昨今の難病の治療にあたっては、"遺伝子治療" 【注.1】 という画期的な治療法が試みられているという。
【注.1】 <体外から遺伝子を組み込んだウイルスあるいは細菌を患者の体内に導入し、病気に関わる遺伝子の働きを抑えたり補ったりして病気を治す方法。1990年、アデノシン・デアミナーゼ欠損症による重い免疫不全患者に対して、米国で最初の遺伝子治療が行われた。95年に北海道大学で行われた日本初の治療も、同じ病気の患者に対してだった。治療の対象は先天性免疫不全、がんが主だが、次第に対象範囲が広がってきており、肝硬変、血管系の疾患、心臓病などにも試みられようとしている。( 今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 ) >( 遺伝子治療/知恵蔵2013の解説/kotobank )
この治療法に関する関連記事は、当誌でも下記のように取り上げている。
<ネプリライシンを作る治療遺伝子(ネプリライシン遺伝子)を脳内に届ける"運び屋"となるウイルスを開発。末梢(まっしょう)血管に投与しても脳の神経細胞だけに作用する無害なウイルスで、長期間にわたって効果が保たれるという。これにネプリライシン遺伝子を組み込んだ。マウスに注射した結果、アミロイドβペプチドが減少し、学習・記憶能力も通常のマウスのレベルにまで回復した......>( 記憶障害を伴う認知症"アルツハイマー病"を注射で治療!原因物質"分解"促進に新手法!( 当誌 2013.03.21 ) )
また、以下のような新しい分野での記事も目につく。
目の難病に初の遺伝子治療 来春にも九州大病院/【共同通信】/2012.08.29
九州大病院(福岡市)は29日、光を感じる網膜の視細胞が徐々に失われ、失明する恐れのある難病、網膜色素変性(色変)の患者に、日本初となる遺伝子治療の臨床研究を来春にも開始すると発表した。
治療を計画した石橋達朗教授によると、色変は約5千人に1人の割合で起こる遺伝性の病気。約50種の遺伝子異常が原因だが、これまで有効な治療法はなかった。
石橋教授らは、視細胞を保護するタンパク質の遺伝子を組み込んだウイルスベクター(遺伝子の運び役)を患者の網膜に注射することで、視細胞の喪失を防ぎ、視力の低下を遅らせる考え。
なお、この治療法のひとつの課題は、"遺伝子" の "運び役" となる "ウイルス"( <"運び屋"となるウイルス>、"ウイルスベクター[遺伝子の運び役]" )だとされている。
下記引用サイト記事:人工ウイルスの殻、中にDNA 安全な遺伝子治療へ/【共同通信】/2013.03.25 は、この課題への挑戦となる研究についての記事だ。
これまで、<"運び屋"となるウイルス>としては、<天然ウイルス>が利用されていたところを、<人工ウイルスの殻>を開発したのだという。
<ウイルスの微小な殻を人工的に合成し、その中に、生物の遺伝情報を担っているDNAを入れる/ 一般的な遺伝子治療で投与する、治療用DNAを組み込んだ天然ウイルスよりも安全、効率的にDNAを運ぶことが期待できる> ということのようである......。
人工ウイルスの殻、中にDNA 安全な遺伝子治療へ/【共同通信】/2013.03.25
ウイルスの微小な殻を人工的に合成し、その中に、生物の遺伝情報を担っているDNAを入れることに鳥取大と九州大のチームが25日までに成功した。チームは世界で初めてとしている。
一般的な遺伝子治療で投与する、治療用DNAを組み込んだ天然ウイルスよりも安全、効率的にDNAを運ぶことが期待できるという。4月からは、がん治療のための人工ウイルス殻の開発を始める。
チームの鳥取大大学院工学研究科の松浦和則教授によると、殻は球状で、主要部分はペプチドという物質でできている。
松浦教授らは、水中で自然に集まって殻を作るペプチドの化学合成に成功。
<4月からは、がん治療のための人工ウイルス殻の開発を始める>とあり、 "がん" に対する "遺伝子治療" の前進が大いに期待されるところだ...... (2013.03.28)
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