このところ表面化している "円安・株上昇" が、そのまま "景気回復、不況脱出" の先触れであるという空気が広がっているようだ。そうあることを望みたいわけだが、事はそれほど簡単ではなさそうである。
庶民がイメージする "景気回復、不況脱出" とは、悪化し続ける所得水準が改善されることであるに違いない。"アベノミクス" が目指す "デフレ脱却" にしても、この点の改善無くして達成されるものではない。
果たしてその点での "円安" 効果はどうなのであろうか......。
こう書くと、いや物事には順番というものがあり、企業が "円安メリット" を享受した段階で庶民へと波及して行くはず、と解説されがちだ。
しかし、そうした "段階的波及" は自然に発生するものなのであろうか?
ところで、 "庶民の所得水準" と密接に関わるのは、言うまでもなく "失業問題/失業率" であろう。この悪化状態に改善が見えてこないかぎり、"円安・株上昇" という現象と "デフレ克服" とはつながらないのではなかろうか。
いや、むしろ "円安" の副作用面にある "光熱費(輸入資源!)高騰!" などによって、"庶民生活の圧迫=デフレ停滞" が引き起こされることの方が懸念される。
下記引用サイト記事/【 引用記事 1 】:12月失業率:8カ月ぶり悪化の4.2%/毎日jp/2013.02.01 によれば、少なくとも<2012年12月の完全失業率>は、<前月比0.1ポイント上昇の4.2%で、8カ月ぶりに悪化>とあり、その結果、<現時点で、円安が新規雇用を生む気配もいまだ感じられない>(【 引用記事 3 】)ということになる。
また、"失業問題/失業率" 中身に目を向けるならば、<昨年12月の製造業の就業者数が、1961年6月以来、51年ぶりに1000万人を下回った>(【 引用記事 3 】)とある。ここに、一筋縄では行かない "構造的問題" が浮かび上がっていそうである。
この "構造的問題" の理解への視点を提供しているのが、下記引用サイト記事/【 引用記事 3 】:雇用なき円安、問われるアベノミクスの成長戦略/日本経済新聞/2013.02.01 である。
<現時点で、円安が新規雇用を生む気配もいまだ感じられない/ 逆に、主要企業では外国人正社員の雇用増傾向が顕著/ 成長企業における「人員削減」も珍しくない/ 日本人の所得水準(は依然高水準のため)円安が進行しても、雇用・賃金が増えにくい構造> と、決して簡単には "円安 ⇒ 雇用問題改善" となりにくい点が指摘されている。
どうも、"円安" という為替変動に重きを置く "アベノミクス" という金融経済政策が、本来的な "景気回復、不況脱出" 政策となってゆくためには、"雇用増をもたらす他の政策" なども併せて実施してゆく必要がありそうである......。
【 引用記事 1 】
12月失業率:8カ月ぶり悪化の4.2%/毎日jp/2013.02.01
総務省が1日発表した2012年12月の完全失業率(季節調整値)は、前月比0.1ポイント上昇の4.2%で、8カ月ぶりに悪化した。厚生労働省が同日発表した12月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月から0.02ポイント上昇と5カ月ぶりに改善し、0.82倍だった。......
12月の全国の男女別失業率は、男性が0.2ポイント悪化の4.5%、女性が0.1ポイント悪化の3.9%。(共同)
( 12月失業率:8カ月ぶり悪化の4.2%/毎日jp/2013.02.01 )( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
【 引用記事 2 】
製造業:12月就業者が1000万人割る/毎日jp/2013.02.01
昨年12月の製造業の就業者数が前年同月比35万人減の998万人となり、1961年6月以来、51年ぶりに1000万人を下回ったことが1日、総務省の労働力調査で分かった。ピークだった92年10月の1603万人と比べ、約4割減少した。
国際競争の激化や円高で企業が人件費の安い海外への工場移転を進めたことや、サービス産業の成長が原因。人口減や大手電機の業績悪化に伴う人員削減も響いた。
働いている人の数を示す昨年12月の就業者数は、全産業の合計で6228万人。前年同月より38万人減った。(共同)
( 製造業:12月就業者が1000万人割る/毎日jp/2013.02.01 )
【 引用記事 3 】
雇用なき円安、問われるアベノミクスの成長戦略/日本経済新聞/2013.02.01
1月は円安の急進行が「これで円高不況脱出か」との高揚感を高めた。
そして2月入り。足元では円安が加速。1ドル=92円接近中だが、今月は電気料金値上げ実施も迫り、円安の家計圧迫要因が認識され始める時期となりそうだ。
さらに、企業の円安メリットをいかに雇用増に還元するか。企業経営戦略とアベノミクスの「成長戦略」が問われる月ともなろう。
本日1日には市場が注目する米国雇用統計が発表される。
外為市場では「良い数字=ドル高」を先取りするかたちで、既にドルが買われ円が売られている。
しかし、日本の失業率統計発表が相場変動要因として意識されることはほとんどない。
また、現時点で、円安が新規雇用を生む気配もいまだ感じられない。
逆に、主要企業では外国人正社員の雇用増傾向が顕著だ。イオンは外国人1500人を幹部候補として採用し、日本本社の人材多様化を進め、20年度には本社の外国人比率を5割に高める方針という。
海外に進出する日本企業にとっては当然の戦略だ。
円安によるコスト増も見込まれ、各社の決算発表でも、「今後も一層のコスト管理に努める」との決意が頻繁に聞かれる。
また、成長企業における「人員削減」も珍しくない。
企業単位では、労働生産性向上を通じて企業の経営効率改善が追求される。しかし、その結果、マクロ経済面では国内雇用が失われる、という「合成の誤謬(ごびゅう)」のリスクがある。
そもそも、日本人の所得水準は、アジアなど新興国に比し、依然高水準にある。長期的にみれば、この所得格差の平準化は不可避だ。今の日本は、その平準化プロセスにおかれているので、円安が進行しても、雇用・賃金が増えにくい構造にある。
けれども、貿易自由化が進み、世界経済のパイが大きくなれば、新興国の雇用・賃金水準が増加することで日本に近づくシナリオが期待できる。保護主義は雇用の奪い合い、賃金のダンピングを生む。
アベノミクスが円安政策を志向するのであれば、貿易自由化政策とセットで論じられるべきであろう。
更に、再就職のための訓練施設など、労働力の移動性を高めるための政策も欠かせない。
円安はどこまで続くか。購買力平価など理論だけでは割り切れない面も多い。これからは、「相場の神様のプレゼント」である円安の恩恵を利用して雇用を増やす国の政策、そして民間のイノベーションを刺激する「起業家精神」、それをファイナンスする金融ニッポンのインフラ構築がますます重要になる。
( 雇用なき円安、問われるアベノミクスの成長戦略/日本経済新聞/2013.02.01 )( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
米国も、景気回復のために、"失業問題/雇用問題" で四苦八苦しているわけだが、この課題の尋常ではない困難さを了解する時、"円安" という面だけが過大評価され、そこに過剰な期待が寄せられているかに見える日本の現況は、後に禍根を残すように思われてならない...... (2013.02.02)
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