"トレンド予測" というものは、往々にして "技術的シーズ" から我田引水的に推測されるものが多い。そこでは、ユーザー側の "ニーズ" や "コスト負担" というリアルな事情が疎かにされがちだ。
その点、下記引用サイト記事:コラム:2013年のIT業界、予想される3つのトレンド/WIRED/2012.12.30 は、推測する視点を "ユーザーニーズ/ユーザーコスト感覚" にでも据えているかのようで、思わず "そうかもしれない......" という頷きを誘う。
予測されたIT業界2013年の3つのトレンドは以下の3つだとされている。
1.<キンドルを50ドルに>
2.<ネットブックの逆襲>
3.<Siriなど音声操作機能に注目>
1./2. は、ユーザーの "日常生活" 感覚、価格感覚に視座を据えたものである。
<ずばりその価格は50ドル。この値段なら、たまにしか使わないかもしれないニッチな商品でも買ってもいいと思うだろう。学生も迷わず手を出せるはずだ>
<多くの機能にお金を払う必要はあるのだろうか/200ドル程度で実用的なノートPCが手に入るなら、1000ドル以上するPCの必要性についてもう一度考え直すことはあるかもしれない>
もちろん、価格設定だけがすべての問題ではないが、筆者は、"その点の解消" によって<日の目を見る>ばかりか、相応のトレンドが作り出されるのではないかと見ている。
3. についても、ユーザーの "日常生活" に視点を据えて推察されている。
"日常生活" での "役立ち方" への生活感覚からの関心である。
<音声操作機能/音声技術が持つほぼ完璧な「口述筆記」能力に注目が高まるだろう。最も目立たない機能かもしれないが、日常生活では一番役に立つ>
往く年、2012年の "IT業界" は、アンドロイドも含めて "モバイル端末" が旋風を巻き起こしつつ、"製品価格" の "ダウンサイジング" を各社が競い合って追及したかのような印象を残した。
こうなると、ますますユーザーの "日常生活" 感覚、価格感覚 は研ぎ澄まされざるを得なかったはずだ。
だからこそ、この延長線上で "2013年のトレンド" を推測してみる視点には説得力があると思われるのだ。
どうだろうか? もはや、良いモノでも "高額" であったなら目が背けられる、そんな "シビァ・トレンド" に突入してしまったのではなかろうか......。
コラム : 2013年のIT業界、予想される3つのトレンド/WIRED/2012.12.30
By John C Abell
ITで最も重要なアイデアというのは、時として日常の中に潜んでいるものだ。そうした考えからすれば、2013年に起こりそうなことが3つ考えられる。ただし、その3つとは、3Dテレビやウェアラブルコンピューター、ロケットベルトではない。少なくともこの年においては。
<キンドルを50ドルに>
電子書籍専用端末の需要は急速に後退している。市場調査会社IHSアイサプリの推定では、2012年の電子書籍端末の出荷台数は約1500万台で、前年比36%減少する見通しだ。
それも当然だろう。タブレット端末の価格が下がっているからだ。もちろん、アマゾンの広告付きキンドルのように、わずか70ドルで手に入る電子書籍端末もある。しかし、200ドル出せば、電子書籍が読めるだけでなく、音楽や動画を楽しめたり、ゲームもできたりするのに、なぜあえて電子書籍端末を買う必要があるのか。
電子書籍専用端末は、技術的に追い抜かれたから人気を失っているのではない。価値観が変わったから需要が減りつつあるのだ。しかし、これを解決する簡単な方法もある。買わずにはいられないほど安くすることだ。
ずばりその価格は50ドル。この値段なら、たまにしか使わないかもしれないニッチな商品でも買ってもいいと思うだろう。学生も迷わず手を出せるはずだ。
アマゾンは電子書籍に革命を起こした。電子インクは生活を一変させるほどのテクノロジーであり、消えてなくなるのはあまりにもったいない。ただ唯一「間違い」なのは、高価すぎるということ。それを改善し、なお進化し続ける電子書籍端末に新たな息吹を吹き込めるのはアマゾンだけだ。
