今、"タブレット戦国時代" が始まっていると言われる。そして、衆目は、"ハード" としての "タブレット" の機能・性能に集まりがちだ。それもまた興味深いには違いない。
しかし、"ハード" のバリューは "単体" では決まらずに、それが利用される一連の環境(プラットフォームetc.)を前提に評価されることは言うまでもない。
アップルを飛躍させた "iPod" のバリューを高めたのが、"iTunesミュージックストア" という仕掛けを軸とした環境作りであったことは良く知られている。
下記引用サイト記事:コラム:「タブレット戦国時代」生き抜くキンドルの進化/REUTERS/2012.10.11 では次のように指摘されている。
<10年前、iPod(アイポッド)はデジタル音楽市場にやや出遅れて登場したものの、市場を独占。iPodを中心にスピーカーや付属品といった「エコシステム(生態系)」が発達した。その後、音楽の作り手であるミュージシャン、レコード会社などを巻き込み、エコシステムは拡大していった>
つまり、この "エコシステム(生態系)" こそが、モバイル端末のバリューを "化けさせる立役者" だったのだと言えそうだ。
そして、"タブレット戦国時代" を迎えているという今も、同じリクツが成り立つとするのが、下記記事の指摘である。
そのすべてではないにせよ、タブレットの主要コンテンツが "電子書籍" であり、その "エコシステム(生態系)" に、タブレットのバリューが依存していることは容易に頷けるところだ。。
その点で、アマゾンが数十年を費やして「キンドル・エコシステム」を築き上げてきた既成事実は揺るがしようがなく、アマゾンが開発した目にやさしい白黒の電子インクや、69ドルまで値下げした価格戦略も奏功し、タブレットのジャンルでの "キンドル(ファイア)" は、大いに注目されそうだと......。
確かに、<Kindleはハードウェアでの儲けゼロでやらせていただいております>( Kindleはハードウェアでの儲けゼロでやらせていただいております/GIZMODO/2012.10.12 )と喝破できるほどに、ハードの売上に汲々としない「キンドル・エコシステム」が控えていれば、"タブレット戦国時代" でのアマゾンは善戦しそうではないか......。
コラム:「タブレット戦国時代」生き抜くキンドルの進化/REUTERS/2012.10.11
By Kevin Kelleher
ユーザーであろうがなかろうが、米アマゾン・ドット・コムの端末「キンドル」は尊敬に値する。デジタル業界は、たとえ素晴らしい製品でも、それを上回る製品が登場すれば淘汰されるという「ダーウィンの進化論」が当てはまる時代にあるが、キンドルは電子書籍端末から、タブレット市場でシェアを獲得するマルチメディア機器にまで進化を遂げた。
純粋に機能を追求したキンドルに華やかさはない。米アップルのタブレット端末「iPad(アイパッド)」が持つような魅力にも欠ける。2007年に399ドルで発売された時は5時間で売り切れたが、当時は、本好きだけに受けるニッチ市場だと懐疑的にみる向きもあった。しかしやがて、キンドルはそうした見方は間違っていたことを証明してみせた。
...... アマゾンがiPad向けに提供した電子書籍アプリの出来があまりに良かったため、ハードとしてのキンドルはお払い箱となり、アマゾンはiPadや他のタブレット向けアプリで生きていくと考える人もいた。
しかし、実際にはお払い箱になるどころか、アマゾンが開発した目にやさしい白黒の電子インクや、69ドルまで値下げした価格戦略も奏功し、キンドルの売り上げは好調を維持した。
...... アマゾンはキンドルの具体的な販売台数を明らかにしていない。しかし、その成功のほどは、空港の搭乗待合室や大都市の交通機関に足を運べば一目瞭然だ。ちまたにはキンドルがあふれている。......
10年前、iPod(アイポッド)はデジタル音楽市場にやや出遅れて登場したものの、市場を独占。iPodを中心にスピーカーや付属品といった「エコシステム(生態系)」が発達した。その後、音楽の作り手であるミュージシャン、レコード会社などを巻き込み、エコシステムは拡大していった。
私の理解では、エコシステムとは人々が会社や製品を通して互いに支え合うコミュニティーを意味する。消費者だけでなく、時として競合他社さえもエコシステムの一員なのだ。
アップルは成熟したエコシステムを持つ典型的なお手本だ。私はアマゾンが1カ月前に新型のキンドルやタブレットを発表した時、同社のエコシステムについても考えるようになった。当時、マイケル・カーニー氏は「新型のキンドルやタブレットには親しみやすさと値ごろ感があり、それらがアマゾンのエコシステムにのめり込む入門薬物であることに気づくまで、そう時間はかからないだろう」と書いていた。
では、...... アマゾンはいかにして独自のエコシステムを発達させたのだろうか。米国で5人に1人がタブレットを所有するようになった現在、キンドルはなぜ売れ続けているのか。
その答えは至って簡単だ。アマゾンが数十年を費やして「キンドル・エコシステム」を築き上げてきたからだ。
RIMやマイクロソフトがアプリ開発者の気を引こうとアップルやグーグルとし烈な戦いを繰り広げる中、アマゾンは出版という伝統的な事業でコンテンツの充実に注力してきた。インターネットが普及しても、出版市場の規模は巨大だ。アマゾンは、消費者の本に対する情熱を、自社ブランドへの忠誠心に移行させることに成功したのだ。......
アマゾンのタブレット「キンドル・ファイア」が、キンドルのように何年にもわたりヒットするかはまだ分からない。しかし、低価格に加え、顧客の忠誠心と成熟したエコシステムによる豊富なコンテンツの融合により、滑り出しは力強いものとなっている。
自社の低価格タブレットで対抗しようとしているハードメーカーは、自分たちはうまくいかないのに、なぜアマゾンは成功を手にできたのか思いをめぐらすかもしれない。
耳が痛いかもしれないが、その答えは至極簡単。エコシステムだ。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
それにしても、<アマゾンは出版という伝統的な事業でコンテンツの充実に注力してきた。/ アマゾンは、消費者の本に対する情熱を、自社ブランドへの忠誠心に移行させることに成功> という点が秘める意味は大きい ...... (2012.10.17)
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