内閣府が12日発表した4~6月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報値(年率換算で2・6%増)が、消費税増税へのプラスの判断材料になり得るとか、いやいや市場予想を下回っているのは懸念材料(今日の日経平均下落:-95.76)であるとか、景気に関する報道は、庶民にとっての主たる関心事からはかけ離れて展開しているかのようだ。
GDPが景気動向と無縁だとまでは言うつもりはないが、庶民が目下気掛かりな点は、むしろ "物価上昇動向( c.f.GDPデフレーター )" であり、さらには、それらに見合うのかどうかという点での "賃金水準改善動向" のはずであろう。
次のとおり、<デフレーターの改善>と表現される "物価上昇!" は明らかに進んでいる。
<GDPデフレーターは、前年比では依然マイナスが続いているものの、下落幅は前期から縮小し、マイナス0.3%。円安に伴う輸入物価の上昇は......国内販売価格に転嫁させる動きが徐々に出てきており、デフレーターの改善につながったものとみられる。前期比ではプラス0.1%とプラス転換した>( GDP4─6月期は年率2.6%にやや減速、デフレーターはプラス転換/REUTERS/20130812 - 09:34 )
ちなみに、物価の上昇率を表すのが、"GDPデフレーター" であり、GDPデフレーターの変化率がプラスであればインフレ、マイナスであればデフレであることを表すわけだ。
アベノミクスが "デフレ脱却(インフレ・ターゲット)" を政策として掲げて傾注しているわけだから、"GDPデフレーター" のプラス化、すなわち "物価上昇" が加速することは否定できない。
しかし、下記引用サイト記事:特集ワイド:続報真相 悪い物価上昇の足音が聞こえる.../毎日新聞 東京夕刊/2013.08.09 のとおり、
<同時に所得も上がらなければ庶民にとっては迷惑なだけ> なのであり、その上、<モノが売れなくなりデフレに舞い戻る「悪い物価上昇」に陥りかねない> というのが真相のようである。
したがって、現状での "賃金水準の動向" に注意深く目配りしなければならないはずなのである。
確かに、<数字を見ると賃金は底打ち感を示している> とされるが、事態は決して予断を許す状態ではなさそうである。
<ただし、ポイントはこの先です。多くの企業が基本給を含む所定内給与を上げるのか、さらに派遣社員やパートタイマーにまで波及するのか。基本給に触れると退職金などに跳ね返り、企業負担が重くなる。経営者はそこまでの自信は取り戻せていません/ 所定内給与アップは当面、先送りされるだろう......理由として北井さんは、長い賃下げ時代の影響の大きさを挙げる/ 事実、米国やドイツの賃金は右肩上がりであるのに対して、日本は90年代後半から下落傾向が続いている>
こうした現状にこそ、メディアも目を向けるべきではなかろうか。景気回復が叶えば、自ずから "賃金上昇" の気運がついてくるはず......、と楽観することができない実情は、まさに "グラフ" が雄弁に物語っている......。
特集ワイド:続報真相 悪い物価上昇の足音が聞こえる.../毎日新聞 東京夕刊/2013.08.09
物価がじわじわ上がっている。「2年間で2%」の上昇目標を掲げデフレ脱却を狙う安倍晋三政権・日本銀行の思惑通りだが、同時に所得も上がらなければ庶民にとっては迷惑なだけ。モノが売れなくなりデフレに舞い戻る「悪い物価上昇」に陥りかねない。いまが正念場というのだが−−。
◇アベノミクスでも所得増は望み薄?
東京都内の飲食店で働くアルバイトの男性(40)の時給は900円。今のところ上がる見込みはない。結婚している同僚たちは一つのアルバイトでは生活できす、睡眠時間を削って二つ三つ掛け持ちしている。「アベノミクスの恩恵なんて......僕らには全くありません」。老後の蓄えは、大病をしたら、と将来への不安が頭をよぎる毎日だ。
彼らの悲鳴とは裏腹に、数字を見ると賃金は底打ち感を示している。
厚生労働省の6月の毎月勤労統計調査によると、現金給付総額は前年同月比0・1%とわずかながらプラスに転じた(5月はマイナス0・1%)。ボーナスが伸びたためで、安倍政権の経済政策であるアベノミクス効果が出ていると言えなくもない。「輸出産業を中心に業績が改善しているのは確か。それらの企業はある程度、ボーナスで社員に還元しようという姿勢に転じており、賃金が下がり続ける状態は脱した」。日本総合研究所調査部長の山田久さんはそうみる。「ただし、ポイントはこの先です。多くの企業が基本給を含む所定内給与を上げるのか、さらに派遣社員やパートタイマーにまで波及するのか。基本給に触れると退職金などに跳ね返り、企業負担が重くなる。経営者はそこまでの自信は取り戻せていません」
「所定内給与アップは当面、先送りされるだろう」と語るのは日鉄住金総研チーフエコノミストの北井義久さんだ。理由として北井さんは、長い賃下げ時代の影響の大きさを挙げる。
「1990年代、日本企業の国際競争力を維持するため、自民党は人件費を含めたコストを下げやすい政策を打った。派遣労働を製造現場にも広げるなど規制緩和したのが一例です。その間、ITバブルの崩壊、リーマン・ショック、そして東日本大震災が相次ぎ、もうかるようになってからも経営者の頭の中からは所定内給与を上げるという考えが消えてしまった」
事実、米国やドイツの賃金は右肩上がりであるのに対して、日本は90年代後半から下落傾向が続いている=グラフ。6月の勤労統計調査で所定内給与はマイナス0・2%と13カ月連続の減少。パートタイマーへの現金給付総額も依然マイナスだ。
"トリクルダウン"( 富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透(トリクルダウン)する、とする経済理論または経済思想 )があるが、この考え方をもって、全体経済や企業が富めば、自ずから働く者たちの賃金上昇も達成されるという推移は、現状ではほぼ完全に破たんしている!
もはや、「待てば海路の日和あり( Everything comes to him who waits. )」の諺を口にするのは、人を欺こうとする者だけに限られるようになったのかもしれない...... (2013.08.13)
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