"再生医療/移植手術" 分野の進展は目覚ましいものがある。いわゆる "幹細胞" に基づく培養技術をはじめとする最先端の技術( "3Dプリント" 技術など)が、想像を超えた研究成果を生み出しつつあるようだ。
もちろん、研究成果のすべてが臨床の場で結実しているわけではないにせよ、"再生医療/移植手術" への切実なニーズを持つ人々に対して夢のような可能性を提示している。
下記引用サイト記事 : 身体パーツの培養ラボを訪ねて:幹細胞と3Dプリントでつくる鼻、耳、心臓/WIRED/2014.04.11 - FRI は、そんな驚くべき最先端の状況を報じている。
<アレクサンダー・セイファリアン博士の幹細胞研究室/ 人工の鼻、耳、気管など......培養されたこれらの身体部位は、交通事故に遭った人や負傷兵などの身体損傷を補うのに役立てられる。今後は、主要な内臓器官がこの技術によって作られる可能性もある/ セイファリアン博士らのチームがこれらの部位を作製するのに用いている手法は、幹細胞研究と3Dプリンティングを組み合わせ、そこにナノテクノロジーを少々加えたもの/ 第一のステップでは、患者のCTスキャン画像を基に、3Dプリンティングを使って、必要な身体部位の型をガラスで作製する。次に、セイファリアン博士が特許を有するナノコンポジット材料(1~100ナノメートルの大きさに粒子化した素材を、別の素材に練りこみ分散させた複合材料)をガラス型に流し込み、塩などを加える/ 固まったら、あとは型を水に浸し、塩を溶かすだけでいい。そうすると、微細な蜂の巣状の素材でできたスキャフォールド(足場)が完成する。これが、幹細胞が成長するための土台となる/ 次はいよいよ、肝心の幹細胞を患者本人から採取する番だ。以前は切開手術が何度も必要だったが、現在は腹部を一度切開するだけでいい。そこで採取した脂肪細胞をスキャフォールドに加える/ あとは、この「建設現場」を適切な環境に置いて成長させる。その後、患者の皮下に移植して4~8週間待つだけだ(培養された耳や鼻には皮膚がないため、いったん前腕の皮膚下に移植して、皮膚で覆われるのを待つ)> とある。
ただし、問題にも直面しているとのことである。
<しかし、この段階に来てチームは足止めをくらっている。培養した耳や鼻を、しかるべき場所に移植しなおすためには、規制当局の認可が必要だからだ/ 研究チームは2013年、癌で鼻を失った男性の幹細胞などを使って、世界初の人工鼻として移植されるパーツを作製した。しかし、認可が下りるまでは、それが現在ある場所(患者の腕)から、本来あるべき場所(患者の顔)へ移動させることはできない> とあり、また、<現在までに約1,000万ポンド(約17億円)を費やしたこの研究成果> と<問題は資金が得られるかどうかだ> というシビァな課題にも遭遇しているとか......。
身体パーツの培養ラボを訪ねて:幹細胞と3Dプリントでつくる鼻、耳、心臓/WIRED/2014.04.11 - FRI
事故や病気で人工の鼻、耳、気管などを必要とする患者向けに、患者自身の幹細胞からそれらを培養する技術に取り組む英国の研究者を紹介。
TEXT BY CHRIS HIGGINS
IMAGES BY DAVID BISHOP, UCL
TRANSLATION BY TOMOKO TAKAHASHI/GALILEO
WIRED NEWS(UK)
ロンドン北西部にある病院。人間の鼻、耳、気管が、バラバラの状態で棚や台の上に置かれている。といっても、誰かの体から切り取られたわけではない。人工的に作製されたものであり、これらの器官や組織を必要とする患者に移植されるのを待っているところだ。
アレクサンダー・セイファリアン博士の幹細胞研究室。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのロイヤル・フリー病院で培養されたこれらの身体部位は、交通事故に遭った人や負傷兵などの身体損傷を補うのに役立てられる。今後は、主要な内臓器官がこの技術によって作られる可能性もある。
セイファリアン博士らのチームがこれらの部位を作製するのに用いている手法は、幹細胞研究と3Dプリンティングを組み合わせ、そこにナノテクノロジーを少々加えたものだ。
第一のステップでは、患者のCTスキャン画像を基に、3Dプリンティングを使って、必要な身体部位の型をガラスで作製する。次に、セイファリアン博士が特許を有するナノコンポジット材料(1~100ナノメートルの大きさに粒子化した素材を、別の素材に練りこみ分散させた複合材料)をガラス型に流し込み、塩などを加える(これは、素材に微細な穴をあけ、細胞を保持しやすくするためだ)。
固まったら、あとは型を水に浸し、塩を溶かすだけでいい。そうすると、微細な蜂の巣状の素材でできたスキャフォールド(足場)が完成する。これが、幹細胞が成長するための土台となる。
次はいよいよ、肝心の幹細胞を患者本人から採取する番だ。以前は切開手術が何度も必要だったが、現在は腹部を一度切開するだけでいい。そこで採取した脂肪細胞をスキャフォールドに加える。
あとは、この「建設現場」を適切な環境に置いて成長させる。その後、患者の皮下に移植して4~8週間待つだけだ(培養された耳や鼻には皮膚がないため、いったん前腕の皮膚下に移植して、皮膚で覆われるのを待つ)。
■ 商業化されるまで、あと何年?
しかし、この段階に来てチームは足止めをくらっている。培養した耳や鼻を、しかるべき場所に移植しなおすためには、規制当局の認可が必要だからだ。
研究チームは2013年、癌で鼻を失った男性の幹細胞などを使って、世界初の人工鼻として移植されるパーツを作製した。しかし、認可が下りるまでは、それが現在ある場所(患者の腕)から、本来あるべき場所(患者の顔)へ移動させることはできない。
2005年から現在までに約1,000万ポンド(約17億円)を費やしたこの研究成果を、ほかにも何か応用できそうかという質問に対し、セイファリアン博士は次のように答えた。「もちろんだ。われわれはすでに肝臓と心臓の培養に着手している。問題は資金が得られるかどうかだ」。
「人工気管や、心臓バイパス手術用の人工血管、ステント(血管や気管、食道などを管腔内部から広げる医療機器)、顔器官(耳や鼻)の作成技術が、3年で商業化されることを願ってい」。
※ セイファリアン博士は2011年、人工骨格を患者自身の幹細胞で覆った人工気管を培養。スウェーデンのカロリンスカ大学病院で行われた移植手術に参加している。ほかにも、培養された人工涙管や人工動脈を移植する手術を行っている。
上記記事における "再生" 技術は、"整形" 的分野を中心としながらも、"主要な内臓器官" の "再生" にまで迫りつつあるのだという。しかし、これも "幹細胞" に基づく培養技術や、"iPS 細胞" 技術のさらなる進展によって可能性を次々に切り拓くことになるのであろう...... (2014.04.13)
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