タンカーの転覆や、海洋石油掘削基地の爆発事故などによる "重油/原油の流出" は、海洋を広範囲にわたって汚染させるとともに、漂着した海岸をも想像を絶した汚染状況と化す。
近くは、2010年4月に、米ルイジアナ(Louisiana)州沖の "海洋石油掘削基地「ディープウオーターホライズン(Deepwater Horizon)」の爆発事故" でメキシコ湾(Gulf of Mexico)に大量の原油が流出した。
また、日本の海岸が無残に汚染された例では、1997年1月、島根県沖で発生した "ロシアタンカー「ナホトカ号」重油流出事故" があった。
いずれも、 "流出した重油/原油の回収" をしなければ "環境汚染の修復" はまっとうされない。しかも、流出が続く間、海洋/海岸の水鳥たちは "油まみれ" となって甚大な被害を被る。自然に洗い落とされるものではないからだ。
しかし、"流出した重油/原油の回収" 作業は難航を極める......。
右の写真は、"「ナホトカ号」重油流出事故" で重油汚染された福井県の海岸線で、"重油の回収" 作業と "水鳥救護" に当たったボランタリーの人たちのサイトからのものだ。
手前に写っている、"手作業による重油の回収作業" に腐心する人たちの様子からは、まさに"重油流出事故" の惨さが推察されて余りある。
さて、今回、着目したい "科学記事" は、こうした困難を極める "流出した重油/原油の回収" の作業に、いわば "光明を投じる科学的成果" についての記事である。
下記引用サイト記事:京大:「マシュマロゲル」開発 油流出事故に応用も/毎日jp/2013.01.11 によれば、
<水ははじくが、油をよく吸収する新しい高分子物質「マシュマロゲル」を京都大の中西和樹准教授(無機材料化学)の研究グループが開発/ 油の流出事故での回収作業や化学物質の精製などへの応用が期待できる/ 97年のロシアタンカー「ナホトカ号」重油流出事故で、海岸に流れ着いた重油の回収は、ひしゃくなどですくう人海戦術に頼らざるを得ず、岩場での作業は困難を極めた。マシュマロゲルは、市販の薬品を使って合成でき、成形も自在。中西准教授は「現場に材料を持ち込み、地形や用途に応じてその場で作製することも可能ではないか」> と......
京大:「マシュマロゲル」開発 油流出事故に応用も/毎日jp/2013.01.11
水ははじくが、油をよく吸収する新しい高分子物質「マシュマロゲル」を京都大の中西和樹准教授(無機材料化学)の研究グループが開発した。油の流出事故での回収作業や化学物質の精製などへの応用が期待できるという。ドイツの科学誌「アンゲバンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション」(速報版)に11日、論文が掲載された。
マシュマロゲルは、ケイ素を骨格とする有機化合物(シリコーン)の一種で、スポンジのような弾力がある。シリコーンの特性を研究する過程で、偶然、開発できたという。表面の分子構造や微細な凹凸の影響で、油などの有機物は吸着するが、水を強くはじく性質=撥水(はっすい)性=がある。シリコーンに酢酸や尿素、界面活性剤を加えてかき混ぜた後、数時間温めるだけで合成できるという。
97年のロシアタンカー「ナホトカ号」重油流出事故で、海岸に流れ着いた重油の回収は、ひしゃくなどですくう人海戦術に頼らざるを得ず、岩場での作業は困難を極めた。マシュマロゲルは、市販の薬品を使って合成でき、成形も自在。中西准教授は「現場に材料を持ち込み、地形や用途に応じてその場で作製することも可能ではないか」と話している。
また、分析化学や生命科学などの研究分野では、水と油を厳密に分離する技術が不可欠。マシュマロゲルは、300度以上の高温や液体窒素中でも機能を保つことから、グループはさまざまな研究に応用できるとみている。【五十嵐和大】
世界の海洋には、おびただしい数のタンカーが航行しており、"重油/原油の流出" につながる事故の可能性は決して低くないと見られている。
"流出した重油/原油の回収" への応用が期待されているこの「マシュマロゲル」による"スピーディな回収" の実用化が急がれることを期待したい...... (2013.01.14)
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