"iPS細胞(人工多能性幹細胞)" に関する研究は、この1~2年の間で目覚ましい進展を見せている。
この進展を詳細に追うことなぞできないが、当誌で扱ってきた主な関連記事だけでも、多岐の臓器に向けた "(移植用)細胞" が、以下のように作製されている。
ざっと、"がん免疫細胞療法用NKT細胞"/"神経細胞"/"血小板のもとになる巨核球という細胞"/"肺組織の細胞"/"膵臓細胞"/"赤血球前駆細胞"/"肝臓のもととなる「小さな肝臓」"/"網膜の組織細胞"/"膵島細胞"/"髪の毛のもと「毛包」" といった多彩な拡がり! が見られる。
◆ 参照
① 各地で進む!"がん免疫細胞療法:NKT細胞療法"臨床試験!新たながん治療の選択肢!/当誌 2014.03.13
② パーキンソン病!"iPS細胞"を使った再生医療での治療/京大が16年にも"臨床研究"開始!/当誌 2014.03.08
③ 京大、iPSで"血小板"(←巨核球)大量作製 輸血安定供給へ!"赤血球量産"技術も既に!/当誌 2014.02.15
④ iPS細胞(人工多能性幹細胞)研究の多彩な動向!着実な歩みを見せる実用化アプローチ!/当誌 2014.01.17
⑤ "肺組織(呼吸器細胞)"を作るための材料として"iPS細胞"が利用可能!研究者らが成功!/当誌 2013.12.18
⑥ 糖尿病治療に朗報!マウスの胚性幹細胞(ES細胞)から"膵臓細胞"を効率よく作製に成功!/当誌 2013.12.17
⑦ iPS細胞から"赤血球量産"の技術開発(京大)!遺伝子操作での"不死化赤血球前駆細胞"!/当誌 2013.12.07
⑧ ヒトのiPS細胞から肝臓の元となる「小さな肝臓」を作りマウスの体内での機能に成功!/当誌 2013.07.05
⑨ "iPS細胞"を使った"加齢黄斑変性"治療の臨床研究(続報) "加齢黄斑変性"が最初の理由!/当誌 2013.06.29
⑩ "新型細胞"使い糖尿病改善!膵臓の"膵島細胞"×増殖力持つ"幹細胞"!再生医療分野!/当誌 2013.05.30
⑪ iPS 臨床研究 "パーキンソン病"でも! ぐるぐると回っていたネズミがまっすぐ歩けた!/当誌 2013.03.02
⑫ "iPS細胞"使い髪の毛のもと/器官="毛包"を作り出す実験に成功!薄毛脱毛治療に応用!?/当誌 2013.01.25
各々の研究成果の進展度合いはさまざまであるが、いずれも来たるべき "臨床試験" に向けた研究に余念がないようである。
そして、今回注目する記事は、人が "発話" する際に欠かせない "声帯" に関わる "声帯粘膜細胞" の作製である。これを、"iPS細胞" から作製したという。
<福島医大医学部耳鼻咽喉科学講座の今泉光雅助教(36)は、人間由来のヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って声帯粘膜と同様の性質を持つ細胞を作製する実験に成功した。マウスのiPS細胞による組織再生技術を応用し、人間の声帯の再生治療に向けた新たな一歩を踏み出した。将来的に再生が可能になれば、拒絶反応なしに声帯を修復できる>
<今泉氏は、ヒトiPS細胞の研究で世界的な成果を挙げている米国のウィスコンシン大で信頼性の高いヒトiPS細胞の提供を受け、培養して300万個まで増やした。人間の声帯から採取した「線維芽細胞」と混ぜ合わせ、分化・誘導を促した。
線維芽細胞は、人体内で組織が損傷を受けた際に損傷部に移動してコラーゲンを作り、修復を助ける性質を持つ。今泉氏はこの性質に着目し、活用することを発想。培養の過程でヒトiPS細胞を声帯の粘膜細胞と同様の性質を持つ細胞に変化させることに成功>
<iPS細胞で再生した組織は、移植しても原則的に拒絶反応がないとされる。将来的にiPS細胞による声帯再生が実現すれば、移植して声を出しやすくするなど患者の日常生活の質向上に結び付くと期待される> とある。
"今泉氏による独自の着眼点!" だとされる <今泉氏は、......人間の声帯から採取した「線維芽細胞」と混ぜ合わせ、分化・誘導を促した。
線維芽細胞は、人体内で組織が損傷を受けた際に損傷部に移動してコラーゲンを作り、修復を助ける性質を持つ。今泉氏はこの性質に着目し、活用することを発想。培養の過程でヒトiPS細胞を声帯の粘膜細胞と同様の性質を持つ細胞に変化させることに成功> という点が実に素晴らしい!
ヒトiPSで声帯粘膜細胞 福島医大の今泉助教/福島民報/2014.03.16 - 09:03
福島医大医学部耳鼻咽喉科学講座の今泉光雅助教(36)は、人間由来のヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って声帯粘膜と同様の性質を持つ細胞を作製する実験に成功した。マウスのiPS細胞による組織再生技術を応用し、人間の声帯の再生治療に向けた新たな一歩を踏み出した。将来的に再生が可能になれば、拒絶反応なしに声帯を修復できる。最先端技術を身近な医療の向上に役立てる研究として注目される。
ヒトiPSで声帯粘膜細胞 福島医大の今泉助教/福島民報/2014.03.16 - 09:03
今泉氏は、ヒトiPS細胞の研究で世界的な成果を挙げている米国のウィスコンシン大で信頼性の高いヒトiPS細胞の提供を受け、培養して300万個まで増やした。人間の声帯から採取した「線維芽細胞」と混ぜ合わせ、分化・誘導を促した。
線維芽細胞は、人体内で組織が損傷を受けた際に損傷部に移動してコラーゲンを作り、修復を助ける性質を持つ。今泉氏はこの性質に着目し、活用することを発想。培養の過程でヒトiPS細胞を声帯の粘膜細胞と同様の性質を持つ細胞に変化させることに成功した。
今泉氏は昨年6月までの2年間、ウィスコンシン大に福島医大から派遣された。実験は派遣期間中の一昨年春に成功した。研究成果をまとめた論文の内容が認められ、昨年末には米国の専門学術誌に掲載された。
今泉氏が所属する福島医大耳鼻咽喉科学講座(大森孝一教授)は、京都大などと連携してマウスiPS細胞など各種細胞による気管組織の再生実験に約十年前から取り組んできた。今泉氏は、講座で蓄積されてきたマウスiPS細胞の培養技術を生かし、マウスより取り扱いが難しいとされているヒトのiPS細胞の分化・誘導に挑戦した。
人間の声帯の手術は、喉頭がんや、声帯ポリープなどの治療で行われるが、声帯組織を切除すると、手術前と同様に発声するのが難しくなるケースがある。iPS細胞で再生した組織は、移植しても原則的に拒絶反応がないとされる。将来的にiPS細胞による声帯再生が実現すれば、移植して声を出しやすくするなど患者の日常生活の質向上に結び付くと期待される。
今泉氏は昨年7月に福島医大に復帰し、ヒトiPS細胞で再生した細胞を動物の体内に移植して組織化させる実験に入っており、動物実験を重ねて再生技術確立を目指す。「これからもヒトiPS細胞を用いた実験を進め、早い時期に臨床に生かせるように努力したい」と意気込んでいる。
"iPS細胞(人工多能性幹細胞)" に関する研究は、その基本的アプローチを踏まえつつ、"どのように応用するのか" という "応用編" へと踏み込んでいる、そんな現状を垣間見る思いがする...... (2014.03.18)
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