「頭は、使えば使うほど発達する!」とは、かねてより良く聞かされてきた言葉だ。
こうした "教訓" の根底には、すでに "脳は老化しない!" という事実への直観的な洞察が含まれていたかに思われる。
そして、近年の "脳科学" は、こうした "直観" に科学的な裏づけを与えはじめているという。要するに、"脳は、体のほかの細胞とは異なって老化しない!" ということになるようだ。
下記引用サイト記事:脳は老化しない!?:研究結果/WIRED/2013.10.09 - WED は、近年の研究結果を踏まえて、こうした事実に言及している。
<最も驚くべき発見は、決して老化しない可能性がある/ 「体のほかの細胞は不可避的に老化していきます。というのも、増殖することでDNAにダメージを蓄積させ、ついには細胞死に至るからです。これに対してニューロンは、一度分化するとそのまま残ります」/ 「その結果、特定の病気が生じなければ、脳は常に若いまま維持することができます」。むしろ年齢とともに、学習のおかげでシナプスの結合は増加する。さらに失われたニューロンを、70〜80歳でも再生することのできる神経幹細胞が存在する(特に、嗅球や海馬において)。「このことは、脳が一生の間中、回復できることを意味します」>
そして、<どうすればニューロンを長生きさせられるだろうか?> という問いかけに対して、以下のような3点を挙げている。
<(1) 運動をすること。これは、新しいニューロンの形成を促進/ (2) 細胞を損傷させるフリーラジカルを防ぐために、抗酸化物質やオメガ3脂肪酸の豊富な食事をすること/ (3) さらに重要なのは、歳をとっても頭脳を鍛えること。学習は脳の柔軟さを保ち、シナプスの形成を促進する> と。
ただし、こうした "不死鳥" とも受けとめられかねない "脳" にも、"要警戒!" の側面が控えていること、その面にも注意深く目が向けられている......。
<しかし、神経細胞を損傷する可能性のある環境的、生物的、分子的要因が数多くあることは事実だ。そして、リスク要因に晒される時間が長くなれば、損傷する可能性も高くなるのは明らかだ。アルツハイマー病をはじめとする老年期の神経変性疾患/ 予防が重要> だと。
世界的に高齢化時代を迎えて、<アルツハイマー病をはじめとする老年期の神経変性疾患> に注目が集まっている時代現象は、こうした文脈の中で捉えられてこそ、その重大性が浮かび上がる......。
脳は老化しない !? : 研究結果/WIRED/2013.10.09 - WED<
皮膚や筋肉、骨と違って、脳細胞は老化しない。しかし、アルツハイマー病のような病気を予防することは決定的に重要だ。
TEXT BY DANIELA COPOLLONI
TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI
WIRED NEWS(ITALIA)
Sweet toddler having an idea photo from Shutterstock
長寿と脳の間にはどのような関係があるのか? 歳をとるとニューロンには何が起こるのか? 認知能力の衰えは避けることができるか? 近年、こうした疑問の解明につながる研究が増えている。例えば、脳の大きさと長寿には相関関係があることが発見された。特に哺乳類では、コウモリを除いて明らかだ。体と比べて大きな脳をもつ種は、長寿が期待できる。ヴェネツィアで9月21日まで開催された「科学の未来(The Future of Science)」第9回世界大会のゲストで、ニューメキシコ大学の進化人類学者、ヒラード・カプランが説明しているように、脳の能力がより高いことで、動物はよりよく環境に適応して、その恩恵を得ることができる。
しかし、最も驚くべき発見は、これが老化しないということだ。もっと正確にいうと、決して老化しない可能性がある。「体のほかの細胞は不可避的に老化していきます。というのも、増殖することでDNAにダメージを蓄積させ、ついには細胞死に至るからです。これに対してニューロンは、一度分化するとそのまま残ります」と、ミラノ大学の薬学者・神経生物学者、ミケーラ・マッテオーリは説明する。彼女はラグーザの会議で「科学の未来」の長寿の秘密についてのセッションを取り仕切った。
「その結果、特定の病気が生じなければ、脳は常に若いまま維持することができます」。むしろ年齢とともに、学習のおかげでシナプスの結合は増加する。さらに失われたニューロンを、70〜80歳でも再生することのできる神経幹細胞が存在する(特に、嗅球や海馬において)。「このことは、脳が一生の間中、回復できることを意味します」。
▼ ニューロンを長生きさせる方法は?
従って体と脳は、老化に関していえば、異なる道を歩んでいる。しかし、ニューロンに長寿の限界は存在するのだろうか? それとも、不死にもなりうるのだろうか? ロッツァーノのウマニタス医療研究所(Istituto Clinico Humanitas)の神経科学プログラムのトップでもあるこの研究者は答える。「しかし、最近の研究が示唆しているように、神経細胞は、これが属している体よりも長く生き延びることができます」。
これは、パヴィア大学とトリノ大学のイタリア人グループが「PNAS」で発表した驚くべき結果だ。研究者たちは、マウスの胚から神経前駆細胞を採取して、これを平均寿命が約2倍のラットの胚の神経システムに移植した。このときニューロンは、新しい長命の宿主の死まで、完璧に生きていた。このことが意味するのは何だろうか? 寿命がより長くなっても、必ずしも脳が退化するわけではないということだ。
しかし、神経細胞を損傷する可能性のある環境的、生物的、分子的要因が数多くあることは事実だ。そして、リスク要因に晒される時間が長くなれば、損傷する可能性も高くなるのは明らかだ。アルツハイマー病をはじめとする老年期の神経変性疾患は(9月21日は世界アルツハイマーデーだ)、病気の進行を止めることのできる治療法が存在せず、世界の健康・社会・経済の危機となる。このため、予防が重要だ。
どうすればニューロンを長生きさせられるだろうか? 「例えば、運動をすることです。運動が脳内のプロテイン、BDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor:脳由来神経栄養因子)のレヴェルを増加させることは証明されています。これは、新しいニューロンの形成を促進します」と、マッテオーリは説明する。「そして、細胞を損傷させるフリーラジカルを防ぐために、抗酸化物質やオメガ3脂肪酸の豊富な食事をすることです。さらに重要なのは、歳をとっても頭脳を鍛えることです。というのも、学習は脳の柔軟さを保ち、シナプスの形成を促進するからです」。
"老化しないニューロン" が驚きのひとつではあるが、いまひとつ着目したいのは<さらに失われたニューロンを、70〜80歳でも再生することのできる神経幹細胞が存在> という、<再生(能力)>という点ではなかろうか。
いろいろなケースでの脳の損傷後に試みられる "リハビリ" 治療の奏功の可能性が、この "ニューロンの再生" にかかっていると見受けられるからだ...... (2013.10.11)
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