確かに、"化学兵器使用" という "レッドラインを踏み越える暴挙" を "傍観視" して良いわけはない。
しかし、だからと言って、直ちに "シリアへの軍事介入" という短兵急な選択をして構わないのかどうか......。
今、関係諸国、世界は、実に "抜き差しならない" 複雑さ! に遭遇している。
"悪を懲らしめる" ことは "潔く!"、これを躊躇うことは "優柔不断!" だと考えるのが "一般的感覚" なのであろうが、如何せん、現状の国際情勢の諸問題は、そうした "一般的感覚" では何一つ解決されない "局面" を迎えているようである。
既にわれわれは、そうした "局面" を数え切れないほどに経験してきたわけだ。( "9.11事件"、"イラク戦争"、古くは "ベトナム戦争" ......。そして訪れた "泥沼化!" )
今、問われているのは、これまでのような "勧善懲悪的図式(?)" に則って、直結する手段に飛びついて、その結果、ただただ事態の "泥沼化!" を招来させるような、そんなアプローチが果たして妥当なのかどうか、という問題なのかもしれない。
かねてより、現代環境と "ネゴシエーター (negotiator、交渉人)" という関係から関心が離れないのであるが、ここには、もはや現代環境は、一筋縄では "円満解決" されない複雑さを抱え込んでいるという、そんな事態が横たわっていそうな気がしてならない。
再び強調するならば、もちろん "化学兵器使用" や "核兵器誇示" に対して "寛容" であれと言いたいわけではない。ただ、これらに対する従来型の "勧善懲悪的選択" が、ほとんど有効なアプローチではなくなっており、むしろ "泥沼化!" という事態悪化にしか至らない経緯を反芻しなければならない、と思えるのである......。
こうした視点に立つ時、下記引用サイト記事:社説:英が攻撃断念 シリア泥沼化を恐れた/毎日新聞/2013.08.31 - 02:30 が伝える<英が攻撃断念 シリア泥沼化を恐れた> は、改めて目を向けなければならない事実のように思えた。
<前途の多難さを暗示する出来事だろうか。米国が検討するシリア攻撃に英国は参加しない見通しとなった。アサド政権側の軍事拠点攻撃を許可してほしいとする英政府の動議を、英下院が反対多数で否決したのだ。武力行使で米英が別行動を取るのは歴史的にも異例である。世界に驚きが走ったのも無理はない/ この際、オバマ大統領はもう一度、政治解決の方策を考えてはどうか/ 軍事行動を殊更急ぐ必要はないはずだ。攻撃後のシリアで何が起きるのか。オバマ大統領は、攻撃に伴うプラスとマイナスを慎重に見極めて結論を出してほしい>
ところで、米国内にも、以下のような実情があるとされる。
<ロイターとイプソスが30日公表した調査によると、米国では半数以上がシリア内戦への介入に反対している。ただアサド政権の化学兵器使用疑惑が明るみに出たことで介入への支持が増えた。
シリア内戦に米国は関与すべきでないとの回答は約53%と、先週の60%から低下した。行動を起こすべきとの主張は20%にとどまったが、先週の9%から大幅に増加した。......>( 米国民の半数以上がシリア介入に反対=調査/REUTERS/2013.08.31 - 08:31 )
オバマ大統領に期待される "軍事介入" 以外の<政治解決の方策> といっても、それは至難の技であろうことは言うまでもなかろう。しかし、"正気のアプローチ" としては、それしか残されていないのが現実だとすれば模索されるほかない......。
社説:英が攻撃断念 シリア泥沼化を恐れた/毎日新聞/2013.08.31 - 02:30
前途の多難さを暗示する出来事だろうか。米国が検討するシリア攻撃に英国は参加しない見通しとなった。アサド政権側の軍事拠点攻撃を許可してほしいとする英政府の動議を、英下院が反対多数で否決したのだ。武力行使で米英が別行動を取るのは歴史的にも異例である。世界に驚きが走ったのも無理はない。
英政府はこれまで米オバマ政権とともに、アサド政権が化学兵器を使ったと非難し、国連安保理ではシリア攻撃を容認する決議案を提示していた。米国と二人三脚で軍事介入の布石を打ってきた英国の脱落は、オバマ政権にとって痛手だろう。
「特別な関係」とされる米英は、リビア攻撃(2011年)、イラク戦争(03年)、アフガニスタン攻撃(01年)、ユーゴスラビア空爆(1999年)、イラクとの湾岸戦争(91年)など主要な軍事行動で共闘してきた。だが、英下院は今回、化学兵器問題で国連調査団がまだ結論を出しておらず、安保理の協議も不十分として攻撃を認めなかった。
そんな英議会の空気も、国連調査団の結論いかんでは変わるかもしれない。だが、米主導の北大西洋条約機構(NATO)加盟国の中でカナダやイタリアも不参加を表明したのは、化学兵器をめぐる問題だけでなく、軍事介入でシリア情勢はさらに泥沼化しないか、アサド政権を倒しても欧米にとって好ましい後継政権ができるのかという、もっともな疑問を見据えているからだろう。
それ以前に、アフガンでの長い軍事作戦でNATO加盟国は疲れている。特にアフリカ・マリなどに軍事介入したフランスは新たな戦線を抱えたくあるまい。米国自身、巡航ミサイルなどで軍事拠点を破壊するのはともかく、地上軍派遣を必要とする事態を招きたくはないはずだ。
しかも安保理はロシアや中国の反対で容認決議採択の見通しが立たず、英国に続いて米議会が攻撃に反対する可能性もある。米国は「大量破壊兵器の脅威」を大義名分として英軍とともにイラクに侵攻したが、同種の兵器を発見できなかった。そのイラク戦争の苦い教訓が今、立ちふさがっている。
この際、オバマ大統領はもう一度、政治解決の方策を考えてはどうか。化学兵器を使った国を放置すれば、中東の同盟国イスラエルの安全にかかわるという判断もあろう。化学兵器は北朝鮮にもある。菅義偉官房長官が「日本にとって無関係ではない」と言うのは、その通りである。
だが、軍事行動を殊更急ぐ必要はないはずだ。攻撃後のシリアで何が起きるのか。オバマ大統領は、攻撃に伴うプラスとマイナスを慎重に見極めて結論を出してほしい。
少なくとも、"オバマ大統領" は、あの "イラク戦争" に突き進んで行った "プッシュ大統領" と同じ轍(わだち)を踏んでもらいたくはない...... (2013.09.01)
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