"人間の脳" の働きに関しては、さまざまな面で驚かされるが、その一つに、"人の顔の識別" とその記憶という点がある。
無数の人々が行き交う街の雑踏の中からでも、知り合いの者の顔であればほぼ確実に見分けられるのが人間であり、赤ちゃんでさえ身近な者を正確に見分けて反応する。
また、こうした当たり前の事実を踏まえて、"犯人の顔の目撃" が犯人捜査の上で重要な証言ともされるわけだ。
まあ、歳をとると、"人の顔の識別" は可能であったとしても、その人の名前を失念してしまうという不始末があったりするが、それは取りあえず "人の顔の識別" の範疇ではなさそうだ。
考えてみれば、"人の顔" という "映像情報" は、情報量の観点からすれば、多分、膨大な規模であるに違いない。その情報を、ほとんど瞬時に処理して識別しているのだから、やはり驚くべき能力だと思われる。
この能力に関連するのかどうか、つい先日、ちょっとした報道があった。< ブラッド・ピット、人の顔が覚えられない? 米誌に告白/CNN/2013.05.24 > である。<「相貌失認(そうぼうしつにん)」の症状> だと説明されてあった。実は、意外に多い疾患なのだそうである。
ところで、"人の顔" に反応する脳の部位は、"側頭連合野" だそうであり、そこに「顔細胞」と呼ばれる "神経細胞" があると言われている。ただし、解明されるべき課題が多々残されているようである。
下記引用サイト記事:チンパンジー:右脳使い顔認識 「人間と同じ」京大霊長研/毎日新聞/2013.08.14 - 12:26 が伝える研究成果は、こうした課題に少なからぬ手がかりを与えるものとして注目される。
<京都大霊長類研究所の足立幾磨助教(比較認知科学)の研究グループは、チンパンジーが相手の顔を認識する際、人間と同様に右脳を使っていることを実験で確認したと発表した。14日付の米科学誌ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス電子版に掲載された。顔を認識する仕組みが人間と極めて近いことが分かり、顔の認識の進化過程を探る手がかりになるという>
この研究が興味深いと思われた点は、<映像を認識する右脳には左側の視野の情報が先に入るため、左半分の情報が印象に残る> という点に着眼して、<人間の顔は左右対称ではないため、顔の左半分や右半分の画像を使って左右対称の顔写真を合成> することで、被験者であるチンパンジーのための "顔の識別用テスト素材" とした点であろう。
いずれにしても、"他者の顔の識別" は、ヒトにせよチンパンジーにせよ、生存競争上で重要な意味( 敵か味方か? 感情の推測? )を秘めているため、長い進化の過程で着実に培われてきたものだと解釈される......。
チンパンジー:右脳使い顔認識 「人間と同じ」京大霊長研/毎日新聞/2013.08.14 - 12:26
京都大霊長類研究所の足立幾磨助教(比較認知科学)の研究グループは、チンパンジーが相手の顔を認識する際、人間と同様に右脳を使っていることを実験で確認したと発表した。14日付の米科学誌ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス電子版に掲載された。顔を認識する仕組みが人間と極めて近いことが分かり、顔の認識の進化過程を探る手がかりになるという。
人間の顔は左右対称ではないため、顔の左半分や右半分の画像を使って左右対称の顔写真を合成すると、元の人物と異なる印象になる。一般に、向かって左側半分で合成された写真の方が右半分のものより元の人物に近い印象を受ける。映像を認識する右脳には左側の視野の情報が先に入るため、左半分の情報が印象に残ることが原因と考えられている。
グループは、10代と30代のチンパンジー各2頭に、2枚並べたチンパンジーの顔写真から見覚えのある方を選ぶ訓練をした。その上で、あるチンパンジーの顔写真を見せた後、左半分で合成した左右対称の顔と、右半分で合成した顔の2枚の写真を並べてどちらを選ぶかを実験。その結果、4頭とも300回中200回近く、「左半分」を選んだ。チンパンジーも人間と同様のメカニズムで顔を認識している可能性が高いことを示すという。
また、人間の顔写真を使って同様の実験をしたところ、30代のチンパンジーの方が、10代よりも「左半分」を選ぶ率が高かった。足立助教は「年齢を重ねて人間との接触機会が増えるほど、人間の顔が識別できるようになるようだ」と話している。【五十嵐和大】
映像情報としての "顔" の情報が、脳によって瞬時にして "識別" されるメカニズムは、妙なたとえではあるが、あたかも "バーコード" のようなものかな......、と他愛無いことを考えたりした。
とすれば、"顔" という映像情報が、いろいろなエントリーのための "ID確証" として活用されつつある推移が頷けたりもする...... (2013.08.17)
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