アベノミクスの最大のボトルネックは、やはり、"中小企業問題" なのではなかろうか。
中小企業を "蚊帳の外" に置いた "大企業" 中心の経済政策は、視野の外に置いた現実から "想定以上のリアクションを被りかねない" と危惧されるからだ。それを称して「倍返し」になると懸念する向きもある......。
何も、"中小企業" が叛乱を起こすはずもないが、"足を掬われる" 可能性がかなり高いのではなかろうか。
政府の現状認識(および喧伝)は、次のとおりであろう。
<日銀は、21日まとめた最新の「地域経済報告」で、企業の生産が緩やかに増加し、雇用や所得にも改善の動きが見られることから、全国9つの地域すべてで景気判断を上方修正しました。>( 日銀 全地域の景気を上方修正/NHK NEWS WEB/2013.10.21 - 16:01 )
だが、相変わらず、以下のような実態が尾を引いていることも否定できない。
<時事通信の10月の世論調査で、安倍内閣が発足した昨年末以降、景気の回復を実感するかどうかを尋ねたところ、「実感する」と答えた人は18.5%にとどまり、「実感しない」が76.4%に達した。
同じ質問をした4月調査は「実感する」23.7%、「実感しない」68.6%で、半年前より景況感は後退。安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」は、各種経済指標を改善させてはいるが、国民生活への波及効果は依然乏しいとみられる。......>( 景気回復実感せず76%=半年前より上昇-時事世論調査/時事ドットコム/2013.10.18 - 15:37 )
こうした実態の背景には、明らかな事実、つまり<中小企業は全企業数のうち99.7%を占め、企業従業員の66%を雇用> という現実が横たわっているに違いない。
【 引用サイト記事 】:37兆円"不良債務爆弾"の導火線に火をつける消費増税、衝撃度は"倍返し"どころではない/msn 産経ニュース/2013.10.24 - 13:17 は、この視点から "アベノミクス路線の危うさ!" を論じている。
安倍首相の "自画自賛" とは裏腹に、<しかし、巷(ちまた)の様子はかなり違う。...... 中小企業経営者から相談が殺到/ 「これまでの円安に伴う原材料高すら価格転嫁できないのに、消費増税分をどうやって販売価格に転嫁できるのか」「来年4月からの販売契約を結んだが、消費税率アップ分は認めてもらえなかった」/ 中小企業はアベノミクスの恩恵なし> と......。
こうした "中小企業" の苦境は、以下の仕組みからくるわけだ。
<中小企業は仕入れ価格の値上がりをのみ込まされるうえに、販売価格を上げられない/ 中小企業の大半は内需中心なので、円安による原材料高の直撃を受ける/ この格差は消費増税によってさらに拡大>
したがって、<賃上げどころではない。法人税減税を餌に産業界に賃上げを浸透させるシナリオは危うい> と連なってゆくことになる。
確かに、"消費の拡大" の前提である "賃上げ" が滞るならば、アベノミクスは上手く回っては行かなくなるだろう......。
そればかりではない。これまで "封じ込められていた負の遺産!" が表面化するリスクまで浮上しかねない......。
<リーマン・ショック後の「中小企業金融円滑化法」で棚上げされてきた中小企業約40万社の不良債務は総額で37兆円/ この巨大な債務爆弾の導火線に、来年4月の増税実施とともに火がつく>
こうした文脈をなぞってみると、アベノミクスの今後は、到底、平坦なものだとは考えにくいことになる......。
【 引用サイト記事 】
37兆円"不良債務爆弾"の導火線に火をつける消費増税、衝撃度は"倍返し"どころではない/msn 産経ニュース/2013.10.24 - 13:17
アベノミクス開始以来10カ月、その成果が上々だと判断した安倍晋三首相は来年4月から消費税率を8%に引き上げる。メディアも楽観一色で、日経新聞は14日の朝刊1面特集記事で、「景気回復、裾野広がる 円安が設備投資に点火」とはやし立てた。
しかし、巷(ちまた)の様子はかなり違う。知り合いの大手税理士事務所には、中小企業経営者から相談が殺到している。「これまでの円安に伴う原材料高すら価格転嫁できないのに、消費増税分をどうやって販売価格に転嫁できるのか」「来年4月からの販売契約を結んだが、消費税率アップ分は認めてもらえなかった」などだ。
「消費税価格転嫁特別措置法」により、価格転嫁を促す、というのが政府・与党の説明だが「お上」が自由な商取引にいちいち口をはさむのは時代錯誤も甚だしいし、無理がある。
中小企業はアベノミクスの恩恵なし
中小企業は全企業数のうち99.7%を占め、企業従業員の66%を雇用している。大企業は言わば富士山の頂上部分で、中小企業はその中腹から分厚い裾野を形成している。大財閥だけが幅をきかせるだけで中小企業層が貧弱な韓国や、外資と国有大企業中心の中国に比べて、日本の雇用吸収力が高いゆえんである。
アベノミクスの日が差して輝いているのは頂上だけで、中腹から裾野は依然として暗い。消費増税の嵐の直撃を受けるのは中腹以下の内需中心の中堅、中小企業で、大企業は法人税減税で負担が減る。
財務省の法人企業統計から、この第2四半期までの企業規模別の経常利益の前年比増減率をみると、アベノミクスがスタートした今年1月以降、大企業は急速に収益を回復しているのに対し、中堅企業は4月以降に失速、中小企業はアベノミクスの恩恵を受けることなく沈みっぱなしだ。
そもそもアベノミクスの成果とは、円安と、円安がもたらす株高である。円安は輸入原材料のコストアップを招いている。
円安で大企業と中小企業に格差
大企業は価格交渉力が強くて、仕入れコストの上昇を最小限に抑え込む一方で、抑え切れない部分は販売価格に転嫁する。ところが、中小企業は仕入れ価格の値上がりをのみ込まされるうえに、販売価格を上げられない。
しかも、大企業は輸出比率が高いので、円安に伴う収益増を満喫できる。中小企業の大半は内需中心なので、円安による原材料高の直撃を受ける。この格差は消費増税によってさらに拡大し、中小企業の疲弊が進み、賃上げどころではない。法人税減税を餌に産業界に賃上げを浸透させるシナリオは危ういのだ。
ちなみに、リーマン・ショック後の「中小企業金融円滑化法」で棚上げされてきた中小企業約40万社の不良債務は総額で37兆円にも上る。この巨大な債務爆弾の導火線に、来年4月の増税実施とともに火がつく。
消費増税に伴う民間負担8兆円の衝撃は「倍返し」どころでは済まない。(産経新聞特別記者 田村秀男)
"格差の拡大とその常態化" が指摘される昨今であるが、何よりも "円安" 現象をテコとしているアベノミクス政策は、大企業と中小企業にさらなる格差をもたらし、格差社会を増幅する機能を果たしていると見える...... (2013.10.27)
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