"iPS細胞" 技術のアプローチを活かした "がん免疫療法" が、実現へと歩を進めている。
"がん免疫療法" とは、患者体内に備わった "免疫力/免疫細胞" を活性化させ、支援することで、"がん細胞" の動きを封じ込める治療法だと理解できる。
もう一年前のことになるが、次のような動向に注目したことがある。
<ウイルスに感染した細胞やがん細胞などを攻撃する免疫細胞の一種「T細胞」を一度、人工多能性幹細胞(iPS細胞)にした上で、同じ能力を持つ「元気」なT細胞に再生させることに世界で初めて成功したと、東京大の中内啓光(ひろみつ)教授らのグループが発表した。このT細胞を患者の体に戻すことで、がんなどの新たな治療法につながる ......>( iPS細胞の技術応用で、がん細胞などを攻撃する免疫細胞の一種"T細胞"の若返りに成功!( 当誌 2013.01.05 ) )
◆ ほか参照 iPS細胞(人工多能性幹細胞)研究の多彩な動向!着実な歩みを見せる実用化アプローチ!( 当誌 2014.01.17 )
今回の記事では、この延長線にありながら、この進展への歩幅の広いことに気づかされる思いがする。
下記引用サイト記事 : iPS細胞、がん免疫療法に応用研究/日刊工業新聞/2014.01.23 が、この "広い歩幅の進展" をまざまざと伝えている。
<がん免疫療法への応用を目指し、iPS細胞から免疫細胞を作り出す研究が進んでいる。理化学研究所は強力な免疫作用のある「ナチュラルキラーT(NKT)細胞」の作製に成功。 熊本大学は膵臓がんや胃がんの治療に向けて「マクロファージ」と「樹状細胞」を効率的に増やす手法を開発した> とある。
ともに、<iPS細胞から免疫細胞を作り出す研究> という点では共通しているが、両研究機関の成果それぞれの特徴は以下のように強調できようか。
理化学研究所 :
<NKT細胞は、細胞傷害性の「ナチュラルキラー(NK)細胞」と「T細胞」を活性化して腫瘍を抑制する働きを持つ=腫瘍抑制効果> という点!
熊本大学 :
<(免疫細胞である)マクロファージと樹状細胞を大量培養/ さらに、がん細胞を攻撃する「インターフェロン(IFN)β」を産生する能力を加えた> という点!
いずれにしても、患者体内に備わった "免疫力/免疫細胞" を活性化させ、支援することで、"がん細胞" の動きを封じ込めるという、まさに "がん免疫療法" の面目躍如たるものがあると言える。
iPS細胞、がん免疫療法に応用研究/日刊工業新聞/2014.01.23
がん免疫療法への応用を目指し、iPS細胞から免疫細胞を作り出す研究が進んでいる。理化学研究所は強力な免疫作用のある「ナチュラルキラーT(NKT)細胞」の作製に成功。熊本大学は膵臓がんや胃がんの治療に向けて「マクロファージ」と「樹状細胞」を効率的に増やす手法を開発した。
ヒトiPS細胞からNKT細胞を作製したのは、理研統合生命医科学研究センターの古関明彦グループディレクターらのチーム。末梢血から採取したNKT細胞をもとに、iPS細胞の誘導に必要な4遺伝子に加え、もう1種類の遺伝子を加えることにより効率的にiPS細胞を作製。このiPS細胞からNKT細胞を作り出した。
NKT細胞は、細胞傷害性の「ナチュラルキラー(NK)細胞」と「T細胞」を活性化して腫瘍を抑制する働きを持つ。マウスiPS細胞由来のNKT細胞をがんのモデルマウスに投与する実験では、腫瘍抑制効果を確認できた。
一方、熊本大の千住覚准教授らは、樹状細胞などに分化する初期段階の「ミエロイド細胞」をiPS細胞で作った後、2種類の遺伝子を導入することで増殖性を高めることに成功した。24時間で2倍程度に増やすことができるという。
これを利用してマクロファージと樹状細胞を大量培養した。さらに、がん細胞を攻撃する「インターフェロン(IFN)β」を産生する能力を加えた。免疫細胞ががん細胞に集まる性質を利用することで、がんの増殖を抑制できることをマウス実験で確認した。......
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
<人類が "数百万年" の歳月をかけて培ってきた "免疫メカニズム"> ( 1日当たり新たながん細胞は約5千個もできる?! なのに"がん"にならないワケ:免疫力!( 当誌 2014.01.26 ) )を、"がん治療" の "確かな基点" としている "がん免疫療法" が、臨床現場での福音となる日が一日も早く訪れることを何よりも期待したい...... (2014.01.27)
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