現時点ほど、"事実をもって現実を評価する" ことの重要さはない、と改めて痛感している。
メディアが、すべての人々の認識をまるで代表しているかのような顔をしつつ、一方的に時の話題を報じがちだからである。また、そうしたメディアの報じることを、"何の疑問も抱かずに" 受け容れてしまう受け手側のダラシナサもある......。そして、両者が相俟って、現実とは乖離した "仮想現実" をでっち上げてしまう、そんなリスクが気になるわけだ。
"軽口" をたたく政治家を、妙に持ち上げて吹聴してみたり、かと思えば "賞味期限切れ" とばかりに、「水に落ちた犬は打て」の扱いに転じたり......。と、とかくメディアの仕打ちとはそんなものであり、現実の実体を正確に照らしているわけではない。
とりわけ、"円安/株高" がそのまま "景気回復" に違いないとするその "早とちり" はいただけない。もっとも、昨今では "経済学者、アナリスト" までが、目先のビジネス(講演など)のために、"アベノミクス信奉者へと宗旨替え" をして、期待感だけで膨張した "仮想現実" に花を添えているというから呆れる。
それはともかくとして、"円安/株高" 事象とは乖離したかたちで、"実体経済" を指し示す指標は "停滞気味" だ。
"設備投資" に関しても、<甘利明経済財政・再生相は記者会見で、景気は「V字回復している」と胸を張った。だが、景気回復の持続に不可欠な企業の設備投資意欲はなお弱い。長期金利の上昇や欧州、中国経済の動向も景気を下振れさせるリスクになりうる。日本経済はなお本格的な回復に向けた途上にある。......>( 景気本格回復なお途上、設備投資の動き鈍く/日本経済新聞/2013.05.21 )というのが現状だ。
そして、"消費(購買意欲)" 動向についても、"株高" に刺激されているとされる高額品の売れ行きとは裏腹に、以下の記事による "各指標" からは、その "低迷状態" が相変わらず継続している点が否定できない。
◆ 参照 やはり、"足元の景況感"に目を向けておきたい!"4月の街角景気、6カ月ぶり低下"!( 当誌 2013.05.11 )
◆ 参照 4月のコンビニ売上高2.6%減 11カ月連続前年割れ/日本経済新聞/2013.05.20
◆ 参照 4月スーパー売上高、1.9%減 2カ月ぶり前年割れ/日本経済新聞/2013.05.21
"消費の伸び悩み" という事実は、むしろ "円安" のデメリットとしての "(輸入原料値上がり→)商品値上げ" というリアリティを反映しつつ、もとより "不確かな景気回復ムード" を "仮想現実" だとしてクールに見据えているからなのではなかろうか。
周囲を見回してみても、庶民は "円安/株高" の恩恵を、何一つとして授かってはいない上に、来年に予定されている "消費税増税" もある。生活防衛としての "節約志向" と縁を切るわけには行かないことにこそリアリティがあると言える......。
下記引用サイト記事:4月のスーパー売り上げ減少/NHK NEWS WEB/2013.05.21 では、最も日常生活に直結した消費の場である "スーパー" の "売り上げ減少" が報じられている。
<日本チェーンストア協会のまとめによりますと、全国のスーパーの先月の売り上げは、1兆259億円余りと、前の年の同じ月を1.9%下回り、2か月ぶりにマイナス/ 品目別では、売り上げの6割を占める「食料品」が0.4%減ったほか、「住宅関連の商品」が2.1%の減少、「衣料品」が8.8%の減少/ 日々の生活に欠かせない食料品などで、消費者がより安い価格の商品を求める節約志向が続いているとみられる>
こうした状況を、"アベノミクス信奉者" は "波及のタイムラグ" として "期待感" のロジックへとつなげるわけだが、果たしてそうなのだろうか......。時間経過だけで、"消費(購買意欲)" 動向は改善されて行くのであろうか......
4月のスーパー売り上げ減少/NHK NEWS WEB/2013.05.21
先月の全国のスーパーの売り上げは、消費者がより安い価格の商品を求める節約志向が続いているとみられることなどから、2か月ぶりに前の年の同じ月を下回りました。
日本チェーンストア協会のまとめによりますと、全国のスーパーの先月の売り上げは、1兆259億円余りと、前の年の同じ月を1.9%下回り、2か月ぶりにマイナスとなりました。
品目別では、売り上げの6割を占める「食料品」が0.4%減ったほか、「住宅関連の商品」が2.1%の減少、「衣料品」が8.8%の減少となりました。
これは、日々の生活に欠かせない食料品などで、消費者がより安い価格の商品を求める節約志向が続いているとみられることや、先月上旬の大雨や強風の影響などで、春夏物の衣料品の販売が振るわなかったためです。
日本チェーンストア協会では、「株価の上昇などで、消費者の心理は好転しているとみられるが、販売の現場ではまだ実感できていない。今後、企業業績の回復や賃金の上昇などが広がって消費者の購買意欲が上向くことを期待したい」と話しています。
ふと思うことは、現行の経済現象は、かつてのそれとは異なり、"上流から下流へと順当に波及/連鎖して行く" そうしたリンケージを失っているのではないか、という点である。
"企業収益の向上" と "設備投資"、"企業収益の向上" と "賃金上昇" などは、現時点では、いろいろな事情が絡むわけだが、決してスムーズにリンクするものではなくなっているということ。
そして "景気回復" があったとしても、決して "全国民的" 現象には至らず、"格差のある現れ方" でしかない。
時代環境は、"景気回復" という言葉自体が "元来、共有されにくい" 環境となっていそうである...... (2013.05.22)
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