前回(昨日)は、<がんの免疫療法の一種、ペプチドワクチン療法> という "免疫アプローチ" に基づく "がん治療法" に注目した。"脱副作用" という "第4のがん治療法" であった。
<がんペプチドワクチン療法は、がんに対する特異的な免疫力を高めてがん細胞をやっつける治療法。がん細胞の表面にはがん特有のペプチド(特定のアミノ酸化合物)が目印として現れるため、このペプチドを人工的に合成して体内に投与することで、ペプチドを目印として攻撃するキラーT細胞(CTL)が他の正常な細胞を傷つけることなく、がんのみを攻撃する。患者自身の免疫力を高めるため、副作用が少なく、近い将来、第4の治療法として確立されることが期待されている> ( "がん免疫療法(第4の治療法)"の一種:"がんペプチドワクチン療法"!臨床試験進展中!/当誌 2014.04.03 )
上記のとおり、この療法の眼目は、<がん特有のペプチド(特定のアミノ酸化合物)を人工的に合成して体内に投与すること> にある、と理解できる。
いわば、患者の体内に存在する既存の "免疫細胞(キラーT細胞)" を "けしかける(?)" ための "目印" を体内に投与することに力点があり、何らかの "免疫細胞" を直接増やしたり強化するわけではなさそうである。
これに対して、 今回注目する記事/下記引用サイト記事 1 : メディネットなど、人工がん抗原ペプチドによる樹状細胞ワクチン療法を提供/マイナビニュース/2014.04.02 は、その名、"樹状細胞ワクチン療法" が示すとおり、"免疫細胞" である "樹状細胞" 自体を、その働きを強化した上で "ワクチン" として患者に投与する、というものである。
<人工がん抗原ペプチド「MACS GMP PepTivator WT1(WT1ぺプチベータ)」を用いた樹状細胞ワクチン療法/ WT1ペプチドは有望ながん抗原ペプチドと考えられており、手術などで摘出したがん組織がない場合でも、同ペプチドを代用し、樹状細胞ワクチン療法として利用/ 今回、提供が開始されたWT1ペプチベータを用いた樹状細胞ワクチン療法は、これまで白血球の型(HLA型)によって治療が提供できなかった患者に対しても治療が提供できるほか、CTL(キラーT細胞)を活性化、増強するヘルパーT細胞を増やすことで、治療のさらなる有効性向上が期待される治療法> とある。
この具体的な仕組みについては、下記引用サイト記事 2 : 免疫細胞治療の仕組み/免疫細胞治療の種類/メディネット MEDI+NET の"最下段図表" が示している。
その働きが強化された "樹状細胞" 自体が、"注射" などで体内に戻されてく手順が良く分かる。
こうした "免疫細胞" 自体を "体外" で "培養/増強" して、再び "体内" に戻すという "がん免疫療法" 手法に関しては、 "iPS細胞" 由来かどうかを超えて、以下の記事の手法でも共通している。
◆ 参照
○ ( "iPS細胞でがん免疫療法"!京大発ベンチャーが着手!いよいよ"実用化のステージ"か!/当誌 2014.03.01
○ "iPS細胞"技術:"がん免疫療法"への応用目指し着実な進展!NKT細胞ほか免疫細胞培養!/当誌 2014.01.27 )
どの "がん免疫療法" が良いのかは、いずれもが "実績づくりのプロセスの段階" にあるため、にわかには判断し難いようである。(しかも、"費用" の問題も絡んでいる......)
