相変わらず "認知症/アルツハイマー型認知症" の話題が人々の関心を集めている。
当誌でも随時このテーマの記事をフォローし続けている。
◆ 最新記事参照 アルツハイマー型認知症の進行を既存薬(脳梗塞予防薬「シロスタゾール」)内服で抑制!( 当誌 2014.02.28 )
さて、"認知症/アルツハイマー型認知症" は、言うまでもなく "もの忘れ"/"記憶減退" が最大の特徴だとされる病気である。
そして、"記憶" という能力と、実は深い関係のある能力が動物には備わっている。
その能力とは、"嗅覚" なのである。
<あえて、"臭い、香り" にこだわるのは、これらが "記憶" を呼び覚ます重要な刺激だと実感するからである。この点はかねてより体感的に気づいていたが、どうも少なからぬ脳科学者たちもこの事実をあちこちで指摘しているようだ。
記号情報で飛躍的発展を遂げた人間も、動物としての基本構造は、今なおしっかりと内蔵しているわけであるが、その動物たちにとっては、"嗅覚" は重要な "生存ツール" のはずであり、その関係から "嗅覚" にまつわる "記憶" はかなり刻印が深いのではなかろうかと推測できる。......>( "情報社会" の基本構造に楯突く "嗅覚" 情報という "ダサイ(クサイ)" 課題( 当誌 2010.02.27 ) )
今回は、この "記憶と嗅覚" という観点から、最近、注目度が増している "認知症とアロマセラピー" という話題に目を向けてみたい。
今回取り上げたい記事は、下記引用サイト記事二点、【 引用記事 1 】 : 香りの力で認知症を予防する 鳥取大学大学院医学系研究科保健学専攻・病態解析学分野 浦上克哉/鳥取大学発ベンチャー 株式会社ハイパーブレイン/更新日 2010.03.21 と、 【 引用記事 2 】 : 認知症予防に対する アロマセラピーの可能性 鳥取大学医学部保健学科生体制御学 助教谷口美也子 教授 浦上克哉/鳥取大学/2011.05.09 である。
まず、注目すべきは次の叙述であろう。
<アルツハイマー型認知症はもの忘れから始まるといわれているが、実は嗅覚障害が先に起こる。最初に臭神経が障害され、次いで海馬の神経細胞が障害される。そこで嗅覚障害はあるが、もの忘れはまだないという状態で香りによる嗅覚刺激を行なえば認知症を予防できる可能性が考えられる>
そして、<アロマセラピー> では、<香りによる嗅覚刺激> として、<アロマオイル> が、<神経細胞を活性化> させるものと、<神経細胞の癒し効果> があるものとして二通りが援用される、というのである。その結果、
<アルツハイマー型認知症ではアロマセラピーにより顕著に改善効果がみられた> とある。
なお、図表「匂いを感じるメカニズム」(【 引用記事 2 】)は、"嗅覚/嗅神経" と、脳での "記憶" を司る部位(海馬、扁桃体、視床下部、大脳辺縁系)とが緊密な連携プレーを果たしている様子を彷彿として伝えている。
いずれにしても、"記憶" と "匂い" とは不可分の関係にありそうだ。ちょいと、動物たちの驚くべき習性を思い浮かべれば、十分に納得できるはずだ......。
【 引用記事 1 】
香りの力で認知症を予防する 鳥取大学大学院医学系研究科保健学専攻・病態解析学分野 浦上克哉/鳥取大学発ベンチャー 株式会社ハイパーブレイン/更新日 2010.03.21
認知症の中で一番頻度が高いのがアルツハイマー型認知症である。アルツハイマー型認知症はもの忘れから始まるといわれているが、実は嗅覚障害が先に起こる。最初に臭神経が障害され、次いで海馬の神経細胞が障害される。そこで嗅覚障害はあるが、もの忘れはまだないという状態で香りによる嗅覚刺激を行なえば認知症を予防できる可能性が考えられる。
香りを発する物質としてアロマオイルを用いるが、どの種類を用いるかは文献から有効性が期待されるオイルを絞込み詳細な検討を行なった。その結果、レモンとローズマリーの配合が最も神経細胞を活性化させることが分かった。これらは昼間に使用して神経細胞を活性化し、また夜間には夜用アロマということで真正ラベンダーとスイートオレンジの配合で使うと神経細胞の癒し効果があることも見出した。アルツハイマー型認知症ではアロマセラピーにより顕著に改善効果がみられた。
これまでに我々の研究グループはアルツハイマー型認知症で嗅覚障害があり、嗅覚機能検査が早期診断に役立つことを報告していたが、残念ながら予防や治療に結びついていなかった。研究成果が予防や治療に直接結びつくことが臨床研究者としては最高の喜びである。しかし、近年の不況のあおりでこのアロマセラピーを商品化しようとした際、なかなか企業に参入して頂けなかった。そこで、鳥取大学発ベンチャー企業(株式会社ハイパーブレイン)を平成21 年7月2 日に立ち上げを行い、商品の製造販売が可能となった。現在昼用アロマと夜用アロマとして製品化し、大変好評を頂き順調に販売されている。多くの方に活用して頂けることを期待している。参考文献
① 浦上克哉:これでわかる認知症診療、南江堂、2009.
② 神保太樹、浦上克哉:くすりに頼らない認知症治療Ⅱ、第4 章アロマセラ
ピー、ワールドプランニング、2009.
③ 浦上克哉:認知症、よい対応、わるい対応、日本評論社、2010.
【 引用記事 2 】
認知症予防に対する アロマセラピーの可能性 鳥取大学医学部保健学科生体制御学 助教谷口美也子 教授 浦上克哉/鳥取大学/2011.05.09
※ PDF解説画面 29ページ からの抜粋。
( ※引用者注 ―― PDF解説画面 29ページ からの抜粋。)
考えてみれば、都市生活者にとっての空間からは、"匂い" という感覚刺激物が極力排除されてしまい、その分、人間側の "嗅覚" は否応なく "開店休業(?)" 状態とされてしまっているのかもしれない。
この点は、免疫機能/アレルギー症状の分野での「衛生仮説」に一脈通じるものを感じたりする。
◆ 参照
<免疫の働くバランスを巡っては「衛生仮説」と呼ばれる考え方がある。先進国では衛生環境が向上し、感染症が減った。病原体にさらされることが減り、獲得免疫の働く機会も減ってしまった。それが、アレルギー疾患の増えた原因ではないかというものだ。......>( 今「免疫療法」は、スギ花粉症も食物アレルギーも"根治を目指す"戦略へと踏み込む?!( 当誌 2014.02.11 ) )
生活空間における "匂い" の "復権" を期待する代わりに、"アロマセラピー" が登場して "認知症" 予防策が講じられている、と考えると "成程感" が強まったりするのだが...... (2014.03.04)
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