"仏の顔も三度" ということわざがあるが、"大幅反落" も三度重なると、もはや、"調整" だの "不安定" だのといった通り一遍の紋切型口調で表現できる事態ではないようにも思える。
と言うのも、現時点での株式市況は、"実体経済" に棹差した「業績相場」(ファンダメンタルズ) である以上に、"FRB" を筆頭とした各国の "中央銀行" による "金融(量的)緩和策" 実施で流れ出たマネーによって、株取引がバブルっぽく振り回され過ぎているからだ。それを称して「金融相場」と表現してみるのは実に適切であると思える。
◆ 参照 "波浪注意報"点灯中のアベノミクス相場の行方?! 期待先行型の市場が睨む"成長戦略"!( 当誌 2013.06.03 )
今回の "大幅反落(前週末比512円72銭安)" も、下記引用サイト記事【 引用記事 1 】:東証全面安、下げ幅は今年3番目 米株安や円高を嫌気/【共同通信】/2013.06.03-16:48 によれば、
<FRBが早期の金融緩和縮小に踏み切るとの思惑から、前週末のニューヨーク株式下落の流れを引き継ぎ、東京市場も幅広い銘柄が売られた> とあり、"大幅反落" の "震源" は "FRBが早期の金融緩和縮小に踏み切るとの思惑" 以外ではなさそうである。
つまり、あーだこーだではなくて、"FRB 金融緩和策" 発の「金融相場」特有のイベント以外ではないと見なされ得る。
が、振り返ってみれば、もともと "日本株" の "急騰(瞬間沸騰!?)" 現象自体が、"FRB 金融緩和策" を下敷きとし、これと連動した "アベノミクス(クロダノミクス)" という "超・金融緩和策" そのものによる産物! ではなかったか。"緩和マネーの流入" の産物だったわけである。
したがって、産み出された時と同じ "緩和策マネーの動き"、今度は "緩和マネーの流出" ということになるが、それが引き起こされたからといって何の不思議もないことになる。
そのきっかけが、"FRBが早期の金融緩和縮小に踏み切るとの思惑" だったのであり、実に "現金な話" だということだ。
だから、改めて認識すべきは、"昨今の株式市況が不安定" なのではなくて、"アベノミクス(クロダノミクス)" という "超・金融緩和策" を誘い水としてしまったそれ以降の日本の "株式市況" 全体! が "不安定" となったと言うべきなのではなかろうか......。
この "金融緩和策" 発の "不安定" さに関しては、ご本家 "FRB" のお膝元でも議論がなされ、懸念されてもいるようである。
<米連邦準備理事会(FRB)のアドバイザリー・パネルが、FRBが実施している量的緩和第3弾(QE3)がもらたす危険性について警告していたことが31日、明らかになった。...... 同パネルは「現在の政策により、システミックな金融リスク、および銀行に対する潜在的な構造上の問題が作り出された」と指摘した。...... 今回の会合でもFRBの政策は緩慢な回復を支援するとの認識が示されたものの、「同政策が健全な経済成長と雇用の伸びに対しどれほど効果的であるかは明らかではない。財政・金融政策の先行きが不透明になっていることで、成長を押し上げるはずの企業投資が抑制されている」とし、前回会合のような明確な支持は示されなかった。> ( 米FRBパネル、QE3がもたらすシステミックな金融リスクなど警告/REUTERS/2013.06.01-08:31 JST )
ところで、「金融相場」がいかに「業績相場」と "乖離" しているかを知らしめるような興味深い、ちょっとした驚きの記事がある。下記引用サイト記事【 引用記事 2 】:今週の米株、5月雇用統計が強ければ相場下押しも/REUTERS/2013.06.03-10:32 JST がそれである。
<7日発表の雇用統計が良好な内容となれば、株式市場にとっては悪いニュースかもしれない。力強い雇用統計は、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和の早期解除を促し、株式市場が下落する可能性があるからだ/ FRBによる緩和策縮小開始を市場が非常に懸念しているとし、5月の雇用統計が予想を上回れば、緩和的な政策を前提に投資した人々が恐らく手を引くとしている>
要するに、この特殊な「金融相場」市況にあっては、本来が好材料であるはずの "良好な雇用統計=ファンダメンタルズ好転" でさえ、"しっぺ返し" を喰らってしまう可能性があるというのである。ここまで両者間に "乖離" が生まれてしまう事態を、上記記事の<システミックな金融リスク> という言葉が示唆しているのかもしれない......。
【 引用記事 1 】
東証全面安、下げ幅は今年3番目 米株安や円高を嫌気/【共同通信】/2013.06.03-16:48
週明け3日の東京株式市場は、前週末の米株安や為替相場の円高傾向を嫌気して全面安の展開となり、日経平均株価(225種)は大幅反落した。終値は前週末比512円72銭安の1万3261円82銭で、下げ幅は今年3番目の大きさを記録。終値は1万3300円を割り込み、4月18日以来、約1カ月ぶりの安値水準だった。
全銘柄の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)は38・83ポイント安の1096・95。出来高は約40億9千万株。
FRBが早期の金融緩和縮小に踏み切るとの思惑から、前週末のニューヨーク株式下落の流れを引き継ぎ、東京市場も幅広い銘柄が売られた。
【 引用記事 2 】
今週の米株、5月雇用統計が強ければ相場下押しも/REUTERS/2013.06.03-10:32 JST
[ニューヨーク 2日 ロイター] - 7日発表の雇用統計が良好な内容となれば、株式市場にとっては悪いニュースかもしれない。力強い雇用統計は、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和の早期解除を促し、株式市場が下落する可能性があるからだ。
株式市場は31日、FRBが大半の予想よりも早く債券購入プログラムを縮小するとの懸念から2週連続で下落した。
プルデンシャル・フィナンシャルの市場ストラテジスト、クインシー・クロスビー氏はFRBによる緩和策縮小開始を市場が非常に懸念しているとし、5月の雇用統計が予想を上回れば、緩和的な政策を前提に投資した人々が恐らく手を引くとしている。......
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
現在、世界の多くの国々が "金融(量的)緩和策" を経済政策として採用しつつあり、また、"期待/希望的観測" を含めて称賛する向きも少なくない。
活路はここにしかない、というのが実情なのかもしれないが、そうだとしたら尚のこと、<「現在の政策により、システミックな金融リスク、および銀行に対する潜在的な構造上の問題が作り出された」> という内実が凝視されて、"健全な経済成長" に配慮されて良いかと思われる。それが、同時に継続する "株式市況の安定化" にもつながるに違いないからだ...... (2013.06.04)
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