あっと言う間に "ロンドン五輪" も閉会式(8/12)を迎える。
まあ、こうした時期でしか報じられない記事なのだろうか、"遺伝子ドーピング" に関するきわどい記事が目についた。
下記引用サイト記事:アングル:金メダルか死か、「遺伝子組み換えアスリート」の実現性/REUTERS/2012.08.10 がそれである。
偶然なのか、遺伝子ドーピング万歳!/WIRED JAPANESE EDITON - SCIENCE/2012.08.10 という "同日" 記事もあった。
"遺伝子ドーピング" とは、<筋肉の増強、血流の増加、持久力の強化といった効果をもたらし、スポーツ選手のパフォーマンスを向上させる>ために、"遺伝子組み換え操作" を行うのだという。
もともと、この"遺伝子組み換え操作" は、加齢や病気(筋ジストロフィーなど)で失われた筋肉を復元する "遺伝子治療" として開発されたもの。
ちなみに、以下のように実施されるらしい。
< 遺伝子を他人の体に植えつけるには、ウィルスを使う。ウィルスはそもそも遺伝子だけでできた殻のようなもので、自分たちだけでは増殖することができず、寄生する相手細胞にもぐりこんで自分の遺伝子を広める不気味な物体。このウィルスの特性を利用し、ウィルスに改変遺伝子を仕込んで、生体内にもぐりこませて相手の遺伝子を改造できる。改変遺伝子を運び込むウィルスはベクターと呼ばれる。
筋肉の生成をコントロールする実験のため、上記のScientific Americanでは、特に筋肉に「寄生」しやすく、しかもあまり害がないadeno-associated virus(AAV)というウィルスを活用する例が載っている。>( Off | 遺伝子ドーピング/ON,OFF AND BEYOND/2004.07.01 )
ところが、オリンピックをはじめ,スポーツ競技で取り沙汰される "薬物を投与、薬剤調合" による "ドーピング"、その規制強化の流れがあってのことか、それに替わる "新たなドーピング" の手段として着目され始めたのが、"遺伝子ドーピング" だということのようだ。
規制側にとって厄介な問題は、<今の検査技術は遺伝子ドーピングを検出できるほど精度が高くないため、本当のところは誰にも分からないというのが現状> だという点。
という事情もあってのことか、<「ドーピングで金メダルが保証されるなら、5年以内に死んでも構わないか」と質問したところ、過半数が「イエス」と答えた>という調査結果があるそうだ。
たとえ、<命の危険や未知の副作用があったとしても>、それでもなお、金メダルの持つ魔力が、アスリートを危険な「遺伝子の領域」に踏み込ませてしまう可能性は、誰にも否定できないのだという、そんな現代をどう考えればいいのか......。
アングル:金メダルか死か、「遺伝子組み換えアスリート」の実現性/REUTERS/2012.08.10
[ロンドン 7日 ロイター] これまでの動物実験で、遺伝子操作によって動物の持久力や筋肉の増強に成功したことを考えると、「遺伝子組み換えアスリート」が五輪に出場するのもそう遠いことではないかもしれない。一部では、競技能力を強化するための遺伝子ドーピングが、すでに現実のものとなっているとの声も上がっている。ただ、今の検査技術は遺伝子ドーピングを検出できるほど精度が高くないため、本当のところは誰にも分からないというのが現状だ。
確かなことは、スポーツ選手の能力強化に遺伝子組み換えを使用することは技術的には可能だということ。そして、命の危険にさらされても金メダルを取りたいと思っている選手が存在していることだ。
<遺伝子ドーピング>
遺伝子ドーピングは、筋肉の増強、血流の増加、持久力の強化といった効果をもたらし、スポーツ選手のパフォーマンスを向上させる可能性がある。
その実現可能性について、英エセックス大学でスポーツ科学を研究するクリス・クーパー教授は、「誰かが遺伝子ドーピングをやっているとは極めて考えにくい」としている。
しかし一方で、動物実験における遺伝子操作に携わる科学者らのもとには、スポーツ選手からの問い合わせが殺到しているという。
ウェストオブスコットランド大学の科学者、アンディ・ミア氏は「動物実験で効き目があったもので、技術的には人間にも使えるものがある」と明かした。
<「マラソンマウス」の誕生>
米ペンシルベニア大学のリー・スウィーニー教授は2007年、筋ジストロフィーの研究をしている際に、老化が進んでも筋力が衰えず、十分な強さを保ち続けるマウスを作り出すことに成功した。
2004年には、遺伝子操作したマウスが通常のマウスの2倍の距離を走ることも発見されており、当時は「マラソンマウス」という言葉がメディアでもてはやされた。
ただ、こうした遺伝子操作が人間にも適用できるかどうかはまだ分からず、生殖機能や寿命などへの影響も不明確だと懸念する声もある。
ペンシルベニア大学の研究者がサルを対象に行った遺伝子操作の実験では、赤血球数が増えて血液の流れが悪くなるという副作用が起き、最終的にはサルを安楽死させなければならなくなったという実験結果も出ている。
このため、前述のクーパー氏は「現段階で遺伝子ドーピングは技術的には圧倒的に困難かつリスキーなものだ」と指摘している。
<金メダルの魔力>
しかし、こうした命の危険や未知の副作用があったとしても、遺伝子組み換えアスリートになりたいと望む五輪選手は間違いなく存在するだろう。
米スポーツ医学協会(NASM)の創設者でもあるボブ・ゴールドマン氏が1980年代に実施した調査の結果は、驚くべきものだった。世界レベルのスポーツ選手198人を対象に「ドーピングで金メダルが保証されるなら、5年以内に死んでも構わないか」と質問したところ、過半数が「イエス」と答えた。その後10年にわたり、2年ごとに同じ調査が行われたが、約半数が「イエス」と答える結果に変わりはなかった。
ゴールドマン氏は「私が聞き取り調査した相手には16歳の選手もいた。21歳で死んでもいいと考えるのは、心理学的にも深刻な問題だ」と語っている。
現時点で、実際に遺伝子ドーピングをした選手が五輪に出場しているかどうかは誰にも分からない。しかし同時に、金メダルの持つ魔力が、アスリートを危険な「遺伝子の領域」に踏み込ませてしまう可能性も、誰にも否定できないだろう。
(原文執筆:Kate Kelland記者、翻訳:梅川崇、編集:宮井伸明)
( アングル:金メダルか死か、「遺伝子組み換えアスリート」の実現性/REUTERS/2012.08.10 )
◆参照 遺伝子ドーピング万歳!/WIRED JAPANESE EDITON - SCIENCE/2012.08.10 )
多分、こんな "驚くべき" 内容の記事を読んでも、もはや多くの人が "驚きはしない" のが現代!? 首を傾げるのは、草葉の陰、いや天国のクーベルタン男爵のみ ...... (2012.08.12)
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