従来、種々の成人病を悪化させる要因としての "血管障害" については、<糖尿病やメタボリックシンドロームでは、しばしば血管の障害と細胞老化が合併する> という観点がもっぱら注目されてきた。
言ってみれば、"血管障害" は "糖尿病/メタボリックシンドローム" の "結果的産物" だという見立てである。
その点に間違いは無さそうであるが、今回注目する下記引用サイト記事 : 血管の老化は、筋肉のエネルギー消費を妨げることを発見 ~肥満や糖尿病を悪化させている可能性~/科学技術振興機構(JST) 新潟大学/2014.05.23 によれば、"逆また真!" でもあるようなのだ。
つまり、"血管の細胞老化" 自体が、筋肉のエネルギー消費を低下させることで "肥満/糖尿病を悪化!" を誘い、ここに "悪循環!" が生まれる、というのである。
<血管老化によって筋肉の代謝機能が低下して、エネルギー消費が阻害されることを発見/ 高カロリー食投与によって引き起こされた血管老化が、筋肉でのエネルギー消費を阻害することをマウスの実験で発見しました/ (従来) 血管の老化が、糖尿病やメタボリックシンドロームにどのような影響を及ぼしているかはよく分かっていませんでした/ 高カロリーの食事を投与された糖尿病病態モデルマウスでは、血管細胞が老化することで、筋肉への糖輸送や、筋肉におけるミトコンドリアの合成能が障害されていることが分かりました。この障害によって余剰となったカロリーが内臓脂肪として蓄積し、肥満や糖尿病がさらに悪化すると考えられます/ これまで、糖尿病で合併する血管障害は、糖尿病の病態の結果と考えられていました。しかし今回の成果で、血管の細胞老化によって肥満や糖尿病がさらに進行する悪循環を引き起こしている可能性を示しました> とある。
下の<参考図> にもあるとおり、 "高カロリー食摂取" は、一方で "糖尿病/肥満" を招き、他方で <血管の老化がエネルギー消費を低下させるため、余剰となったカロリーが脂肪として蓄積し脂肪炎症を促進。その結果、さらなる糖尿病と肥満の進行を誘導する悪循環(Vicious Cycle)を形成> という "ダブル・ダメージ" を引き寄せると......。
血管の老化は、筋肉のエネルギー消費を妨げることを発見 ~肥満や糖尿病を悪化させている可能性~/科学技術振興機構(JST) 新潟大学/2014.05.23
<ポイント>
○ 糖尿病やメタボリックシンドロームでは、しばしば血管の障害と細胞老化が合併する。
○ 血管老化によって筋肉の代謝機能が低下して、エネルギー消費が阻害されることを発見。
○ 糖尿病の血管病変による老化が、さらに肥満や糖尿病を悪化させている可能性を示す。
JST 課題達成型基礎研究の一環として、新潟大学の南野 徹 教授らは、高カロリー食投与によって引き起こされた血管老化が、筋肉でのエネルギー消費を阻害することをマウスの実験で発見しました。糖尿病やメタボリックシンドローム 注1)では、動脈硬化に伴って血管の老化が進んでいることが、これまでの本研究グループの報告などで知られていました。しかし、その逆に血管の老化が、糖尿病やメタボリックシンドロームにどのような影響を及ぼしているかはよく分かっていませんでした。
今回、老化した血管が骨格筋におけるエネルギー消費を妨げることを発見しました。通常筋肉では、血流から糖(グルコース)を取り込んで、細胞内のミトコンドリア 注2)と呼ばれる小器官でエネルギーを作り出します。しかし、高カロリーの食事を投与された糖尿病病態モデルマウスでは、血管細胞が老化することで、筋肉への糖輸送や、筋肉におけるミトコンドリアの合成能が障害されていることが分かりました。この障害によって余剰となったカロリーが内臓脂肪として蓄積し、肥満や糖尿病がさらに悪化すると考えられます。
これまで、糖尿病で合併する血管障害は、糖尿病の病態の結果と考えられていました。しかし今回の成果で、血管の細胞老化 注3)によって肥満や糖尿病がさらに進行する悪循環を引き起こしている可能性を示しました。
本研究は、千葉大学と共同で行われたものです。本研究成果は、2014年5月22日(米国東部時間)に米国科学誌「Cell Reports」でオンライン公開されます。
<参考図>
<用語解説>
注1) メタボリックシンドローム
肥満(内臓脂肪の蓄積)に、糖代謝異常・高血圧・脂質代謝異常のいずれか2項目が当てはまる場合にメタボリックシンドロームと診断される。生活習慣に基づいて発症するこれらの異常は、心臓病や脳卒中といった重大な疾患の発症リスクを高める。メタボリックシンドロームを早期に治療することで、それらの重大な疾患の予防につながることから、最近では検診で早期に発見するよう厚生労働省なども呼びかけている。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/metabo02/注2) ミトコンドリア
動物などが持つ細胞のほぼ全てに含まれる、細胞内小器官の1つ。主な機能は、糖分子や脂肪酸をもとに活動に必要なエネルギーであるATPの産生。注3) 細胞老化
細胞が、一定の分裂回数を超えると増殖を停止し、細胞の形態や機能が障害される現象。遺伝情報が集められた染色体には、テロメアと呼ばれる保護領域が存在する。このテロメアが細胞分裂のたびに短縮していくことが細胞老化のメカニズムと考えられていたが、紫外線やがん遺伝子の活性化などテロメア短縮に依存しない染色体の障害でも細胞分裂が停止するとされる。( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
つい先日、 「たばこより大きな脅威」 国連、ジャンクフード規制促す/日本経済新聞/2014.05.21 - 11:33 という記事が目に入った。
"過剰なカロリー摂取" のリスクが、"たばこ以上!" だと見なす風潮が一般化しつつある...... (2014.05.27)
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