「この閉塞した組織は "若い血" による "若返り" が不可欠だ!」などと "比喩" でささやかれることはしばしば耳にするわけだが、まさか "科学" の領域にまで "こうした言い回し"が登場してくるとは、正直言って驚きである。
確かに、"血液中の造血幹細胞" は "老化" とともに "減少/枯渇" するとのことであり、"血液" もまた "老化" によって激しく変化することは、昨日の記事で注目したばかりであった。
◆ 参照 当誌での"造血幹細胞" に関する記事
○ <年齢とともに、消耗して死んだ組織の交替や再生の能力が使い尽くされるのだ。造血幹細胞のような幹細胞の、老化した組織を補う再生能力がなくなる/ 死の少し前にこの女性に対して行われた血液分析 血液中を循環する白血球が、わずかふたつの幹細胞のみから生み出されていた 大部分は、彼女の長い生涯の間に死滅していた/ 白血球のテロメア──染色体の末端部で、その長さは細胞の老化とともに減少する──が、ほとんど分裂しない神経細胞のものよりも約17分の1だった> ( 加齢は"幹細胞"のストックを減少/枯渇させ、古い組織の代替を不可能とさせる!寿命!/当誌 2014.05.08 )
そこから、"オイル交換" さながらに浮上しているのが、"若い血液との交換" というような取って付けたような視点、アプローチ!
と言っても、実現されたという話題ではない。"マウスでの実験というレベル" でのニュースである。
下記引用サイト記事 : 若い血液との交換で若返りが可能?/NATIONAL GEOGRAPHIC/2014.05.06 は、"マウスでの実験というレベル" でのニュースではありながら、そのアプローチの可能性を、"3つの研究" を踏まえながら解説し、報告している。
<記憶、筋力、持久力、そして嗅覚の若返りを実証する 3つの研究 が、科学誌「Nature Medicine」と「Science」に同時に発表された。3論文 は共に、若い血液が年をとった動物に総体的再生効果をもたらす可能性を示唆している。また若い血液は、心臓肥大やアルツハイマー病のような加齢による症状に関連した認知機能の低下を好転するのに役立つかもしれない/ ■ 「Nature Medicine」誌に発表された1つ目の研究 18カ月のマウスと3カ月のマウスの循環系が接合......年老いたマウスの脳内でより多くの神経細胞間の新しい結合が確認......若い血液で元気になったマウスの脳内では、神経可塑性(経験に応じて脳内を再編成する能力)に関連したタンパク質がより多く生成......実験結果と妥当な循環要因がタンパク質であるということ/ ■ 「Science」誌に掲載された2つ目の研究......若いマウスと年老いたマウスの循環系を結合し、あるいは若い血液から採取した特定のタンパク質を年老いたマウスに注射......その実験によって古い筋幹細胞のDNAが修復され、ミトコンドリアと呼ばれる筋線維と細胞構造がより健康で若々しいものに変化し、マウスの握力が向上......実験で使用されたGDF11と呼ばれるたんぱく質......GDF11が特に骨格筋や脳といった組織にも同様の若返り効果をもたらすことが証明された/ ■ 「Science」誌に発表された3つ目の研究......若いマウスから年老いたマウスへの GDF11 の移行を試みた。......若い血液が脳室下帯(嗅覚に関連したマウスの脳内領域)の循環を高め、新しい神経細胞の生成が活性化......新しい細胞が嗅球に移動して成長すると年老いたマウスの嗅覚は改善された......血流の増加は嗅覚領域だけでなく脳全体でも観察された......記憶と学習の向上を説明するのにも役立つ> とある。
ただし、研究者からは以下のような指摘がなされていることに注意しておきたい。
<高齢者に若い人の血液を注ぐ"輸血の卸売"を勧めるには時期尚早だ> と......。
若い血液との交換で若返りが可能?/NATIONAL GEOGRAPHIC/2014.05.06
Jennifer Frazer
for National Geographic News
May 6, 2014記憶、筋力、持久力、そして嗅覚の若返りを実証する 3つの研究 が、科学誌「Nature Medicine」と「Science」に同時に発表された。3論文 は共に、若い血液が年をとった動物に総体的再生効果をもたらす可能性を示唆している。また若い血液は、心臓肥大やアルツハイマー病のような加齢による症状に関連した認知機能の低下を好転するのに役立つかもしれない。
