"心筋梗塞" などによって、心臓がダメージを受けると、大量の心筋細胞が破壊されることとなり、それらは元に戻ることがない。
<心筋梗塞、拡張型心筋症などが重症化すると数億個もの心筋細胞が失われてしまいますが、ヒトを含む哺乳類は失われた心筋細胞を元に戻す自己再生能力を持っていません>( 末尾 参考記事 [プレスリリース] ES細胞・iPS細胞から心筋細胞の大量精製に成功 Cell Stem Cell 誌に掲載 ―心臓の再生医療の実現化に向けて道―/慶応義塾/2012.11.16 )
そこで、<胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)> の技術を活用して <体外で作製した治療細胞を体内に移入することによる「再生医療」> に期待が託されているという。
ところが、こうした "iPS細胞" 活用のアプローチとは異なった、"遺伝子" を活用する新しいアプローチの成功が注目されている。
下記引用サイト記事:iPS使わず心筋細胞 作製に慶大成功、遺伝子治療に光/朝日新聞/2013.07.16 - 09:58 がそれである。
<心臓の心筋以外の細胞に五つの遺伝子を入れて、拍動する心筋細胞に変えることに、慶応大の家田真樹特任講師らが人で成功した。作製効率や安全性を高めて、心筋梗塞(こうそく)などでダメージを受けた心筋を補う治療法の開発につなげたいという/ 急性の心筋梗塞を起こしたマウスの心臓の中で、心筋以外の細胞を心筋細胞に変えることに成功/ 将来的に人でも、心筋梗塞などの患者の心臓に遺伝子をカテーテルで送りこみ、治療に使える可能性がある> とのことだ。
大きなメリットとして、<iPS(人工多能性幹)細胞を使わずに直接、心筋細胞ができれば、細胞移植の必要がなく、がん化のリスクも低い> とされているため、今後の展開が大いに期待されている......。
iPS使わず心筋細胞 作製に慶大成功、遺伝子治療に光/朝日新聞/2013.07.16 - 09:58
【瀬川茂子】心臓の心筋以外の細胞に五つの遺伝子を入れて、拍動する心筋細胞に変えることに、慶応大の家田真樹特任講師らが人で成功した。作製効率や安全性を高めて、心筋梗塞(こうそく)などでダメージを受けた心筋を補う治療法の開発につなげたいという。
今週の米科学アカデミー紀要に発表する。
心臓は3割が心筋細胞で、残りは心筋以外の細胞だ。手術を受けた患者36人から心臓の心筋以外の細胞の提供を受けて、人の心筋で働いている五つの遺伝子を入れると、試験管内で心筋細胞に変えることができた。ほかの心筋細胞とともに培養すると拍動することも確認した。
チームは同じ方法で、急性の心筋梗塞を起こしたマウスの心臓の中で、心筋以外の細胞を心筋細胞に変えることに成功している。将来的に人でも、心筋梗塞などの患者の心臓に遺伝子をカテーテルで送りこみ、治療に使える可能性がある。
iPS(人工多能性幹)細胞を使わずに直接、心筋細胞ができれば、細胞移植の必要がなく、がん化のリスクも低い。家田さんは「遺伝子を安全に送り込む方法を工夫していきたい」と話す。
◆ 参考記事 <心筋梗塞、拡張型心筋症などが重症化すると数億個もの心筋細胞が失われてしまいますが、ヒトを含む哺乳類は失われた心筋細胞を元に戻す自己再生能力を持っていません。胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、神経細胞や心筋細胞など、理論的に体を構成するすべての細胞種へと分化できる多能性を持つことから、体外で作製した治療細胞を体内に移入することによる「再生医療」への応用が期待されています。......>( [プレスリリース] ES細胞・iPS細胞から心筋細胞の大量精製に成功 Cell Stem Cell 誌に掲載 ―心臓の再生医療の実現化に向けて道―/慶応義塾/2012.11.16 )
それにしても、<心臓の心筋以外の細胞> に <人の心筋で働いている五つの遺伝子を入れると、試験管内で心筋細胞に変えることができた> という事実は、実に "ミステリアス" であり、"遺伝子" が持つ役割の底知れない奥行きを知らしめる...... (2013.07.17)
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