インターネットの普及は、個人が手軽に、いろいろな情報を、しかもある程度の詳細さをもって入手できることを叶えている。
こうなってくると、従来、情報を持ちそれを提供できるがゆえに尊重(尊敬)されていた者たちへの対応も変わってくるというものであろう。
TVの普及が、それまでは子どもたちの唯一の情報源であった親への依存を相対化して、「だって、TVが言ってたもん!」という光景を生み出したことと良く似ている。
医者を含めて、"先生" と呼ばれる人種への頼り方が、少なからず変わったはずであろうが、押し並べていわゆる "専門家" に対する "見方、頼り方" が大なり小なり変わって来たといえそうだ。
たとえば、昨今は、モノを購入する前にインターネット検索で商品情報、価格情報をチェックするのが当たり前となっているように、病院へ向かう前に、インターネット検索で "症状" に基づく "医療情報" に当たることは誰でも実行していることであろう。
すでにその時点で、"専門家" としての医者の立場は "非・絶対化" されていると言っていいのかもしれない。
つまり、"専門的情報" がネットなどによって一定程度 "ディスクローズ" されるようになった "ネット時代" にあっては、一般個人からの "専門家" たちへの "見方、頼り方" はかなり変化していそうだということなのである。
また、"専門家" に類する部類には、"専門組織/行政組織/国......" などをも含めて考えても、あながち間違いではなさそうである。"専門知識" と称して、情報を抱え込んできた点では共通するからである......。
こうなると、"ネット時代" にあって、個人は一体何を信頼するのか、という興味深い設問が成り立ちそうである。
もちろん、"ネット環境" に散らばる情報群は "玉石混交" である。いや、信頼できない情報、歪められた情報、悪意に満ちた情報すら多々ある。
したがって、"ネット時代" における情報の信頼性については、単純な図式で判断できない複雑さがあることは言うまでもない。
さて、下記引用サイト記事:震災後、専門家より自分を信じる人が18%増加 日本が欧米に"追いついた理由"は?/ザ・世論~日本人の気持ち~ DIAMONDO online/2013.03.12 は、こうした時代環境を踏まえてのことであろう興味深い調査を実施し、その結果を報じている。
結論的には、<「どちらの考え方が世の中をよりうまく生きていく方法だと思いますか?」という質問(「専門家に助言を求める」「できるだけ自分を信じる」の2つの選択)> に対して、
<日本では、「専門家に助言を求める」と答えた人が、2011年には34%と大きく減った。続く2012年は37%とやや戻ってはいるものの、震災以降、「できるだけ自分を信じる」と答えた人が多い状況> となった、というのである。そして、
<2010年から2011年にかけては18ポイント増と大きく増加していることから、震災による影響が大きいと考えられる>
とコメントしている。
当たらずとも遠からず、という印象ではあるが、<震災による影響が大きい> とする点にはやや唐突感が伴わないわけでもない。
ちょうどこの時期には、"スマホ" やそれを活用した "SNS ( ソーシャルネットワークシステム )" が大きく立ち上がってきた社会現象のあったこと、つまり、従来型のメディアが、"専門家" による一方通行的な情報を垂れ流してきたのに対して、"SNS" は "個人間連携" とでも言えそうな双方向的情報交流を深め始めていたわけだ。こうした状況が、<「できるだけ自分を信じる」> というスタイルを刺激したと考えることができるような気がするからである。
いずれにしても、個々人は、<「専門家に助言を求める」>生き方から、<「できるだけ自分を信じる」>生き方へと、次第に "軸足を移動" させ始めているのが現実のようである......。
震災後、専門家より自分を信じる人が18%増加 日本が欧米に"追いついた理由"は?/ザ・世論~日本人の気持ち~ DIAMONDO online/2013.03.12
東日本大震災の発生から昨日で2年が経過した。震災後、多くの人がそれまでと人生観や考え方が変わったと口をしているが、マーケティングリサーチを行う「カンター・ジャパン」(東京都渋谷区)が行った調査によれば、震災をきっかけとして日本では「専門家」よりも「自分」を信じる人が多くなったという。
調査は2012年3~5月に実施。対象は日本、アメリカ、カナダ、中国などの21ヵ国に暮らす16歳以上の男女、各国1000人前後(日本は987人/合計2万1000人)。調査方法は主にインターネット。国によっては対面で調査を行った。
■ 「専門家」より「自分」を信じる派 なぜ震災後に増えたのか
調査は、「どちらの考え方が世の中をよりうまく生きていく方法だと思いますか?」という質問し、「専門家に助言を求める」「できるだけ自分を信じる」の2つの選択肢から回答を選択させるというもの。
日本では、「専門家に助言を求める」と答えた人が2009年に59%、2010年に52%と多数派だったが、2011年には34%と大きく減った。続く2012年は37%とやや戻ってはいるものの、震災以降、「できるだけ自分を信じる」と答えた人が多い状況は変わっていない。
2009年から2010年にかけても「自分を信じる」派の増加傾向は見られるが、2010年から2011年にかけては18ポイント増と大きく増加していることから、震災による影響が大きいと考えられる。
震災後は様々な情報が錯綜し、中にはデマが飛び交うこともあった。また、適切な情報が政府からなかなか出されなかったことからも、「国には頼れない」という危機感を持った人もいるだろう。特に原発問題は意見を大きく二分し、これまでのように「専門家に聞けばある程度的確な答えが見つかる」という状況ではなくなった。自分に必要な情報を自分で見つけ、自分で判断することが必要な世の中だという認識を多くの人が持った結果が、「できるだけ自分を信じる」派が増えた理由と考えられる。
■ 欧米先進諸国では以前から多い 「できるだけ自分を信じる」派
「自分を信じる」派は、調査を行った21ヵ国の平均では56%。日本はこれを上回る数字となったが、欧米先進国とオーストラリアを合わせた計10ヵ国の平均は64.3%。日本は7番目だった。「自分を信じる」派が多かったのは、上から順にイタリア(72%)、フランス(同)、アメリカ(69%)など。欧米先進国では以前から「自分を信じる」派が多い結果があり、「カンター・ジャパン」では、「(日本で、『自分を信じる』派は)おそらく震災を経験していなくても増える傾向にあったと思われる」と分析する。震災がこの意識の変化をさらに加速させたようだ。
情報が溢れ、簡単に情報を手に入れられる社会だからこそ見極めるスキルを持ちたいもの。「自分を信じる」派の増加は、その覚悟の表われだと考えるのは楽観し過ぎだろうか。
(プレスラボ 小川たまか)
上記の調査は "マーケティングリサーチ" の一環で実施されたようだ。
そこで想起されるのは、昨今の市場での販売促進のための "商品の紹介/お薦め" に当たっては、"専門家" によるものよりも、"知人・友人など(自分と同類の人たち)" によるものが奏功するとして重視されているという事実である。
上記調査結果も、この流れの事実として見なせば分かりやすい...... (2013.03.18)
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