<ネットブックの逆襲>
電子書籍端末はタブレットの脅威にどうにか耐えているが、ネットブックは違う。
必要最小限の機能を備えた安価な小型ノートパソコン(PC)として世に出たネットブックは当初、「世界を変える」と意気込んでいたが、同様に超軽量ながらもフル装備であるアップルの「MacBookAir(マックブック・エア)」やタブレット端末「iPad(アイパッド)」に完全にお株を奪われてしまった。
しかし今また、ネットブックが日の目を見る状況が整いつつある。クラウドコンピューティングの進歩は、ネット上での共同作業や文書共有といった生産活動を容易にしてくれる。それはハードディスクドライブの重要性が以前ほどなくなるということも意味する。
実際、ハードドライブより容量は小さいが軽量なフラッシュメモリードライブが、今や高性能端末には必需品となっている。そして、ネットブック最大の妥協点であったCDドライブの欠如も、今では大して問題にはならない。
では、多くの機能にお金を払う必要はあるのだろうか。もちろん、それは人によってさまざまだろう。ただ、200ドル程度で実用的なノートPCが手に入るなら、1000ドル以上するPCの必要性についてもう一度考え直すことはあるかもしれない。
大容量リモートサーバーのおかげで、ネットブックは魅力的になるだろう。そして、この分野で最大の恩恵を得るのは米グーグルだろう。
インターネット検索大手のグーグルには、利益率の非常に薄いネットブックのビジネスに参入できるだけのリソースや手段がある。グーグルは数年前からネットブックを推進し始め、昨年には企業や学校へのリース事業を立ち上げた。現在は韓国サムスン電子製など2モデルで消費者への直販を拡大している。一番高くても250ドルと、タブレット端末の中心価格帯であり、競合する超軽量端末のわずか数分の1の値段だ。
<Siriなど音声操作機能に注目>
音声操作機能「Siri(シリ)」は、2011年に「iPhone(アイフォーン)4S」に搭載されてから静かな革命を始めた。アップルの多くの発明と同様、音声操作自体は新しいものではない。音声操作はデスクトップPC上では極めて不自然に見えたこともあり、うまくいくとは到底思えなかった。しかし、デスクトップと違うのは、携帯電話はもともと話すための端末であるという点だ。携帯に話しかけて音声で操作するのはちっとも不自然ではない。私は昨年のちょうど今頃、Siriを「IT業界を揺るがす地震」の1つだと評した。このSiriと、グーグルの基本ソフト(OS)アンドロイドで使える音声操作機能は、2013年に火が付くだろう。
コンピューターで常に悩みの種なのは入力だ。キーボードもトラックパッドも、ゲームコントローラーも十分ではない。できる限りコンピューターを速く動かそうと、いつもショートカットを探してしまう。
iPhoneの成功は、そのインターフェースの操作性の良さによるところが大きい。このコラムのアウトラインも、雑用をしながらiPhoneにアイデアを記録しながら作成した。
Siriの利用は私が予想していたほどは広まってはいない。私の知るiPhoneユーザーの大半は使っていない(もしくは、使っていないと認めた)。とはいうものの、今では音声操作は至るところで使用されている。アンドロイド搭載機にもSiriに匹敵する機能があり、お互いにアプリを公開し利用できるようになっている。
では来年には何が起きるか。音声技術が持つほぼ完璧な「口述筆記」能力に注目が高まるだろう。最も目立たない機能かもしれないが、日常生活では一番役に立つ。
グーグルとアップルは、言われたことをするというモバイル端末のつつましい能力をアピールするのが賢明だろう。端末が意のままに使えるようになるのは大きな意味がある。
日本の政界では、"デフレ脱却" が声高に叫ばれているが、"モノの安さ" に馴染んだ庶民感覚を敵に回すことは容易なことではないだろうと推察する...... (2013.01.01)
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