<アベノミクスは「株価本位制」> とは、まことに言い得て妙な "特徴づけ" だと感心させられた。
下記引用サイト記事(コラム):コラム:アベノミクスは「株価本位制」、円安進まず景気停滞も/REUTERS/2013.08.16 - 15:33 での指摘である。
<2013年後半の日本経済が、アベノミクス効果でどこまで押し上げられるのかを見通すと、株価の比重が相当に大きいという構図に直面する。日経平均.N225が1万4000円台で上値を重くすれば、期待インフレ率も頭打ちになり、2年間で2%の物価上昇という日銀の目標達成にも黄信号が点灯しかねない。/ その株価の行方を大きく左右するのは円相場だ。米量的緩和縮小開始後も、ドル高/円安があまり進まず、ドル/円が100円に達しなければ、結果として日本経済が再び停滞感の強い状況に陥るリスクがある/ このようにアベノミクス効果に支えられてきた日本経済にとって、株価の占める比重は非常に高い。ある種の「株価本位制」と呼んでもいいのではないだろうか。この株価エンジンにとって、円安進展がガソリンの役割を果たしてきた>
まあ、言ってみれば、<「株価本位制」> という "特徴づけ" が言わんとする点は、株高傾向を "誘い水(呼び水)" として経済活性化を図るアプローチだということであろう。
元来は、主として経済活動の "結果" であるはずの "株高水準" を "先行" させて "期待感" を煽り、経済活動に刺激を与える......、と解釈できる。だからこそ、"誘い水(呼び水)" という物理的原理が当てはまるわけだ。
なお、"誘い水(呼び水)" 効果の大前提は、もちろん "株高傾向" であり、この現象にもまた "誘い水(呼び水)" 効果が活用されたと見ざるを得ないわけだが、それがご案内のとおりの "円安傾向" であり、黒田流の "異次元緩和" によって賄われたわけであった。
言うならば、アベノミクスとは、多重の "誘い水(呼び水)"、多重の "綱渡り" によって構成されたというのが実態のようである。
ただ、世界経済全体が低迷状況にある昨今であるため、たとえ "誘い水(呼び水)" 効果を駆使してでも経済活性化のきっかけを掴めれば良かろうとも言える。
確かに、日本経済の "良い循環" が立ち上がるならば、結果OKであるのかもしれない......。
だが、そうなる前に、不安材料が表面化しつつあるのではないか、というのが下記引用サイト記事での懸念なのである。
<ところが、足元で日本株は停滞感を強めている/ 国内投資家の多くが期待している1万5000円からは遠い水準で推移している/ 日本株の押し下げ要因としていくつかの材料が意識されている/ 日本株の上昇エンジンに変調を来している最大の要因は、ドル/円が円安方向に動かなくなったことだ/ ドル高/円安方向にドル/円が動き出さないようなら、秋が深まっても日本株の停滞感が払しょくされないリスクが高まると予想する>
グローバリズム時代の "株価" の推移(および "為替相場" )は、もちろん一国の国内事情だけで結果が出るものではない。
特に、ここでは、<量的緩和縮小の思惑が米長期金利の上昇要因となり、それが米株の下落と連動するというメカニズム/ 量的緩和の縮小と利上げの時期を大幅にずらすことがFRBによって明言された場合、量的緩和縮小というイベントが、ドル高/円安の材料にはならないと見なされる可能性> などが要注意! ではないかと......。
コラム : アベノミクスは「株価本位制」、円安進まず景気停滞も/REUTERS/2013.08.16 - 15:33
[東京 16日 ロイター] - 田巻 一彦
2013年後半の日本経済が、アベノミクス効果でどこまで押し上げられるのかを見通すと、株価の比重が相当に大きいという構図に直面する。日経平均.N225が1万4000円台で上値を重くすれば、期待インフレ率も頭打ちになり、2年間で2%の物価上昇という日銀の目標達成にも黄信号が点灯しかねない。
その株価の行方を大きく左右するのは円相場だ。米量的緩和縮小開始後も、ドル高/円安があまり進まず、ドル/円が100円に達しなければ、結果として日本経済が再び停滞感の強い状況に陥るリスクがある
。<好調な消費支えるマインド好転>
12日に発表された2013年4─6月期の国内総生産(GDP)をみても、個人消費の堅調さが日本経済の回復エンジンとして大きな役割を果たしていることがわかる。
