置コスト" という点だ。
"太陽光発電機(太陽電池)" の仕組みは、簡単に言えば、太陽光によって "プラスの電気(正孔)" と "マイナスの電気(電子)" を発生させるために、材料として "結晶シリコン" を用いているために "コスト高" となる。(それだけではないが......)ここで使われる "結晶シリコン" は、IT デバイスの "半導体素子" 向けの "シリコンウェーハ" ほどの純度は求められないものの、高純度の "ケイ素(珪素)" であるから "コスト高" になると考えられる。
専門的な基礎知識がないと、やや理解に苦しむところだが、下記引用サイト記事:「ソーラーパネルの超・低価格化を、ナノ技術が切り開く」/WIRED JAPANESE EDITON - SCIENCE/2012.08.06 によると、その高価な "結晶シリコン" を用いずに、安価な素材で作られたソーラーパネルから電気を取り出す方法が見つけ出されたのだという。
従来から "ボトルネック" となっていた点に焦点が当てられ、次々と解消されるに至ったのだという。
<ソーラーパネルのセルから電気を取り出すのに必要な原動力>は、<製造の際に「ドーピング(doping)」と呼ばれる化学処理>が施されて作られる。
ところが、<ソーラーパネル自体は安価な物質で作ることもできるが、現状これらの多くはドーピングをすることができない>。
そこで、<化学物質の代わりに 電界 を利用することで、ほとんどあらゆる半導体から電気を取り出すことが可能になる>という点に着眼するに至る。
ただし、<電界がドーピングに利用できることは半導体業界では昔から知られていたものの、これまでの電極のデザインではソーラーパネルには応用できなかった>ため、<半導体のドーピングを可能にする新たな電極を設計する方法>探しに目が転じられることになる。
そして、<印加電界>という事象を発見することになり、この発見を活かす<電極設計>に辿り着いた、という推移のようである。
不案内なジャンルの研究開発プロセスではあるが、知的営為が事態を解析しつつ次々と問題の核心へと迫って行く様子が伝わって来る......。
ソーラーパネルの超・低価格化を、ナノ技術が切り開く/WIRED JAPANESE EDITON - SCIENCE/2012.08.06
金属酸化物や硫化物、りん化物など、安価で豊富に存在する材料で、発電効率の良いソーラーパネルをつくれるようになるかもしれない。
Photo courtesy of Paul Takizawa, the Zettl Research Group, Lawrence Berkeley National Laboratory and University of California at Berkeley
太陽光発電の大規模な普及を阻害している要因が2つある。
1つは、余った電力の蓄電と送電の必要性。WIREDでも紹介したダニエル・フォンのような人物は(日本語版関連記事)、革新的な蓄電技術を開発することで、この問題を解決しようとしている。もう1つは、ソーラーパネルのコストが高いこと。ソーラーパネルがこれほど高価な理由の1つは、太陽光を電気エネルギーに変換するのに使われる半導体から、電流を取り出すのが厄介なことにある。
これまで電流の取り出しは通常、シリコンなど一部の物質でしかできなかった。しかし、最近明らかにされた新たなブレークスルーにより、半導体の素材の違いに関係なく、発電効率の高いソーラーパネルをつくれる可能性が出てきた。金属酸化物や硫化物、りん化物など、安価で豊富に存在する材料で発電効率の良いソーラーパネルをつくれるようになるかもしれない。
シリコンを材料とする通常のソーラーパネルは、製造の際に「ドーピング(doping)」と呼ばれる化学処理が施される。ソーラーパネルのセルから電気を取り出すのに必要な原動力が、この処理によってつくりだされる。ソーラーパネル自体は安価な物質で作ることもできるが、現状これらの多くはドーピングをすることができない。
しかし、カリフォルニア大学バークレー校ならびにローレンス・バークレー国立研究所の研究者グループが開発した方法では、化学物質の代わりに電界を利用することで、ほとんどあらゆる半導体から電気を取り出すことが可能になるという。この方法は、最近発行された「Nano Letters」誌に掲載された論文の中で解説されている。
この論文の筆頭著者であるウィル・リーガンによれば、電界がドーピングに利用できることは半導体業界では昔から知られていたものの、これまでの電極のデザインではソーラーパネルには応用できなかったという。研究者グループでは、半導体のドーピングを可能にする新たな電極を設計する方法を見つけ出した。
「グラフェンは思いつきだった」とリーガン氏は説明する。グラフェンとは高い伝導力を持ち、厚さが原子1個分の炭素原子シートのこと。ゼトル・リサーチ・グループのメンバーらは、シリコン製のソーラーパネルの透明電極としてグラフェンで実験し始めてから、印加電界によって半導体に直接影響を与えることができることを発見した。彼らは極薄の伝導体が利用できるとわかってから、幅が狭いものでも応用できると気づいたという。この論文では、電極の作り方についてグラフェンを利用したものと、極めて細いナノワイヤーを利用したものの2つが解説されている。
TEXT BY KLINT FINLEY
TRANSLATION BY 中村航
"エネルギー問題" という、人類にとって今後ますます重くなって行くこうした科学的テーマに、若い世代の知性がもっと果敢に挑戦してくれればなぁとを願わずにはいられない ...... (2012.08.10)
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