誰もが "無用の長物" だと思ってやまなかった "盲腸(虫垂)" が、この期に及んで、"免疫システムの上で重要!" だと分かったという。
しかも、"腸管免疫系" システムに欠かせない "腸内細菌" のバランス維持に欠かせない存在だというから驚きである。
"腸内細菌" のあり様が、ヒトの "免疫力" の大半を占めている点は、昨今では、大きな注目を集めている事実だ。
◆ 参照
○ <"免疫力" の観点から、"腸" という臓器に着目し続けている。ヒトの "免疫力" の "60%" が、"腸" における "腸管免疫系" によって担われているからである>( 今注目の"免疫力"の本命:"腸"という臓器!"腸は第2の脳"どころか脳より賢い腸に従え!/当誌 2014.03.07 )
○ <ヒトの腸管は栄養成分を消化・吸収する役割のほか、食べ物とともに侵入する病原菌などから身体を守る免疫機能も担っている。抗体の6割を腸管でつくる人体最大の免疫器官といわれる。しかも、数百種類、100兆個もの細菌が常在、生息することが知られる。その大部分は大腸に棲[す]む。有害物質を作るウエルシュ菌、病原性のないビフィズス菌、乳酸菌やバクテロイデス、大腸菌など多種多様である。これらの腸内細菌が腸管免疫系に関与することが明らかにされてきた>( 免疫力!腸内細菌とヨーグルト!ヒトの腸管は抗体の6割をつくる人体最大の免疫器官!/当誌 2014.02.19 )
既に "盲腸炎" で "盲腸" を摘出してしまった人には気の毒なのであるが、下記引用サイト記事 : 無用の長物と考えられていた虫垂の免疫学的意義を解明~炎症性腸疾患の制御に繋がる新たな分子機構~/大阪大学・科学技術振興機構(JST)/2014.04.10 は、新たに判明したその研究結果をつぎのように報じている。
<大阪大学 大学院医学系研究科 感染症・免疫学講座(免疫制御学)/免疫学フロンティア研究センターの竹田 潔 教授らのグループは、私たちの体で不必要な組織と考えられていた虫垂に存在するリンパ組織が、粘膜免疫で重要な役割を果たすIgAの産生に重要な場であり、腸内細菌叢の制御に関与していることを突き止めました/ 本研究では、虫垂リンパ組織が大腸に動員されるIgA陽性細胞を産生する場であることを明らかにしました。さらに、虫垂がなくなると、大腸の腸内細菌叢のバランスが崩れることも明らかにしました/ IgAは腸内細菌叢の維持に重要な抗体であることから、虫垂は腸内細菌叢のバランス異常によって発症する炎症性腸疾患の制御にも関わる重要な組織であると考えられます。今後、虫垂を標的とした炎症性腸疾患への新たな治療法の開発が期待されます/ 今後、虫垂リンパ組織の重要性を念頭においた腸管免疫系の制御法が開発されることにより、炎症性腸疾患や腸管感染症の治療に繋がることが期待されます> とある。
【 引用記事 】
無用の長物と考えられていた虫垂の免疫学的意義を解明~炎症性腸疾患の制御に繋がる新たな分子機構~/大阪大学・科学技術振興機構(JST)/2014.04.10
大阪大学 大学院医学系研究科 感染症・免疫学講座(免疫制御学)/免疫学フロンティア研究センターの竹田 潔 教授らのグループは、私たちの体で不必要な組織と考えられていた虫垂に存在するリンパ組織が、粘膜免疫で重要な役割を果たすIgA 注1)の産生に重要な場であり、腸内細菌叢 注2)の制御に関与していることを突き止めました。本研究グループは、実験的に虫垂リンパ組織を欠如したマウスを作成したところ、このマウスでは大腸のIgA産生細胞の数が減少し、大腸の腸内細菌叢が変化することを見いだしました。IgAは腸内細菌叢の維持に重要な抗体であることから、虫垂は腸内細菌叢のバランス異常によって発症する炎症性腸疾患 注3)の制御にも関わる重要な組織であると考えられます。今後、虫垂を標的とした炎症性腸疾患への新たな治療法の開発が期待されます。
本研究成果は、2014年4月10日(英国時間10時)に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版で公開されます。
(上図説明) 虫垂リンパ組織は、大腸および小腸に動員されるIgA産生細胞を作り出し、大腸の腸内細菌叢の維持に必要なリンパ組織であることが明らかになった。
<用語解説>
注1 IgA
免疫グロブリン(抗体)の一種。消化器や呼吸器などの粘膜組織では、IgAが抗体の大半をしめており、粘膜組織での免疫応答の主役となる。IgGなどの抗体は細菌に会合すると免疫応答を活性化するが、IgAは細菌に会合しその運動性を弱める。
注2) 腸内細菌叢
腸内には100種類以上、100兆個以上の腸内細菌が生息しており、宿主であるヒトや動物の栄養分の一部を利用しながら、他の腸内細菌とバランスを取って一種の生態系を形成していることから、この生態系を腸内細菌叢と呼ぶ。
注3) 炎症性腸疾患
免疫細胞の異常と腸内細菌叢の変化が相まって発症する免疫疾患で、潰瘍性大腸炎やクローン病などがある。
<本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)>本研究では、虫垂リンパ組織が大腸に動員されるIgA陽性細胞を産生する場であることを明らかにしました。さらに、虫垂がなくなると、大腸の腸内細菌叢のバランスが崩れることも明らかにしました。
近年、腸内細菌叢の変化に伴い、腸管感染症に対する感受性が亢進することや、炎症性腸疾患が発症することが報告されています。IgAは、腸内細菌叢のバランスの維持に極めて重要な抗体です。本研究により、長年ないがしろにされてきた虫垂が、大腸に動員されるIgA陽性細胞の産生を司る場であることが明らかになりました。虫垂の切除による炎症性腸疾患発症感受性の変化も報告されています。今後、虫垂リンパ組織の重要性を念頭においた腸管免疫系の制御法が開発されることにより、炎症性腸疾患や腸管感染症の治療に繋がることが期待されます。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。/)
それにしても、これまで "無用の長物" だとばかり考えられてきた "盲腸(虫垂)" が、"腸内細菌叢の制御/バランス維持" において重要な役割を果たしていたとは奇想天外な事実である。
指し当たって、ヒトの身体には "無用な臓器はない!" ということになるのだろうが、それだけではなく、"IgA陽性細胞" が "腸管免疫系システム" で果たすより積極的な意義の解明が待ち望まれるところだ...... (2014.04.12)
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