「Nature Medicine」誌に発表された1つ目の研究 は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のサウル・ヴィルダ(Saul Villeda)氏とスタンフォード大学のトニー・ウィス・コレイ(Tony Wyss-Coray)氏によって行われた。
実験では、腹腔を縫い合わせる手術によって18カ月のマウスと3カ月のマウスの循環系が接合された。時間の経過とともに、若いマウスと繋がった年老いたマウスの脳内でより多くの神経細胞間の新しい結合が確認された。また若い血液で元気になったマウスの脳内では、神経可塑性(経験に応じて脳内を再編成する能力)に関連したタンパク質がより多く生成された。
さらに研究者らは、若いマウスの血漿を年老いたマウスに直接注射する実験も試みた。血漿を注射されたマウスは、されなかったものより水迷路に隠された休憩台の見つけ方をよく記憶していた。また彼らは足に軽い電気ショックを受ける部屋をより正確に記憶していた。
だが、注射前に血漿を温めた場合、そのような効果は見られなかった。タンパク質は温められると不活性化するため、実験結果と妥当な循環要因がタンパク質であるということが一致する。
「Science」誌に掲載された2つ目の研究 で、ハーバード大学の研究チームは若いマウスと年老いたマウスの循環系を結合し、あるいは若い血液から採取した特定のタンパク質を年老いたマウスに注射した。ハーバード大学の幹細胞および再生生物学の教授エイミー・ワグナー(Amy Wagers)氏と論文の主要著者の1人によると、その実験によって古い筋幹細胞のDNAが修復され、ミトコンドリアと呼ばれる筋線維と細胞構造がより健康で若々しいものに変化し、マウスの握力が向上し、さらにトレッドミルでより長い時間走るようになった。
実験で使用されたGDF11と呼ばれるたんぱく質は、心不全の兆候である加齢に伴った心臓肥大を減少させることが既に知られている。だがワグナー氏は、新しい研究によってGDF11が特に骨格筋や脳といった組織にも同様の若返り効果をもたらすことが証明されたと述べる。
それは、筋力低下、神経変性、心臓病を含む加齢による様々な機能不全を対象とした薬の開発が可能であることを意味していると同氏は言う。
同じく 「Science」誌に発表された3つ目の研究 では、同大学の助教授リダ・カチンパルディ(Lida Katsimpardi)氏率いる別の研究チームが若いマウスから年老いたマウスへの GDF11 の移行を試みた。それによって、若い血液が脳室下帯(嗅覚に関連したマウスの脳内領域)の循環を高め、新しい神経細胞の生成が活性化することが明らかとなった。新しい細胞が嗅球に移動して成長すると年老いたマウスの嗅覚は改善された。
カチンパルディ氏によると、血流の増加は嗅覚領域だけでなく脳全体でも観察された。この事実は、「Nature Medicine」誌に発表された1つ目の論文にある記憶と学習の向上を説明するのにも役立つだろう。
だが、米国立老化研究所の老化神経生物学部門の主任で、研究チームの助成金を管理するブラッドリー・ワイズ(Bradley Wise)氏は、高齢者に若い人の血液を注ぐ"輸血の卸売"を勧めるには時期尚早だと指摘した。
ハーバード大学の神経学教授でマサチューセッツ総合病院の遺伝学および老化研究ユニットのディレクターを務めるルドルフ・タンジ(Rudolph Tanzi)氏は、これら 3つの論文 がアルツハイマー病、心臓病、糖尿病、脳卒中、癌などの症状における炎症の重要性を探る最近の研究とうまくかみ合っていると言及した。
PHOTOGRAPH BY MARGHERITA VITAGLIANO / NATIONAL GEOGRAPHIC YOUR SHOT
"血液" には、"造血幹細胞" ばかりか、"免疫(幹)細胞" までもが存在していることから、"老い" に拍車をかけていると考えられている "免疫老化" の問題も視野に入っているに違いない。
"若い血液" への着目には、"老化" が引き起こす様々な問題/機能不全を "トータルに克服" <総体的再生効果> しようとする意図が覗える...... (2014.05.09)
コメントする