"動脈硬化" の原因だと見なされている血中 "コレステロール" という定説では、その "コレステロール" には「善玉コレステロール」と「悪玉コレステロール」とがあるとされている。おさらいすれば、次のようになる。
< コレステロールを多く含んでいるリポたんぱくとしてはHDLとLDLがあります。
HDLコレステロールは、血管内壁にへばりついて動脈硬化を引き起こすコレステロールを引き抜いて、肝臓まで運ぶ働きをしています。このことから「善玉コレステロール」と呼ばれています。
一方、LDLコレステロールは、細胞内に取り込まれなかった余剰なコレステロールを血管内に放置し、動脈硬化を引き起こす原因となるため、「悪玉コレステロール」と呼ばれています。 > ( 下記引用サイト記事 2 : 動脈硬化の予防する働きがあるHDL(善玉)コレステロール/病院の検査の基礎知識 )
とすれば、「悪玉コレステロール」をなくすとともに、「善玉コレステロール」を増やせば良いことになりそうだ。
現に、「善玉コレステロール」を増やす "遺伝子" を操作する治療薬が期待されているとも言われる。
ところが、これに "待った!" をかけるかたちの研究成果が発表された。
下記引用サイト記事 1 : 善玉コレステロール抑制遺伝子、肥満に影響 京大講師ら発表/京都新聞/2013.12.08 - 08:40 がそれであり、「善玉コレステロール」の生成に直結する "遺伝子" の働きの構造からするならば、同時に、"肥満/脂肪酸" という結果にもつながってしまう!というのである。( 下記の "マウス比較写真"! )まさに、"皮肉な関係!" が潜んでいると......。
<善玉コレステロール(HDL)の生成を抑えている遺伝子が肥満の原因になる脂肪酸の合成も抑制していることを、京都大医学研究科の尾野亘講師と堀江貴裕助教らのグループが見つけた。安全な動脈硬化の治療薬の開発につながる成果で、英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」で発表した> とある。
"抑制の抑制" というような "二重否定" の記述でやや戸惑うのだが、要するに、<善玉コレステロール(HDL)の生成を抑えている遺伝子=遺伝子RNAの一種(miRNA33)> の働きを "抑制" すると、<肥満の原因になる脂肪酸の合成の抑制> も同時に "抑制" されて、"肥満の原因になる脂肪酸の合成" が、抑制を解除されて活性化される! ということのようだ。
したがって、<「動脈硬化の治療薬としてRNAを阻害する薬剤だけを用いると、肥満や脂肪肝になる可能性が高い。脂肪酸の合成を抑える薬剤も必要になるだろう」> という指摘となり、今回の研究成果は<安全な動脈硬化の治療薬の開発> につながるというわけなのである......。
【 引用記事 1 】
善玉コレステロール抑制遺伝子、肥満に影響 京大講師ら発表/京都新聞/2013.12.08 - 08:40
善玉コレステロール(HDL)の生成を抑えている遺伝子が肥満の原因になる脂肪酸の合成も抑制していることを、京都大医学研究科の尾野亘講師と堀江貴裕助教らのグループが見つけた。安全な動脈硬化の治療薬の開発につながる成果で、英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」で発表した。
尾野講師らは、遺伝子RNAの一種(miRNA33)を抑制すると、血中の善玉コレステロールが増えることを見つけている。このRNAを阻害する薬剤は動脈硬化の治療薬として期待されているが、どんな副作用があるかはよく分かっていない。
尾野講師らはマウスでRNAをなくすと、肥満になることを実験で見つけた。肥満や脂肪肝の原因になる脂肪酸の合成が進んでいたことから、脂肪酸の合成を抑制する働きがあることが分かった。
尾野講師は「動脈硬化の治療薬としてRNAを阻害する薬剤だけを用いると、肥満や脂肪肝になる可能性が高い。脂肪酸の合成を抑える薬剤も必要になるだろう」と話している。
【 引用記事 2 】
動脈硬化の予防する働きがあるHDL(善玉)コレステロール/病院の検査の基礎知識
血液中のコレステロールや中性脂肪などが、たんぱく質と結びついたものをリポたんぱくといいます。リポたんぱくを遠心分離器にかけると、比重の違いによって軽い順に、カイロミクロン、VLDL(超低比重リポたんぱく)、LDL(低比重リポタンパク)、HDL(高比重リポたんぱく)に分けられます。コレステロールを多く含んでいるリポたんぱくとしてはHDLとLDLがあります。
HDLコレステロールは、血管内壁にへばりついて動脈硬化を引き起こすコレステロールを引き抜いて、肝臓まで運ぶ働きをしています。このことから「善玉コレステロール」と呼ばれています。
一方、LDLコレステロールは、細胞内に取り込まれなかった余剰なコレステロールを血管内に放置し、動脈硬化を引き起こす原因となるため、「悪玉コレステロール」と呼ばれています。......( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
「善玉コレステロール」は、その "善玉" という呼称から、「ならば良かろう!」と諸手を挙げた歓迎ムード(?)が世間に出来上がっていただけに、今回の上記ニュースは、より注目されなければならないものと思われる...... (2013.12.12)
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