個体生命とてひとたび喪失すれば元に戻ることはない。だが、何千年、何万年継続してきた生物の、とある "種" が "絶滅" するならば、今後、二度とその姿を見ることができなくなる。
しかも、そうした "種の絶滅" の原因が、人間という "種" の繁栄に起因しているとなれば、"絶滅種" への憐憫を禁じえない。まして、その姿かたちは、大体が愛くるしいものが多いためか、心痛む......。
そんな生物の中に、"ゲンゴロウ" という水生昆虫がいる。一時は、どこの水辺にも、あるいは "水たまり" にもいて、水中を上下に泳ぎ回るその動きが絶妙にかわいいため子どもたちから愛されてきた。
かつては、お祭りや縁日の夜店でも金魚以上に人気を集めていたりした......。
「絶滅危惧2類」指定の水生昆虫ゲンゴロウ/「ブログ水族館/中村 元」より
その "ゲンゴロウ" が、ついに<「絶滅危惧2類」>( 下記引用サイト記事:九州でツキノワグマ「絶滅」 ハマグリも危機的/日本経済新聞/2012.08.28 )に分類され、絶滅の危険が警告されるに至ったという。
三歳当時、自分は、大阪は今の "長居陸上競技場"(当時は競輪場) 近くに住んでいた。家の前には草ぼうぼうの広い空き地があった。いたずら盛りの子どもにとっては、そこは公園よりもずっと気に入った遊び場となっていた。
雨が降った後の二、三日は、さらに興味が掻き立てられたものであった。草で覆われたあちこちの窪地に水たまりができて、ちょっと目を凝らせば "ゲンゴロウ" が見つけられたからだ。水水しい香りを湛えた草はらを、虫取り網を手にして歩き回った。
ある時、その "ゲンゴロウ" を捕まえて持ち帰り、口の広い透明のビンに水を張って飼ったことがあった。水草代わりの草の切れ端も入れてやった。
窓際にそのビンを "飾り"、その中で、いそいそと上下移動する "ゲンゴロウ" を飽きずに眺めていた、そんな記憶が今でも蘇ってくる......。
九州でツキノワグマ「絶滅」 ハマグリも危機的/日本経済新聞/2012.08.28
環境省が28日公表した改訂版レッドリストは、ニホンカワウソのほか、絶滅したり、絶滅の危機にひんしたりしている野生生物を挙げた。九州地方のツキノワグマはこれまで「絶滅の恐れのある地域個体群」に分類されていたが、1957年以降捕獲例がなく、「すでに絶滅している」としてリストから削除された。
水生昆虫のゲンゴロウは「準絶滅危惧種」から1ランク危険度が高い「絶滅危惧2類」に。環境の変化や飼育目的の乱獲などが減少の原因で、関東以西では生息地がなくなり危機的状態という。
今回の改訂では干潟の貝類についても新たに検討。これまでリストになかった野生のハマグリも80年代以降の干拓や護岸工事などの影響を受け各地で急減したとして、ゲンゴロウと同じ2類に加えられた。食用として流通する多くのものは中国や韓国から輸入される外来種だという。
鳥類では、沖縄の北大東島と南大東島だけに生息していたタカ科のダイトウノスリを、「絶滅危惧1類」から「絶滅種」に変更。両島では森林が少なく発見が容易なのに70年代初め以降は確認されていない。
一方、小笠原諸島だけに生息するクマツヅラ科の植物ウラジロコムラサキは野生化したヤギの駆除で個体群が回復。絶滅の危険性についての表現も「ごく近い将来」から「近い将来」と緩和された。〔共同〕
( 九州でツキノワグマ「絶滅」 ハマグリも危機的/日本経済新聞/2012.08.28 )
"絶滅危惧" に瀕しているものは、愛しい生きものだけとは限らないのが現在だ。人々の、おっとりとして潤いのある "習わし" や風情のあることばなど......。そんなものもまた確実に "絶滅危惧" に瀕しているにもかかわらず、惜しむ声とてか細くなり果てているのが生存競争へと追い立てられた現代か ...... (2012.08.29)
<追加>
< このうち、ニホンカワウソについては、昭和54年に高知県須崎市の川で最後に目撃されてから30年以上にわたって生息が確認できず、絶滅したと判断したということです。昭和まで生息していた哺乳類が「絶滅種」に指定されたのは、今回が初めてです。
今回は「絶滅種」のほかに、絶滅のおそれの高い「絶滅危惧種」など、新たに419種類の野生生物が加わり、合わせて3574種類に増えました。>( 「絶滅種」指定 専門家"長期対策を"/NHK NEWS WEB/2012.08.28 )
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