米連邦準備理事会(FRB、バーナンキ議長)による量的緩和第3弾(QE3)で、各国の "株価上昇気運" がもたらされている。
しかし、一見、好ましいと見える一連のこの推移に "隠れた問題点" が無いわけではなさそうだ。気になる二、三の記事を抜粋引用しておきたい。
その一は、格付け会社イーガン・ジョーンズによる<米国の信用格付けを「AA」から「AAマイナス」への引き下げ>という点。<「商品コストの上昇は、企業利益を圧迫し、消費者コストを押し上げ、消費者の購買力をも弱めることになる」>との指摘。(【 引用記事 1 】)
その二、<インフレを引き起こすことなくいずれバランスシートを縮小させることができるとしているが、前例のない措置からの出口戦略がうまくいくかは不透明な点や<量的緩和により米国から余剰マネーが国外にあふれ出していると指摘。ドル安が他国の輸出産業への打撃となっている>点。(【 引用記事 2 】)
その三、米国がすでに抱えている<年末に迫る「財政の崖」>や<年末に政府支出の強制削減が発動され、減税措置が失効する>という点などと議会との緊張関係の問題。(【 引用記事 3 】)
要するに、必ずしも "用意周到" なかたちで選択されたとは言い難い施策が、今後どのような "副作用" をもたらすかは定かではないという "綱渡り" の様相である。
そして、中国、日本を含むいずれの国々もこうした路線を踏襲する可能性が否定できないとすれば、"制御不能なインフレ" などが少なからず懸念される......。
【 引用記事 1 】
米国の信用格付けを「AAマイナス」に引き下げ=イーガン・ジョーンズ/REUTERS/2012.09.15
[ニューヨーク 14日 ロイター] 格付け会社イーガン・ジョーンズは14日、米国の信用格付けを「AA」から「AAマイナス」に引き下げ、米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)に踏み切ったことを引き下げ理由として挙げた。
声明では「QE3により株価や商品(コモディティ)価格は値上がりする見通しだが、われわれは、それによって米経済や信用の質が損なわれると考える」と指摘。「商品コストの上昇は、企業利益を圧迫し、消費者コストを押し上げ、消費者の購買力をも弱めることになる」と述べた。
【 引用記事 2 】
アングル:米量的緩和第3弾、FRBの狙いや想定されるリスク/REUTERS/2012.09.14
...... Q)量的緩和の副作用は
A)FRBのバランスシートは資産買い入れにより2兆8500億ドルに膨れ上がっている。FRBはインフレを引き起こすことなくいずれバランスシートを縮小させることができるとしているが、前例のない措置からの出口戦略がうまくいくかは不透明。
さらに、米財政赤字が拡大するなか、米国債の引き受け先があることは議会や政府にとり好都合になっているとの指摘もある。
新興市場国などは、量的緩和により米国から余剰マネーが国外にあふれ出していると指摘。ドル安が他国の輸出産業への打撃となっていると批判する。
前例のない規模の刺激策でFRBが境界線を越えているとの批判が高まり、その結果、議会でFRBの権限を制限するような動きが広がる可能性もある。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
【 引用記事 3 】
米経済、「財政の崖」により回復損なわれる可能性=FRB議長/REUTERS/2012.09.14
[ワシントン 13日 ロイター] バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は13日、年末に迫る「財政の崖」を回避できなければ、米経済の回復が損なわれる可能性があると警告した。
米国では議会が新たな赤字削減策で合意しなければ、年末に政府支出の強制削減が発動され、減税措置が失効する。
バーナンキ議長は記者会見で、この2つの衝撃から経済を守れるほどFRBの新たな景気刺激策は強力ではないと指摘した。
議長は「財政の崖への対応が行われなかった場合、私がこれまで述べてきたように、われわれのツールは大きな財政の衝撃による影響を相殺するほど十分強力ではないため、そうした事態に備えた対策を検討する必要がある」とし、「財政政策当局者は解決策を見出すために協力することが非常に重要になる」との見解を示した。
FRBは13日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で、景気支援に向け、量的緩和第3弾(QE3)の実施を発表。また、異例の低金利を維持する時間軸を2015年半ばまでとし、従来の2014年終盤から延長した。
米議会予算局(CBO)は前月、歳出の強制削減と減税失効による衝撃で、米経済は「著しい」リセッション(景気後退)に陥り、200万人の雇用が失われるとの見通しを示した。
議会は大規模な赤字を中期的に削減することが望ましいとの見解で一致しているものの、その方法をめぐって意見が対立している。
バーナンキ議長は、議会が財政の崖を回避する方法で合意できない可能性が、景気回復ペースの加速を抑制している要因の1つだと指摘。
「この問題が解決されるかどうかや、その解決方法に多くの企業が注目している。この問題は現在、行動に影響を及ぼしている懸念材料だ」と語った。
やはり、<「商品コストの上昇は、企業利益を圧迫し、消費者コストを押し上げ、消費者の購買力をも弱めることになる」>との "副作用" の指摘が大いに気掛かりとなる ...... (2012.09.17)
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