激変の続く現代環境にあっては、"通念" に寄りすがった判断をしていると "手痛いしっぺ返し" を喰らうものらしい。手厳しく言えば、"通念" がいつの間にか "幻想" へと反転しつつ、もちろんこれに寄りすがれば "想定外の打撃" を被るということになりかねない......。
アベノミクスの "円安効果" は、現時点では、"総論" 的レベルで "期待一色" に染まったかのような受け止め方がなされているようだ。
しかし、こうした "通念" に沿った見方に対して、警鐘を鳴らしているのが、下記引用サイト記事:コラム:円安効果の業種間格差、自動車と電機では天地の差に/REUTERS/2013.01.31 である。
結論から言えば、<「円安は輸出企業全体に追い風」という見方は、経済の実態からかい離した幻想になりつつある> と警告している。
少なくとも、<円安進展が大幅な利益拡大につながる自動車業界と、数量効果に結びつかないリスクがある電機業界では、"天地の差"が出てくる> との予想がなされている。
その "電機業界" にあっては、このところ翻弄され続けている米アップル、アイフォーンのために、"円安" メリットを享受するための "販売額 = 国際競争力 = シェア" の、そのいずれもの低落が目立っている。
おまけに、ここに来ての<「アップル神話の陰り」という新しいマイナス要因/ 「アップルショック」>までが加わり、<経営への大きな打撃になりかねない>とも見られている状況だそうである。
とても、<「円安は輸出企業全体に追い風」という見方> といった "総論" で括れる実情ではない、と言うのである。いわば、"各論" 的な分析視点こそが必要な時期に来ているのだ、と。そして、少なくない経済アナリストが指摘している以下の点を強調する。
<円安で数量効果を効かせるには、商品の競争力を保つ必要がある。結局、日本経済の活力を復活させるには、回り道のようにみえるが、研究・開発に資金を投下し、技術のブレークスルーを背景に新商品を作り続ける能力を高めるしかない> と。
恐らくは、こうした読みこそが事実の全体を言い当てているのだと思われる......。
コラム:円安効果の業種間格差、自動車と電機では天地の差に/REUTERS/2013.01.31
[東京 31日 ロイター] 大胆な金融緩和が看板のアベノミクスの効果で円安/株高が進み、東京市場ではこの基調が中期的に継続するするのではないかとの期待感が膨らんでいるようだ。
だが、円安進展が大幅な利益拡大につながる自動車業界と、数量効果に結びつかないリスクがある電機業界では、"天地の差"が出てくると予想する。「円安は輸出企業全体に追い風」という見方は、経済の実態からかい離した幻想になりつつある。ドル/円が100円を超える円安になれば、エネルギーコストの上昇をトップラインの拡大で補えない日本企業が続出する可能性がある。
<アイフォーン人気、中国からの通信機輸入を押し上げ>
電機業界のヒット商品であるスマートフォンでは、アップルのiPhone(アイフォーン)が人気で、昨年12月の貿易統計によると、生産地の中国からの通信機輸入は、前年同月比プラス6.4%の1092億円と大幅に増加。アイフォーン効果の大きさをうかがわせている。この点はグローバルなスマホ市場における日本企業製品が、劣勢に立たされていることと同じ構図だ。
スマホに限らず、日本の電機メーカーは主力商品で国際競争力を失っているケースが目立ち、シェアの低落に歯止めがかかっていない。このため足元の円安で外貨建て販売価格を引き下げても、それに見合った販売数量の増加が期待できないケースが多くなると予想される。円安の最大のメリットは数量効果だが、それが望めない企業にとって、円安は原材料価格やエネルギーコストの上昇が重荷になるだけだ。
<円安の感応度、自動車より小さい電機各社>
実際、ドル/円が1円変動した際の営業利益への感応度は、大手自動車メーカーが150億円から350億円という想定になっているのに対し、大手電機メーカーは多くても数十億円と一けた小さい規模にとどまっている。足元の株式市場では、電機メーカーも自動車メーカーも押しなべて大幅な株価上昇となっているが、いずれ実態が市場に浸透してくれば、輸出企業全体の株価が円安で上昇するという流れは、大きな変化に直面すると予想する。
また、総合電機メーカーに比べ、相対的に国際競争力を維持してきたとみられている電子部品メーカーには、「アップル神話の陰り」という新しいマイナス要因がふりかかってきた。例えば、アップルの第4世代iPad(アイパッド)の販売が想定を下回り、シャープがアイパッド用パネルの生産をほぼ停止していることが判明しているほか、アイフォーン5でも販売伸び悩みと部品調達先への大幅減産要請があったと内外のメディアで報道されている。
アップル向けの比重を引き上げ、設備投資を実施した国内メーカーにとって、このアップル製品の販売下振れは「アップルショック」と受け止められた可能性がある。こうした日本企業では、円安が数量増加には結びつかないばかりか、設備稼働率の低下で経営への大きな打撃になりかねない。そこに円安による手取りの販売額減少や原材料・エネルギーコストの増大が加わってくる。
<円安だけでは高まらない企業の収益力>
アベノミクス効果が継続し、足元で90円台からさらに円安が進展していけば、2014年3月期決算における円安の効果は、最も強く受ける自動車とデメリットも懸念される電機で、鮮明なコントラストが形作られると予想する。
現在の日本経済にとって、利益が極大化できるドル/円の水準は95円という複数のシンクタンクなどによる試算もあるようだ。円安が進めば進むほど、日本経済にとってはプラスになるという見方は、幻想に過ぎない。円安で数量効果を効かせるには、商品の競争力を保つ必要がある。結局、日本経済の活力を復活させるには、回り道のようにみえるが、研究・開発に資金を投下し、技術のブレークスルーを背景に新商品を作り続ける能力を高めるしかない。どこかの段階で、東京市場の参加者の多くがそのことに気付くことになるだろう。
( コラム:円安効果の業種間格差、自動車と電機では天地の差に/REUTERS/2013.01.31 )
それにしても、現時点での "円安/株価上昇" という "たまさかの事実" を、アベノミクスは、どう "持続する回復力" へと繋げて行くのであろうか? その確たる道筋を解説できる者がいるのであろうか? 参院選までの "表紙(?)" でありさえすれば良いというのだとすれば、お先真っ暗ということに...... (2013.02.04)
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