"デフレ脱却" を果たし、実体経済の活発化へ向かうには、"物価上昇"(=購買力向上) が現れることが前提となる、とはよく知られた道理であろう。実体経済の活発化によって "賃金の上昇" がもたらされるならば、自ずからそうした前提が形成され、実体経済全体の活発化は好循環に踏み込むのであろう。
確かに、"金融緩和" によってこの間の異様な現象とも言える "株高" は目について余りある。そして、一部高額商品の好調さも生まれているようだ。
したがって、これらが "水面の波紋のように拡大" して行くならば、上々だということになる。
しかし、単なる "時間的なズレ" というには "説得力に欠ける事象" がいろいろなかたちで表面化しているようだ。
以下の点もその一例であろう。
<米市場には潤沢にマネーが供給されているが、それが実体経済の拡大を加速させる方向に行かず、資産取引にシフトする傾向が顕著だ。つまり、せっかくの量的緩和政策が実体経済の活発化にはあまり貢献せず、したがって物価上昇率が低下しつつ、株価は最高値を更新するという現象を生んでいる/ "実体経済拡大" 循環を刺激する "物価上昇" が生じにくくなっている ...... >( "株価上昇"と"実体経済拡大"のギャップが問題視!物価上昇せず?!消費増税延期論まで!( 当誌 2013.05.04 ) )
以前にも書いたが、今回、目を向けたいのは、自分も含まれた一般消費者の "節約志向" の現状である。
◆ 参照 スーパー/コンビニの売上相変らず減少傾向!根強い"節約志向"が"株価上昇"に応えず!(当誌 2013.03.23)
とかく、"期待感" が生み出す文脈に乗って、またその流れを助長する意図に身を任せる "メディア" は、"株価上昇" とその効果については吹聴しても、その効果にあずかれない大多数の庶民の実態を "スルー" しているのかもしれない。
中でも、長い "景気低迷/デフレ" 下で、"生活習性" というかたちにまで結晶化した "節約志向" には、より注意深く目を向ける必要がありそうだ。
この "節約志向" の視点を度外視して、現在の "消費の実態" について議論するならば、"期待感" の足元もすくわれるような気がする......。
下記引用サイト記事は、この "節約志向" の現状の一端を、<米外食チェーン>と、日本の<吉野家の牛丼値下げ>の動きに焦点を合わせて探っている。
【 引用記事 1 】:米外食チェーン、節約志向の顧客獲得に向けた競争が激化/REUTERS/2013.05.09
<マクドナルドやウェンディーズなどの米レストランチェーンは、節約志向の顧客を獲得するため、クーポンや期間限定商品などを利用した販売促進策でしのぎを削っている/ 節約志向の顧客獲得に向けた競争は米国だけではない>
【 引用記事 2 】:吉野家、4月の既存店売上高11%増 値下げ効果で/日本経済新聞/2013.05.07
<吉野家ホールディングス(HD)が7日発表した4月の「吉野家」の既存店売上高は前年同月比11.1%増加した。前年を上回るのは7カ月ぶり。4月18日に牛丼並盛りの価格を380円から280円に値下げした効果で、客数が13.6%増と16カ月ぶりにプラスに転じたことが寄与>
日米を問わず、この "節約志向" は現存しているようであり、"北風と太陽" ではないが、"株高という太陽もどき" がしばし顔を出しても、"将来不安(貧弱な福祉)" という "北風" 予想が消えない限り事態は変わらないようだ......。
【 引用記事 1 】
米外食チェーン、節約志向の顧客獲得に向けた競争が激化/REUTERS/2013.05.09
[8日 ロイター] マクドナルドやウェンディーズなどの米レストランチェーンは、節約志向の顧客を獲得するため、クーポンや期間限定商品などを利用した販売促進策でしのぎを削っている。
マクドナルドが8日発表した4月の米既存店売上高は0.7%増と予想外の伸びを示した。導入価格を値下げした「マックラップ」の発売や朝食メニューの持続的な人気に支援された。
ただ、同社は売上高の大幅な押し上げに苦戦しており、新たなメニューや期間限定商品をさらに打ち出す方針で、市場シェアを獲得するため、ある程度の利益を犠牲にすることに前向きな姿勢を示している。
ウェンディーズの第1・四半期の北米既存店売上高も増加したが、アナリスト予想を下回り、同社株は5%超急落した。
同社の幹部は低価格商品での競争が不振だったと指摘している。
ブロリック最高経営責任者(CEO)は、アナリスト向けの電話会議で「ラージサイズのハンバーガーやチキンサンドイッチ、サラダの売り上げは伸びているが、バリューメニューの顧客向け市場シェアを失いつつある」と語った。
ヤム・ブランズの「タコベル」は1ドルのメニューを全国展開する可能性があるほか、午後2─5時まで商品を1ドルにする広告を打ち出している。
節約志向の顧客獲得に向けた競争は米国だけではない。カナダを拠点とするティム・ホートンズは常に決算が好調だったが、8日発表した第1・四半期の米既存店売上高は0.5%減少、カナダの売上高は0.3%減少した。 ......
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
【 引用記事 2 】
吉野家、4月の既存店売上高11%増 値下げ効果で/日本経済新聞/2013.05.07
吉野家ホールディングス(HD)が7日発表した4月の「吉野家」の既存店売上高は前年同月比11.1%増加した。前年を上回るのは7カ月ぶり。4月18日に牛丼並盛りの価格を380円から280円に値下げした効果で、客数が13.6%増と16カ月ぶりにプラスに転じたことが寄与した。
4月の客単価は前年同月比2.2%減だった。吉野家は値下げで集客力を高めて、客単価の下落を補う考え。いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主席研究員は「値下げした日数が少ないことを考慮すれば、売上高と客数が1割以上増えたことは評価できる」と話す。
......( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
"人の嗜好" に関するとある心理学の研究であったか、たとえ "やむを得ず食した即席ラーメン" であっても、その継続期間が長くなると、それが "好き!" になってしまう......、と。
強いられ続けて形成された "節約志向" についても、 "根強い習性"(防衛策) へと転じていることに、もっと意を傾ける必要がありそうではないか...... (2013.05.10)
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