"匂いと嗅覚" というテーマについては、どういうものか興味深く、この日誌で、これまでにもいろいろな角度から取り上げてきた。下記参照。
◆ 参照 (1) "においビジネス"/においと記憶の密接な関係/嗅覚だけはほぼダイレクトに脳へ( 当誌 2010.05.20 )
◆ 参照 (2) "情報社会" の基本構造に楯突く "嗅覚" 情報という "ダサイ(クサイ)" 課題( 当誌 2008.10.27 )
◆ 参照 (3) "実在感" を支えるのは "クオリア" であるのか( 当誌 2008.01.24 )
"匂いと嗅覚" というテーマへの主な関心は、 "嗅覚と記憶" との不思議な関係という点になろうかと思う。( c.f.上記 ◆ 参照 (2),(3))
が、今回は、下記引用サイト記事:年齢とともに失われていく嗅覚、阻止する方法も/THE WALL STREET JOURNAL/2013.02.15 に沿って、ビジネスでの "商機" につながる(?)という話題に目を向けてみたい。
"匂いと嗅覚" は、デジタル化やネット化という視点に馴染まないという点もあってか、ビジネスジャンルでは "先送り" され続けてきた観がある。
それでも、昨今では次第に関心を集め始めてはいる( c.f.上記 ◆ 参照 (2))ようだが、今回の記事の視点はやや特異かと思われる。
それというのも、<人間の嗅覚は年齢とともに衰える。多くの人は30代になるまでに、それとわかるほど嗅覚が落ちる> という "生理学的" 観点を論拠としながら、グローバルな "高齢化時代"( 消費者マジョリティの高齢化!)を視野に入れてのサジェスチョンだからである。
曰く、<視力や聴力が年齢とともに衰えるのとちょうど同じように、嗅覚も衰える/ 60歳になるまでに、約半数の人は嗅覚の衰えを感じ、80歳になるまでにはその数は4分の3に増える/ 米国では300万から400万人が嗅覚障害や完全な無嗅覚症、もしくは嗅覚の能力減退と診断されている....../ ベビーブーマー世代が高齢になると、この数字は飛躍的に上昇する嗅覚の能力が減退しつつある/ ベビーブーマー世代を対象にした、際立って香りの強い製品を販売することは企業にとって商機> だというわけだ。
"ベビーブーマー世代" をターゲットとしたビジネスはさまざまに試みられているが、"加齢とともに失われていく嗅覚"という問題をテコにしたところの "ビジネス嗅覚" の鋭敏さには恐れ入る......。
年齢とともに失われていく嗅覚、阻止する方法も/THE WALL STREET JOURNAL/2013.02.15
By ELLEN BYRON
匂いを嗅ぐとは何てすてきなことだろう。鼻は勤勉な器官だ。それにほとんどの人が気づいているより、はるかに大きな力を持っている。香りに敏感であれば、風味をより多く感じることができ、より安全で、幸福感さえより多く与えてくれる。
だが、警告しておく。人間の嗅覚は年齢とともに衰える。多くの人は30代になるまでに、それとわかるほど嗅覚が落ちる。食品の異臭やガス漏れにも気付かないほどにまで、徐々に衰えることもある。
一方で朗報もある。嗅覚を守り、さらにはより鋭くするために家庭でできることがあるのだ。シカゴにある嗅覚味覚療法研究財団のアラン・ハーシュ氏は......、「だが匂いのことに関しては、実際に神経のつながりを活発にし、おそらく以前はわからなかった匂いがわかるようになる場合もある」と話す。
嗅覚はそれを失うまで、完全にはそのありがたみがわからないものの1つだ。シカゴの元警察官でウィスコンシン州シャロン在住のパトリック・コリンズさん(62)は4年前にひどい風邪を患ったとき以来、香りのない生活に慣れようとしてきた。風邪が治った際、コリンズさんは嗅覚も一緒に消えたことに気づいた。......
コリンズさんはガス漏れ警報器を設置し、残り物を食べる前には妻に聞くようにしている。生後4カ月の孫娘と過ごす時間さえもその影響を受けている。「赤ん坊の匂いを嗅ぐことができないんだ」とコリンズさんは話す。
嗅覚を失うと、たいがい味覚の一部も失われることになる。嗅覚と味覚の両方があって味がわかるのだ。......鼻をつまんでチョコレートを口に入れても、チョコの味がしない......。
上気道の感染症、汚染、頭部外傷、それに糖尿病を含む病気はすべて嗅覚を悪化させる可能性を持っている。たばこの煙や化学的な煙霧といったもので一時的に起こる場合もある。
だが、もっと油断ならないのは時間だ。専門家によると、視力や聴力が年齢とともに衰えるのとちょうど同じように、嗅覚も衰えるという。60歳になるまでに、約半数の人は嗅覚の衰えを感じ、80歳になるまでにはその数は4分の3に増える......。
米国では300万から400万人が嗅覚障害や完全な無嗅覚症、もしくは嗅覚の能力減退と診断されている...... ベビーブーマー世代が高齢になると、この数字は飛躍的に上昇するのではないかとみられている。
嗅覚の能力が減退しつつあるベビーブーマー世代を対象にした、際立って香りの強い製品を販売することは企業にとって商機であろう。......
...... 今、とてつもなく大きな商機があるのに、彼らは取り逃がしている...... 民生用の製品を作っているもっと多くのメーカーが、高齢になりつつある消費者が製品の風味や香りを楽しめる方法を見つける必要がある......。
香りの違いを嗅ぎわけるために脳を鍛える方法としてハーシュ氏が勧めるのは「スニフ(匂いを嗅ぐ)セラピー」だ。
自分の好きな香りのタイプを3種類から4種類――例えばシャンプーやせっけんに使われる花の香り、ベリー類やバナナなどの溌剌としたフルーツの香り、さらに別の種類、例えばコーヒーの香りなど――を選ぶ。たまねぎやアンモニアといった刺激性の香りは避ける。これらは嗅覚の能力を阻害するためだ。それから選んだ香りを1日に4回から6回頻繁に嗅ぐ。そうすると、最終的にさまざまな鼻のレセプターが活性化されるのだ。
食べ物の香りを嗅ぐことはもはや生き残るために必要なスキルではないが、生物学的な目的をまだ果たしている。「危険を最初に警告するシステムだ」と指摘するのはモネル化学感覚センターの教職員パメラ・ダルトン氏だ。同氏はまた、「実際、香りにはより効果的に食物の消化と代謝を促す作用があるかもしれない」と話す。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
<「スニフ(匂いを嗅ぐ)セラピー」> という<香りの違いを嗅ぎわけるために脳を鍛える方法> は、<さまざまな鼻のレセプターが活性化される> というのだが、"記憶力" の活性化にもつながるのではなかろうか...... (2013.02.17)
コメントする