最も多く発症する癌のひとつ(女性のがんの死亡率の1位)である "大腸癌" は、"大腸炎(潰瘍性大腸炎)" からの悪化による "発がん" が警戒されてきたものの、その詳しい発症メカニズム解明については研究途上とされているようだ。
◆ 参照 当誌過去の関連記事
(1) "がん免疫(細胞)療法"/最近の各種動向一覧!最新:腫瘍細胞免疫回避の一要因 PD-L1!/当誌 2014.04.17
(2) "がん幹細胞"をたたく"新薬"候補!"身近な薬"="スルファサラジン"の臨床研究:慶応大!/当誌 2014.10.02
今回注目する下記引用サイト記事 : 発癌を阻止する新たな物質の発見/東京大学大学院農学生命科学研究科 プレスリリース/2014.06.03 は、こうした "大腸癌" 発症のメカニズム解明に一石を投じる研究成果を報じている。
<マスト細胞と呼ばれる免疫細胞の一種が産生するプロスタグランジンD2という物質が、大腸炎とそれに伴う細胞の癌化を抑制することを、マウスにおいて発見/ プロスタグランジンD2受容体を刺激する薬を投与すると、マウスの腸炎症状と大腸癌の発症が抑えられた/ 本結果は新しい腸炎治療薬と発癌予防薬の開発につながる可能性が期待される/ 大腸癌は日本人が最も多く発症する癌の1つである。大腸癌のリスクは、炎症性の消化器疾患や、生活習慣に由来する慢性的な腸の炎症によって大きく上がる。慢性的な腸の炎症から大腸癌の発症へとつながるメカニズムは、炎症に反応して組織に浸潤してくる免疫細胞が各種の生理活性物質を産生し、これらの物質が炎症部位の細胞の異常な増殖(がん化)を刺激するためと考えられている。つまり、炎症のもととなる疾患の治療や炎症の慢性化を防止すれば、大腸癌の発症を抑えられる可能性が高い/ 東京大学大学院農学生命科学研究科の村田幸久 准教授の研究グループは、マウスにおいて炎症がおこった時に大腸組織に浸潤してくる免疫細胞の一種(マスト細胞、注2)が、プロスタグランジンD2(PGD2)という生理活性物質を産生し、このPGD2が腸炎の重症化やそれに続く大腸癌の発症を強く押さえる作用を持つことを発見した。さらに、薬の投与によってPGD2のはたらきを刺激し活性化することで、大腸炎の症状が改善され、大腸癌の発症を抑えることに成功した> とある。
<慢性的な腸の炎症から大腸癌の発症へとつながるメカニズム> に着眼してアプローチしている点において、今後の "発がん" 経緯のメカニズム解明が大いに期待されそうだ。
発癌を阻止する新たな物質の発見/東京大学大学院農学生命科学研究科 プレスリリース/2014.06.03
発表者
岩永 剛一 東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医学専攻 大学院生
中村 達朗 東京大学大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻 特任助教
前田 真吾 東京大学大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻 特任助教
村田 幸久 東京大学大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻 准教授発表のポイント
◆ マスト細胞と呼ばれる免疫細胞の一種が産生するプロスタグランジンD2(注1)という物質が、大腸炎とそれに伴う細胞の癌化を抑制することを、マウスにおいて発見した。
◆ プロスタグランジンD2受容体を刺激する薬を投与すると、マウスの腸炎症状と大腸癌の発症が抑えられた。
◆ 本結果は新しい腸炎治療薬と発癌予防薬の開発につながる可能性が期待される。発表概要
大腸癌は日本人が最も多く発症する癌の1つである。大腸癌のリスクは、炎症性の消化器疾患や、生活習慣に由来する慢性的な腸の炎症によって大きく上がる。慢性的な腸の炎症から大腸癌の発症へとつながるメカニズムは、炎症に反応して組織に浸潤してくる免疫細胞が各種の生理活性物質を産生し、これらの物質が炎症部位の細胞の異常な増殖(がん化)を刺激するためと考えられている。つまり、炎症のもととなる疾患の治療や炎症の慢性化を防止すれば、大腸癌の発症を抑えられる可能性が高い。
東京大学大学院農学生命科学研究科の村田幸久 准教授の研究グループは、マウスにおいて炎症がおこった時に大腸組織に浸潤してくる免疫細胞の一種(マスト細胞、注2)が、プロスタグランジンD2(PGD2)という生理活性物質を産生し、このPGD2が腸炎の重症化やそれに続く大腸癌の発症を強く押さえる作用を持つことを発見した。さらに、薬の投与によってPGD2のはたらきを刺激し活性化することで、大腸炎の症状が改善され、大腸癌の発症を抑えることに成功した。
本成果は新しい腸炎に対する治療薬や大腸癌の予防薬の開発につながる可能性が期待される。
用語解説
注1 プロスタグランジン(PG)
細胞膜の脂質から産生される生理活性物質。炎症反応の主体をなす。主なPGとしてPGE2, PGI2, PGF2, PGJ2, PGD2などがある。
注2 マスト細胞
免疫細胞の一種で、細胞質内にヒスタミンやロイコトリエンといった生理活性物質を含んだ顆粒を多く保有し、アレルギー反応を引き起こすことでも知られる。近年、癌の発症や増殖にも関与している可能性が示唆されてきた。
( ※引用者注 ―― 文意を損なわないよう留意して割愛しています。)
"免疫細胞" 周辺のメカニズムは、一筋縄ではいかないようである。
一方で、<炎症に反応して組織に浸潤してくる免疫細胞が各種の生理活性物質を産生し、これらの物質が炎症部位の細胞の異常な増殖(がん化)を刺激するため> とあり、 他方では、<マウスにおいて炎症がおこった時に大腸組織に浸潤してくる免疫細胞の一種(マスト細胞)が、プロスタグランジンD2(PGD2)という生理活性物質を産生し、このPGD2が腸炎の重症化やそれに続く大腸癌の発症を強く押さえる作用を持つこと> とあるからだ...... (2014.06.07)
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