個人消費は、マインドの好転が起点になっている。そのマインド好転の原因を探っていくと、最終的に株価上昇に行きつく。保有株式の含み益増大で購買力が増大した高額所得者だけでなく、中間層も将来の給与上昇に対する期待感が膨らみ、個人消費全体が拡大するメカニズムが動き出しているようだ。
<消費好調で動意づく流通業の設備投資>
株価の上昇は、停滞感を強めていた国内市場の先行きに対する見方も好転させる機能を持ったようで、今後の展開が注目される設備投資では、流通業などの非製造業が製造業に先行しようとしている。
非製造業の設備投資が活発化していけば、関連した製造業の収益を押し上げ、遅ればせながら製造業の設備投資にも活気が戻ってくる可能性が高まるだろう。
このようにみてくると、アベノミクス効果と言われるメカニズムの中で、株価動向が占める役割の大きさが見えてくるだろう。
<円安進まず、株価に停滞感>
ところが、足元で日本株は停滞感を強めている。16日の日経平均.N225は、米株安などを材料に一時、前日比200円を超える下落となった。今年初めに甘利明経済再生相が言及して注目された日経平均の1万3000円(甘利ライン)は上回っているものの、国内投資家の多くが期待している1万5000円からは遠い水準で推移している。
米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和縮小をめぐって市場の思惑が交錯するなど、日本株の押し下げ要因としていくつかの材料が意識されている。
だが、日本株の上昇エンジンに変調を来している最大の要因は、ドル/円が円安方向に動かなくなったことだと指摘したい。
最近のドル/円は、95円台から98円台での上下を繰り返し、100円到達を果たしていない。円安が70円台後半から進んできたことで、日本企業の収益拡大期待が膨らみ、海外マネーの流入を伴って株価を押し上げてきた。
しかし、円が100円を前に円安の歩みを止めると、日経平均の上昇力もめっきり減衰してきている。
<量的緩和縮小でも円安にならないシナリオ>
市場では、FRBの量的緩和縮小と黒田緩和の組み合わせで、ドル/円は中期的にドル高/円安方向に動くと見ている参加者が圧倒的に多い。もし、予想通りに円安が進めば、再び株価上昇のメカニズムが働き出し、株価上昇エンジンの復活でアベノミクス効果が日本経済を押し上げることになるだろう。
ただ、15日のNY市場の動向をみると、量的緩和縮小の思惑が米長期金利の上昇要因となり、それが米株の下落と連動するというメカニズムの存在にも注意が必要なようだ。
また、量的緩和の縮小と利上げの時期を大幅にずらすことがFRBによって明言された場合、量的緩和縮小というイベントが、ドル高/円安の材料にはならないと見なされる可能性もある。
ドル高/円安方向にドル/円が動き出さないようなら、秋が深まっても日本株の停滞感が払しょくされないリスクが高まると予想する。
<株価停滞なら、期待インフレ率に影響も>
株価上昇のモメンタムが弱まると、物価上昇への期待感にも影響が出てくる可能性がある。期待インフレ率はブレークイーブン・インフレ率(BEI)などで推し量ることができるが、BEIは5月23日の株価大幅下落などで2%近くから1%前半までいったん低下しており、 株価の上下が期待インフレ率に影響する可能性を示唆している。
もし、このまま日経平均が1万4000円前後で横ばいとなった場合、期待インフレ率も現状から大きく上昇しないというケースも想定しておくべきだろう。
期待インフレ率がある水準から上昇しなくなれば、2年で2%の物価上昇という「黒田緩和」の目標達成の可能性にも影響を与えると予想する。
<株価本位制の色彩濃く>
このようにアベノミクス効果に支えられてきた日本経済にとって、株価の占める比重は非常に高い。ある種の「株価本位制」と呼んでもいいのではないだろうか。この株価エンジンにとって、円安進展がガソリンの役割を果たしてきた。
米連邦公開市場委員会(FOMC)をはじめイベント目白押しの9月に入り、ガソリンが給油されるのか、それとも「ガス欠」になるのか。
この動向が今後の日本経済の行方を大きく左右すると予想する。
「株価本位制」ではないかと診断されるアベノミクスの危うさは、"誘い水(呼び水)" 効果を機能させない "国外的要因" の立ち現れに起因しているようである。しかし、国際的環境が不安定であることは、とっくに織り込み済みではなかったのか...... (2013.08.18)
コメントする