一昨日、<iPS細胞から"赤血球量産"の技術開発(京大)!> に関連し、"輸血に伴うリスク" について以下のように書いた。
<大きな外科手術では "輸血" という緊急措置が必要となる場合がある。そんな場合、準備された "血液製剤" に、何ら問題のないことを祈りたいが、"不安材料" が無いわけでもない......。
つい先日には、<エイズウイルス(HIV)に感染した献血者の血液が日本赤十字社の安全検査をすり抜けて輸血された問題>( もう1人の輸血患者、HIV感染なし 検査すり抜け/日本経済新聞/2013.11.29 19:41 )が報じられて、世間を震撼させた......>( iPS細胞から"赤血球量産"の技術開発(京大)!遺伝子操作での"不死化赤血球前駆細胞"!( 当誌 2013.12.07 ) )
"iPS細胞から"赤血球量産"" については、今すぐに実現される話ではないため、やはり "輸血に伴うリスク" に関して、その実情について知っておいた方が良かろうと思えた。
下記引用サイト記事 : 《126》 ゼロにはできないがゼロに近づけられる輸血のリスク/朝日新聞 / 内科医・酒井健司の医心電信/2013.12.09 が、タイミング良く目にとまったので
専門家の判断に耳を傾けておきたい。
<輸血によってHIV(エイズウイルス)に感染する危険性はきわめて低いですが、ゼロではありません/ 当院の輸血同意書には、輸血後の感染リスクについてB型肝炎、C型肝炎のほかにエイズについても記載があり、「例数が少ないが、1100万本に1例の感染と推定 *2000年2月~2004年1月の4年間の日本赤十字社の集計データ*」とあります/ 世界的にみても日本の輸血は安全性が高いです。輸血によってHIVに感染するリスクはゼロではないものの、きわめて低いと言っていいと思います> とある......。
患者側にとっては、いろいろなケースで病院側から "署名" を求められる "「 ~ 同意書」" は、ともかく "不安材料" 以外ではないのであるが......。
《126》 ゼロにはできないがゼロに近づけられる輸血のリスク/朝日新聞 / 内科医・酒井健司の医心電信/2013.12.09
私が勤務する病院では、輸血や血液製剤を使用するときには、患者さんにご説明した上で、同意書に署名をしていただく必要があります。日本のどこの病院でもそうでしょう。当院の輸血同意書には、輸血後の感染リスクについてB型肝炎、C型肝炎のほかにエイズについても記載があり、「例数が少ないが、1100万本に1例の感染と推定 *2000年2月~2004年1月の4年間の日本赤十字社の集計データ*」とあります。
輸血によってHIV(エイズウイルス)に感染する危険性はきわめて低いですが、ゼロではありません。つい先日、HIV感染者の血液が患者さん2人に輸血されたというニュースがありました。
HIV感染者の血液、2人に輸血 献血時の検査すり抜け(アピタル 2013年11月26日)エイズウイルス(HIV)に感染した男性が献血した血液が、患者2人に輸血されていたことが26日、分かった。感染初期だったために検査をすり抜けたとみられ、男性も献血前の問診でHIV感染の危険がある性的行為について事実と異なる申告をしていた。厚生労働省と日本赤十字社は、患者が感染していないか調べている。2004年に検査を強化して以降、感染者の血液の使用が判明したのは初めて。田村憲久厚労相は26日の閣議後の記者会見で「遺憾だ。感染の初期は検査で分からないので、正直に申告してもらうことを徹底したい」と述べた。厚労省は検査目的の献血はせず、保健所などの無料検査を受けるよう呼びかけている。
なぜ検査をすり抜けたのでしょうか。HIVが感染すると体内でウイルスが徐々に増えますが、感染初期でウイルスの量が少ない時期には検査で陰性に出てしまうことがあるのです。これをウインドウ期といいます。その後の報道によれば、輸血された患者さん2人のうち1人に感染していたことが明らかになりました。もう1人に感染が成立しなかったのはウイルス量が少なかったからでしょう。
検査の精度を上げることでウインドウ期を短くすることはできます。2004年までは50人分の血液をまとめて検査していたのですが、検査のすり抜け事例が出たために2004年から20人分をまとめて検査するようになりました。まとめて検査する理由は検査のコストを減らすためです。ただ、たくさんの検体をまとめることで検査の精度が落ちます。
さらに検査の精度を上げるために、まとめて検査するのではなく個別に検査する方法が検討されています。さらに安全になりますが、コストは増えるでしょう。献血は無料でいわば原材料費はタダのようなものなのに(献血してくださるみなさん、ありがとうございます)、輸血や血液製剤の値段が高いのは、安全性の確保にコストがかかるからです。
個別に検査したとしても輸血によるHIV感染のリスクはゼロにはならないでしょう。輸血の安全性を確保するため、検査をするだけではなく、HIVに感染している可能性の高い方からの献血はお断りしています。献血でHIVが陽性であっても献血者には通知しないことになっており、検査目的で献血するのは輸血を受ける患者さんを危険にさらすだけで献血者にも利益はありません。検査目的の献血はやめましょう。HIVについては保健所等で無料・匿名で検査を受けることができます。
医師のほうも輸血のリスクに自覚的でなければなりません。HIVのみならず、B型肝炎やC型肝炎も検査をすり抜けることがあります。あるいは未知のウイルスがあるかもしれません。感染以外にもアレルギー様の副作用も稀ながらあります。他のあらゆる医療行為と同様に、輸血の使用はリスクとメリットを勘案して判断されるべきです。
輸血のリスクを強調しすぎたかもしれません。あまり不安がる必要はありません。普通はリスクよりもメリットが上回るがゆえに輸血が使用されます。2004年に検査方法を見なおしてから、輸血によるHIV感染が明らかにになった事例は今回が初めてです。世界的にみても日本の輸血は安全性が高いです。輸血によってHIVに感染するリスクはゼロではないものの、きわめて低いと言っていいと思います。
"一抹の不安" がよぎらざるを得ないが、ここは、<他のあらゆる医療行為と同様に、輸血の使用はリスクとメリットを勘案して判断されるべきです> ということになりそうである...... (2013.12.09)
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