米国での "一部政府機関の閉鎖" 問題( 2014年度予算案をめぐる民主・共和両党の対立、政府債務上限をめぐる問題 )は、事態打開の道筋が見えてこず、こうした米国財務の混乱状況は、世界経済に不安の影をもたらしている。
折しも "消費増税" 策が決まり、少なからぬインパクトを受けている日本経済/為替・株式市場にも、その影響が波及していると見える。( この間の "円高/株安" 状況 )
日本国内では、概ね "楽観視(?)" されているかにも窺えるが、"警戒色" に彩られた論評も少なからず目につくのが現状だ。
下記引用サイト記事:コラム:米混乱が招く安倍相場の「逆回転リスク」=佐々木融氏/REUTERS/2013.10.04 - 18:42 は、注意深い視点で "警戒" を促す、そうした記事のひとつである。
米国でのこの問題への最悪の観測は、このまま "米国債がデフォルトに陥る" とするものであろうが、このコラムの筆者はそこまでの悲観視は避けている。
<筆者は米国債がデフォルトに陥る可能性は極めて低いと考えている> と。しかし、
<そのギリギリのところまで米国議会における民主党と共和党の対決が続いてしまうリスクは小さくはない/ それまでの間、つまり10月中はドル円相場が予想以上に大きくドル安・円高方向に振れるリスクを警戒する必要がある> とする。なお、その理由は以下のとおりだとされる。
<このような米国の財政をめぐる混乱はドル安につながる可能性が高い/ また、米政府機関の一時閉鎖は当然、米国の経済成長にとってマイナスとなる。...... 閉鎖が長引けば長引くほどマイナスインパクトは大きくなり、世界経済にも悪影響 → 市場のボラティリティ(予想変動率)も上昇する可能性が高く、そうなると世界の投資家は大きなポジションを保有し続けられなくなる → 世界経済が鈍化し、金融資本市場のボラティリティが上昇してしまえば、世界の投資家はポジションを手仕舞う必要に迫られ、結果的に日本株を売り、円を買い戻さざるを得なくなる>
要するに、今回の "米国での問題" は、"安倍相場(アベノミクス相場)" が、"ドル安・円高" 相場へと "リワインド(rewind 巻き戻し)" されかねない、そんなリスクが潜んでいるというのである......。
コラム : 米混乱が招く安倍相場の「逆回転リスク」=佐々木融氏/REUTERS/2013.10.04 - 18:42
佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 債券為替調査部長(2013年10月4日)
米国の2014年度予算案をめぐる混乱は結局、会計年度末を越え、今月から政府機関の一部閉鎖が始まった。 ...... 政府機関が閉鎖に追い込まれたことは17回もあった。...... 短期間で終わることも多かったが、今回のケースでは前回の26日間を越える閉鎖期間となるリスクも想定しておく必要があるかもしれない。
現在の状況に鑑みると、民主党と共和党の予算案をめぐる確執は、政府債務の上限をめぐる問題にも拡がりを見せ、結局は両問題が一緒に協議されることになりそうだ。大雑把に言えば、予算案の紛糾ポイントは医療保険制度改革(オバマケア)に関する支出を認めるかどうかという点だ。これは政府債務の上限を引き上げるべきか否かという問題にもつながってくる。つまり、政府債務の上限が引き上げられるという結果になるまで、政府機関の一部閉鎖が続く可能性も考えられる。
<10月中は予想以上のドル安・円高に要注意>
ルー米財務長官によれば、これまで行なってきた特別措置もいよいよ限界を迎え、10月17日には米国の債務は法律で定められた上限に届いてしまうとの見通しである。...... 11月1日には670億ドルの歳出が予定されているため、遅くともその日には債務は上限に到達することは確実だ。それまでに議会が上限を引き上げられなければ、米国債はデフォルトになってしまう可能性が高まる。
つまり、...... まだ1カ月弱の余裕があるとも言える。それまで共和党と民主党の意地の張り合いが続いてしまうリスクも想定しておかなければならない。
このような米国の財政をめぐる混乱はドル安につながる可能性が高い。米国は巨額の経常赤字国であるため、そもそも市場には常に大きなドル売り需要がある。したがって、通常は巨額の投資資金が米国に流入することによってドルは安定するわけだが、今回のような問題が生じると、米国への資本流入が極端に減ることになる。前回、政府債務の上限問題がギリギリまで懸念された11年7月には、上限引き上げ決定(債務上限は8月初に引き上げられた)までの2週間でドルは実効レートベースで2.5%、ドル円は81円台から76円台まで約6%下落した。
また、米政府機関の一時閉鎖は当然、米国の経済成長にとってマイナスとなる。...... 閉鎖が長引けば長引くほどマイナスインパクトは大きくなり、世界経済にも悪影響を与える。市場のボラティリティ(予想変動率)も上昇する可能性が高く、そうなると世界の投資家は大きなポジションを保有し続けられなくなる。
今、世界の投資家が保有しているポジションで最も大きいのは、恐らくアベノミクスに期待した日本株の買い持ちポジションと、日本の投資家などによる対外投資増加を期待した円の売り持ちポジションだろう。日本が問題の根源ではなくても、世界経済が鈍化し、金融資本市場のボラティリティが上昇してしまえば、世界の投資家はポジションを手仕舞う必要に迫られ、結果的に日本株を売り、円を買い戻さざるを得なくなる。
筆者は米国債がデフォルトに陥る可能性は極めて低いと考えているが、そのギリギリのところまで米国議会における民主党と共和党の対決が続いてしまうリスクは小さくはないと見ている。したがって、それまでの間、つまり10月中はドル円相場が予想以上に大きくドル安・円高方向に振れるリスクを警戒する必要があると考えている。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
グローバリズム経済ただ中の日本経済は、<日本が問題の根源ではなくても> 想定外のリスクに見舞われることが避けられない。
日銀の黒田東彦総裁が、<「長引けば、かなり深刻な影響が世界経済に及ぶ恐れがある」と強い懸念を示した>( 日銀総裁、米財政問題に強い懸念「世界経済に深刻な影響」/【共同通信】/2013.10.04 - 21:42 ) という点は、それを裏付けている...... (2013.10.06)
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