"チャイナリスク" という言葉にいよいよ緊張が伴っている気配が濃厚のようだ。
下記引用サイト記事:「上海株、2000ポイント攻防の警戒水域」 編集委員・滝田洋一/日本経済新聞/2012.09.24では、<政経不可分の中国リスク>と卒なく表現されている。
取りあえずその意味を「カントリーリスクの一種。主に中国国内で外国企業が経済活動を行う際のリスクのことを指す。」(はてなキーワード)と了解しておく。
今現在、この "チャイナリスク" は、日中関係を緊張の渦に巻き込んでいるわけだが、それに限定されることなく、最近では "ユーロ債務危機" 問題に匹敵する重みで懸念され、不安定な世界経済の動向にとって決して小さくはない "リスク" となってもいそうである。
それと言うのも、この "チャイナリスク" 自体が原因となって、現在苦境にある中国経済がさらなる混迷状態に突き進むことも考えられないではないからだ。
下記引用サイト記事では、ひとつの指標として、上海株価の<2000ポイントを割り込み>が取り上げられているが、より懸念される問題は、<製造業にとって深刻なのは、低廉な労働力という国際競争上の優位を急速に失っていることだ>、つまり<中国の「世界の工場」としての地位は揺らぎだしている>という点以外ではなかろう。
そして、さらに注目すべき点は、<中国は低コスト労働に頼る度合いを下げ、技術水準を高める方向に産業構造を転換すべき段階を迎えている>という課題であり、<この局面で必要なのは、外国資本による技術移転のはず>というくだりであろう。
ところが、この間の<暴徒化した反日デモ>と、これへの中国政府の対応は、世界の<多くの企業は対中戦略の練り直し>を余儀なくさせられる結果となった。
もし、この状況が継続されるならば、世界の高度技術企業は<投資資金の中国離れ>という形をとらざるを得なくなり、その結果、中国は揺らぎだしている<「世界の工場」としての地位>からのテイクオフが至難の業となり得る......。
まさに、"チャイナリスク" 自体が、中国の "Next" への道を閉ざしてしまうことになりかねないということになる......。
上海株、2000ポイント攻防の警戒水域 編集委員・滝田洋一/日本経済新聞/2012.09.24
政経不可分の中国リスクが強く意識されだすなか、中国株の代表的指標である上海総合指数の動向が焦点となっている。2007年の高値の3分の1の水準に沈み、からくも2000ポイントを維持している。2000ポイントを割り込むようだと、リーマン・ショック後の09年初以来、中国経済は警戒水域に入る。
今回の事態が深刻なのは、中国当局が9月に1兆元(約12兆円)の景気対策を打ち出したにもかかわらず、株価の低迷が続いているからだ。2回にわたる政策金利の下げも、空振りに終わっている。
外需と投資が主導の中国経済が曲がり角を迎えている。投資主導の成長では投資が投資を呼ぶ加速度原理が働くが、今や採算度外視の過剰投資のとがめが出始めた。
企業や地方政府の過剰投資は過剰債務と表裏一体。一段の景気減速は過剰債務の中身を劣化させ、銀行の不良債権問題を表面化させかねない。......
製造業にとって深刻なのは、低廉な労働力という国際競争上の優位を急速に失っていることだ。......
冷戦が終わりグローバル化が進んだ1990年代以降、米国では製造業が生産拠点を海外に移す「オフショアリング」の大ブームが起きた。これら企業の生産拠点を大々的に受け入れ、製品に組み立てたうえで輸出を伸ばしたのは中国である。
しかし米国では新たな潮流が起きている。生産拠点の米国内への回帰、つまり「リショアリング」だ。製造業の雇用拡大を掲げるオバマ政権が、後押ししていることは、いうまでもない。
米中の生産コストの縮小はこうした流れを加速させている。低廉な労働力を持つ新興国の台頭もあって、中国の「世界の工場」としての地位は揺らぎだしている。
中国は低コスト労働に頼る度合いを下げ、技術水準を高める方向に産業構造を転換すべき段階を迎えている。この局面で必要なのは、外国資本による技術移転のはず。
だが暴徒化した反日デモは、清朝末期の排外運動が引き起こした義和団事件を想起させる。当局がデモを民衆の不満のガス抜きに使っていたとなると、多くの企業は対中戦略の練り直しを余儀なくされよう。
日本製品不買の呼びかけや通関手続きの遅延など、裏から手を回すようにして、政治問題を通常の経済活動に絡ませる。そんな手法は投資資金の中国離れという形で、ボディーブローのように自らにはね返ってくる。
上海指数が2000ポイントを割るような事態は、誰よりも「株民」といわれる中国の個人投資家に痛手となる。1億7000万ある証券口座の主役である彼らの心が離反しないようにするにはどうしたらよいか。一番良く知っているのは、中国当局自身のはずだ。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
株価の推移の視点では "2000ポイント攻防" が "警戒水域" なのかもしれないが、視点を替え、視界を広げるならば、既に中国の現状は "警戒水域" に踏み込んでしまっているという懸念が打ち消し難い ...... (2012.09.25)
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