こうした判断への材料の一つとなるかと考え、下記引用サイト記事 3 : 樹状細胞ワクチン療法情報 ~医療関係者の皆様へ~/テラ株式会社/ で、<がん免疫療法の歴史>、<『樹状細胞ワクチン療法』と『ペプチドワクチン療法』の比較> という記事を併せて掲載しておくこととした。
【 引用記事 1 】
メディネットなど、人工がん抗原ペプチドによる樹状細胞ワクチン療法を提供/マイナビニュース/2014.04.02
メディネットは4月1日、同社の契約医療機関である瀬田クリニックグループが、人工がん抗原ペプチド「MACS GMP PepTivator WT1(WT1ぺプチベータ)」を用いた樹状細胞ワクチン療法の提供を開始したことを発表した。
WT1抗原はさまざまながんに発現していることから、WT1ペプチドは有望ながん抗原ペプチドと考えられており、手術などで摘出したがん組織がない場合でも、同ペプチドを代用し、樹状細胞ワクチン療法として利用できることから、多くのがん患者に提供されている。
今回、提供が開始されたWT1ペプチベータを用いた樹状細胞ワクチン療法は、これまで白血球の型(HLA型)によって治療が提供できなかった患者に対しても治療が提供できるほか、CTL(キラーT細胞)を活性化、増強するヘルパーT細胞を増やすことで、治療のさらなる有効性向上が期待される治療法だという。
また、WT1ペプチベータを用いた樹状細胞ワクチン療法、ならびに従来のWT1ペプチドを用いた樹状細胞ワクチン療法を実施する場合、CTLの攻撃目標となるWT1抗原が、がん細胞に出ているかどうかを調べる検査が必要であり、大学病院などの臨床試験では、治療の適応を決定する際に必ず行われる検査ながら、民間医療機関で免疫細胞治療が提供される場合には、検査を実施し、適応を判断するケースは限られていたとのことで、瀬田クリニックグループでは、攻撃目標であるWT1の発現状況を調べる検査を実施し、治療前に適応を判断することで、患者に対し、より効果的な治療を提供していく方針と説明している。
なお、今回のWT1ペプチベータは独ミルテニーバイオテクより提供を受けるもので、メディネットが解析研究を実施し、WT1ペプチベータを用いた樹状細胞ワクチン療法が安全に実施可能であること、ならびに抗腫瘍効果を発揮するCTLを誘導することがすでに確認されているという。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
【 引用記事 2 】
免疫細胞治療の仕組み/免疫細胞治療の種類/メディネット MEDI+NET/
( ※引用者注 ―― 図表のみの引用です。)
【 引用記事 3 】
樹状細胞ワクチン療法情報 ~医療関係者の皆様へ~/テラ株式会社/
『樹状細胞ワクチン療法』と『ペプチドワクチン療法』の比較
WT1ペプチドをはじめ、がん抗原となる様々なペプチドが、より効果的なペプチドワクチン療法の開発のために使用されています。がん抗原となるペプチドを患者に投与して、体内でがん抗原を発現しているがん細胞に対して傷害活性を持つT細胞や、B細胞からがん細胞をターゲットとする抗体産生を誘導し、多方面からがんを攻撃させることが、ペプチドワクチン療法の目的です。したがって、樹状細胞ワクチン療法とペプチドワクチン療法において、期待される免疫反応の作用機序は同一と考えられます。しかしながら、ペプチドワクチン療法では、in vivo(体内)で抗原提示細胞にがん抗原であるペプチドを提示させる必要がありますが、免疫応答を最も強力に惹起できる樹状細胞から提示される保証はなく、また樹状細胞から提示されたとしても、その成熟状態によっては免疫応答が負に制御されてしまう可能性もあります。その一方で、樹状細胞ワクチン療法では、in vitro(体外)でがん抗原であるペプチドを提示する樹状細胞を作製することが出来ます。一般的に進行がんの患者は、体内での免疫反応が起きにくいと考えられます。樹状細胞ワクチン療法では、樹状細胞の調製を体外で行うため、患者の体内環境の影響を最小限にして、品質の安定した樹状細胞ワクチンを作製することが出来ます。このような樹状細胞を患者に投与するため、樹状細胞ワクチン療法では、がんに対する免疫反応をより効率的に誘導出来ると考えられます。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
少なくとも、"がん治療" の "三大療法"(除去手術/抗がん剤/放射線)から一歩踏み出して進展し続ける "がんの第4の治療法" と目される "がん免疫療法"/"がん免疫細胞療法" が、次第に "実績" を残し始めているのは事実だ...... (2014.04.04)
コメントする